ファンタジア!!

日向 ずい

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第10章 「俺たちの運命を変える。」

「優の反対を押し切って...。」

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 「ちょっと...虎雅さん!!!!どういうことですか????俺...何も聞いてなかったんですけど。...なんで、俺たちはアイドルをやることになってるんですか????」

 優は、珍しく怒鳴り声を上げていた。

 それもそのはず...。

 「虎雅さん???俺は絶対に反対ですから。...俺はみんなとこれまでと変わらずに、バンドとして...月並みとして活動していきたいんです!!!」

 「ごめんな...。でも、もう決めたことなんだ。...優、分かってくれ。...SINさんも言っていただろう???ようは、お試し期間だと思えばいいんだ。なぁ??俺たちは、少しの間バンドから離れてアイドルをしてみる。これって、意外と楽しそうだろ????なぁ、みんな...!!!」

 「...そうだよ、優!みんな、きっと今よりも、一皮も二皮も剥けた...いいバンドとして、また近いうちに月並みとして復帰出来るって言ってるし!!!」

 俺と翔真のこの言葉に、七緒や奏也もうんうんと頷いていたが、優は最後まで首を縦に振らなかった...。

 だが俺の次の一言で、優はあまり乗り気ではなかったが、渋々首を縦に振ることとなった。

 「優...優の為でもあるんだ。俺は月並みのみんなを守りたい。それに...たまには、息抜きも必要だ。なぁ、お前も...そう思うだろう???」

 俺は、いつ復帰出来るかも分からない恐ろしい賭けに出てしまった。

 それは、他のメンバーも思っていたようで、その日の練習はいまいち上手くいかなかった...。

 そうして俺たちは、正式に『ファンタジア』としてデビューすることとなった。

 「...最後まで俺たちの曲を聴いてくれてありがとね~。...ということで、ここで実は...みなさんに重大発表があるんです!!!!...なんとなんとぉ!!俺たちの、後輩でもある五人組の男の子たちが...!!!!晴れて....アイドルとして、ウィンター・ソニックより正式にデビューすることが決まりました~!!!!!」

 俺たちは真新しい衣装に身を包み、バロック&ロックのボーカルであるナツさんが、紹介してくれるのを今か今かと舞台袖で待っていた。

 「それでは、さっそく紹介したら...出てきてもらうのがおきまりなので~~~~、登場して頂きましょう!!!...ウィンター・ソニックより新しいアイドルグループ...その名も....『ファンタジア』で~す!!!!!」

 ナツさんの陽気な声とは、対照的に俺たちは、ゴクリと固唾を飲み込むと、勢いよくステージへと駆けだした。

 「はい!!!!はじめまして~!!!!!俺たち...ファンタジーな世界の住人!?...のようなアイドル!その名も、『ファンタジア』です!!!!!...俺は、このグループのリーダーを務める...桜宮虎雅です!...気軽に虎雅って呼んで下さい!!!!よろしくお願いします!」

 「...俺は、虎雅の親友の冬月聖真です!...虎雅にはバカバカ言われていますが...実際はどうか分かりません!!!...よろしくお願いします!!!」

 「みなさんに愛を届ける俺が...鶴来七緒だ。...世界の女性は、みんな俺のお姫様!...愛しています。って、一方的な愛は、寂しいものだから...ぜひ、俺のこの愛を受け止めてくれる心優しいお姫様が増えることを願っているよ??...よろくしおねがいしますね。」

 「...マイクが回ってきたからしゃべるね!!!...僕は、お菓子大好き、小宮山奏也です!♡こうみえても僕は、大学生だから、みんな僕のこと可愛がってくれるとうれしいなぁ!!...よろしくね♡」

 「...俺は、紫翠優です。...周りの人からは、表情が硬いってよく言われるんですけど...。ちゃんと、楽しいときは笑ってますし...悲しい時は泣いてます...多分。(汗)えっと...決して怖い人じゃ無いと思うんで、応援して下さると光栄です。...よろしくお願いします。」

 こうして...俺たちは、キラキラと光り輝く舞台に立つ...アイドル『ファンタジア』として、本格的に活動を開始したのだった。

 だが...正直辛かった...。

 踊り方や、テレビでのルール...それになによりも...。

 「あのさぁ、ちゃんと練習しなよ???...新人が、一回目からテレビに出させてもらってて...バロ×ロクさん達に、どんな色目使ったのか分からないけど...。あんたら、アイドルなめまくってるし...なかなかデビューできない俺たちに対して、喧嘩売ってるとしか考えられないんだわ...。だからさ、近いうちに辞めなよ。あんたらには、この世界...向いてないから。」
 
 「...っ。」

 「ガチャ...お疲れ様ー。って、あれ??どうしたお前ら??」

 俺たちが、控え室のある通路で上級生に虐められている最中、部屋のドアを開け控え室から出てきたバロック&ロックのナツが、不思議そうにこう声をかけてきた。

 ナツさんの声に、一瞬肩を揺らした上級生だったが、ニッコリとした笑みを浮かべるとナツさんの方を向き

 「お疲れ様です、ナツさん!!最近売れっ子のファンタジアの、人気の秘訣を聞いていました!!(笑)なぁ、虎雅くん!」

 と言い、何も言わない俺に対して、ニコニコと気味の悪い笑みを向けてきた。

 俺の様子にナツさんは首を傾げていたが、やがてコクコクと頷き

 「だよね~!!だって、この子たち心が澄んでるんだもん!!今のアイドルって、作り笑いとか作り演技とか多いからさぁ。だから、ピュアなこの子たちってこの時代には、希少種なんだよね。ちなみにSINは、他の箇所も気に入って彼らを推薦したらしいけど...。まぁ、なにわともあれ、ふたグループとも仲良くしなよ??じゃあ、お疲れちゃん!!」

 ナツさんの言葉に、ぐっと唇を噛み締めた上級生は、ナツさんが去っていくのを確認すると俺の足を踏みつけ

 「...お前ら、これ以上調子にのるなよ。...これ以上舐めた真似するのなら、マジで殺してやるから...。」

 と言い、背後でことの行く末を見守っていた仲間に声をかけると、俺たちの前から去っていった。

 そう...バロ×ロクさん達が立っていた舞台に立させてもらえるのは、歌・ダンス・柔軟性・表情...などなど、売り込むための要素が、これでもかと詰まった 人ぐらいなんだ。

 当然、バンドばかりやってきていた俺たちには...全てが不十分で...他の先輩方に目をつけられていた。

 そして今日もだ....。

 今日も俺たちは、殴られ...衣装を複数人で来ていた先輩の仲間に、はぎ取られると...ライターで燃やされそうになった...。

 服に燃え移った火を消そうとした俺は、当然のように手に火傷を負った。

 アイドルになると...こうなることも、初めから分かっていた。

 でも、優のため。

 優のためならと...。

 みんな必死で、多忙なスケジュールの中で、踊りの練習や歌の練習...。

 後は、とにかく空いた時間に、これでもかというほどにバイトを入れ、なんとか持ちこたえていた。

 そして、そんな多忙な日々から暫くたった頃....俺たちは、大きな歌番組に最近話題という名目で、特別に出させてもらえることになり....その番組の放送の翌日から....俺たちの...アイドルとしての仕事量は...これまでの倍以上となった。

 つまり、晴れて本物の売れっ子...若手アイドルへとのし上がったのだ。

 初めの頃は良かったよ???

 でも、やっぱりずっとはキツかったんだ。

 体力的にも...精神的にも...。
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