俺の兄貴、俺の弟...(続々)

日向 ずい

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第4章 「一度歪めば、なかなか元には戻らない。」

「知ってしまった彼女らの企み。」

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 俺は、いつものようにレボリアの練習に参加するため、サークル棟を訪れていた。

 そうして、気だるげに部屋の中に入ろうと、ドアに手を掛けた瞬間、部屋の中からは信じられない内容の会話が聞こえてきたのだった。

 俺は、ドアを引こうとした手を止めて、中の会話に聞き耳をたてた。

 「ねぇ、最近さぁ~??な~んか、つまんないよね~。って事で、このサークルに入っている男子の一人をさぁ~、誰がオトせるかってゲームしなぁ~い???」

 「いいね~!やろうよぉ!!!」

 「じゃあ、決まり!!!オトす男子ぃ、誰にする???」

 「え~、それはやっぱり、恋じゃない???あの子ノリ良いし、もしこの賭けの事がばれても、マジギレしなさそうじゃん!!!」

 「確かにぃ、そうかも!!!!じゃあ、恋にしよう!!!!」

 「うんうん、そうしよー!!!!」

 俺は、全て会話を聞き終えて、いちばん最初に恋さんの顔が脳裏をよぎった。

 一刻も早く、恋さんにこの事を教えてあげなければと...。

 だが、今日の練習には流石に顔を出しておかないと、次の大会に出場することが叶わなくなると思い、仕方なくサークル棟のドアを開くことにした。

 俺が部屋に入ったあと、すぐに他のメンバーも続々と集まりだしたが...当然、恋さんがサークルに顔を出すことはなかった。

 まぁ、仕方ないか....。

 だって恋さんは....俺のことが......顔も見たくないほど、嫌いなのだから。

 俺が俯きがちに、こんなことを考えていたとき、サークル部屋のドアがギィーっと年期の入った音を立てて開いた。

 まさかと思い開いたドアの方を振り返ると、そこには、俺が今一番逢いたいと思っている人が何食わぬ顔で立っていた。

 そのまま平然と部屋に入ってきたその人物に対して、その姿に気がついた女の子のひとりが

 「あれ???あー!!!恋じゃん!!!!お疲れ~!!!!というよりも、久しぶりだね~!!!!!何????ずっとレボリアの練習に顔を出さないで、どうしてたの????」

 と、馴れ馴れしくこう声を掛けた。

 そんな女の子に対して、恋さんはあまり良くない色をしている顔を、微かに歪ませながら

 「いやぁ、申し訳なかったよ...ホントに...。実は、ちょっと、俺の知り合いが体調崩して、入院しちゃってさ。それで暫く病院に通ってて....でも、もう大丈夫だから!!!!ということで、明日ぐらいには....。」

 と言い、目の前の女の子にペコペコと申し訳なさそうに頭を下げていた。

 笑顔だが、体が重たそうな恋さんの見るからに辛そうな様子に俺は、何か声を掛けてあげたいと思ったが、伏佐波先輩との約束を思い出し、グッと言葉を飲み込んだ。

 そんな俺のもどかしさを抉るかのように、さっき賭け事の話をしていた女の子の一人が、恋さんに耳打ちで何か話をすると、恋さんが少し頬を赤く染めながら、曖昧に微笑みを浮かべていた。

 目の前で急速に変化する状況を目にした瞬間、俺はもう限界だった。

 俺の気持ちが、恋さんの迷惑になっているのは、正直なところ自分が一番良くほど分かっている。

 だけど、流石に恋さんが傷つく姿を黙ってみていることなんて、今の俺には出来なかった。

 もう既に嫌われているのに、これ以上嫌われてどうするんだって、正直思ったよ???

