俺の兄貴、俺の弟...(続々)

日向 ずい

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第6章 「後日談と解説。」

おまけ

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 「...。......あれ...ここは...あっ、手術.........お兄ちゃん......ど...こ...???」

 こう言って、病院のベッドの上で目を覚ましたのは、病院服を身にまとっているサラであった。

 サラは、手術を終えてから、1週間ほど目を覚まさなかった。

 サラはベッドの上で、しばらく自身の置かれている状況を頭で整理していたが、やがて大好きな兄のことを思い出し、咄嗟に病室内に兄が居ないか探し始めた。

 だが...当然いるはずもなく...サラは、小さくため息をつくと、何をするでもなく、ぼーっと近くにある花瓶の花を眺めていた。

 すると...ガラッと病室のドアが開き、コツコツと音を鳴らしながら、自身のベッドに近づいてくる足音が聞こえ、次の瞬間、ベッドの周りを囲っているカーテンがシャーっと勢いよく開かれた。

 サラは、びっくりして、音のした方を振り向くと...そこには

 「あら、久しぶりねぇ。...サラ???(笑)...お母さんのこと...覚えてるでしょ???」

 と甘ったるい声で、自身の名前を馴れ馴れしく呼ぶ化粧の濃い女の人が立っていた。

 サラは、その顔に見覚えがあり......途端にわなわなと小刻みに身体を震わせると

 「...あっ......あっ...おっ...か...あさっ...ん...。その...わたし...なんで、あなたが...ここに...???」

 と言い、目の前にいる女性に目を向けた。

 お母さんと呼ばれた女の人は、ニヤリと口裂け女のような形相でサラに見つめ

 「...ははっ、サラ???......あなたは、私から逃げられると思ってるの???(笑)あのこそ泥淫乱なぶん太は、私の息子でもなんでもないけど......可愛いサラは、私の娘よ??だからサラ???お母さんのところに帰ってきなさい???(笑)......あなたは、私の元にいるのが一番幸せなのよ??」

 と言うと、震えるサラの頭を手のひらで力強く撫でた。

 そんな母親の態度に、サラは......

 「...や...だ。...私は...帰らない。......お兄ちゃんを.........捨てたお母さんなんて...。...私は......お兄ちゃんと...。」

 と言葉を口にすると、身体は震えているが、目は鋭く母親のことを睨みつけていた。

 そんなサラの様子に、母親は怒りを露わにして

 「...チッ...お前、まだそんなこと言ってるんだな???...はぁ...いいか???この際だから教えてやるよ。お前