 でも......それでも、俺は恋さんの悲しむ顔なんて...絶対に見たくなかったんだ。

 だから俺は、勇気をだして恋さんに声をかけることにした。

 「恋さん、あの...ちょっといいですか???」

 「えっ...あ、あぁ、別にいいけど...何???」

 「いや、ここでは話しにくい事なので...その......場所を変えませんか??」

 「......まぁ、別にいいけど...手短にな。」

 「...。」

 俺は、練習終わりに帰り支度をしていた恋さんにこう声をかけた。

 恋さんは、俺から声を掛けられて、明らかに嫌そうな顔をしたが、他のメンバーがいる手前、下手なことは言えないと思ったのだろう。

 俺の方をチラっと見て、ため息混じりに仕方なく了承してくれた。

 俺は、伏佐波先輩の事も怖かったが、その恐怖心を悟られないように、恋さんに軽く微笑みを向けると、サークル棟の裏にある、薄暗いスペースへと足を運んだのだった。

 「それで何???」

 「いや...その......。(汗)」

 「はぁ...あのさぁ...俺も暇じゃないんだわ。もう、お前みたいな暇人ストーカーと絡んでいる時間もないわけ。この意味、分かるか??」

 2人になった瞬間、俺に対する恋さんの態度は、いつもと180度違いあまりにも冷たかった。

 悲しい気持ちになったが、そんな態度をとられるほど、恋さんは本当に俺のことが嫌いなのだと、改めて実感させられもした。

 色んな意味でドキドキしながら、俺は冷たい口調の恋さんに

「あの...恋さん。ほんとにすみませんでした。......俺は...その...少しお話したいことがありまして......その...恋さんを犯そうとか、そういうことは考えてないので...。」

 と、大きくはられた警戒心を、少しでも小さくして欲しい一心で話した。

 だがそんな俺に、相変わらず無表情で恋さんは

 「だから何???...そんなの当たり前でしょ???」

 と言い、冷たくあしらってきた。

 そんな恋さんの態度に心がズキズキと痛んだが、俺はぐっと胸を痛みをこらえると、震える声で話し始めた。

 「いや...その...そっ、そうですよね...。でも、どうしても聞いて欲しくて...!あの......恋さん。さっき、サークル活動の合間に、女の子に耳打ちされてましたけど、あれって一体何について...『はぁ...おい、ぶん太!!...お前、いい加減にしろよ???散々ストーカー紛いなことしてきて...やっとおさまったと思ったら、今度は、俺の恋愛にまで口を出してくるのか???...本当に...いい加減にしてくれよ!!!お前のその行動ひとつひとつが、邪魔だってこと...迷惑だってこと、まだわからないのか!???このストーカーサド野郎が!!!いい加減気付けよ、この鈍感脳内幸せ野郎...!!!』...っ...そういうつもりじゃ。ただ、俺は......その...女の子たちが、恋さんを賭け事の道具に使っていることが許せなくて...。」

 俺の言葉に恋さんは、とうとう堪忍袋の緒が切れたのだろう。

 俺のことをキッと睨みつけると、大声で、俺の事を罵倒し始めたのだ。

 俺は暫くの間、恋さんに言われたことを頭で整理していたが、ふと言われた意味に気がつくと、ショックのあまり、恋さんにそれ以上何も言うことが出来ず、口を閉じた。

 そんな俺の姿には、特に目もくれず恋さんは、言いたいことだけ言うと、会話を強制的に終わらせ、さっさとサークル棟に戻っていってしまった。

 呆然と立ち尽くす俺を見つめて、恋さんは去り際に

 「二度と関わんな。目障りだ。」

 と強く吐き捨ててきた。

 恋さんの、あまりにも厳しい最後の言葉に、俺はぐっと手のひらを握り、今にも零れ落ちそうな涙を必死で堪えていた。

 その頃、サークル棟に戻った恋は、大きな溜息をつきながら、自分の荷物を持ち

 「はぁ...何で、あいつにあそこまで言われなきゃならないんだか...真面目に腹が立つな。まぁ確かに、愛菜(あいな)ちゃんには、『好きだよ!』と言われた...しかも耳打ちで...。でも、なんでぶん太がその事を知ってるんだ??全く...訳が分からない。遂に耳まで、ストーカーレベルに達したのか??...どちらにせよ、いい迷惑だが...はぁ...帰ろっ。」

 と言うと、乱暴に部屋のドアを開け、帰路についたのだった。

 そうして、恋さんに置いていかれたぶん太は...呆然と立ち尽くしたまま、本気でこの命に終止符を打つことを考え始めていた。

 「今日の恋さんの様子からして...俺は恋さんに、もうきっと何を言っても信じて貰えない。何をやっても......気に入って貰えない。恋さんに必要とされない...恋さんに恩返しさえ出来ない俺......そんな俺......もう要らないじゃん。」

 
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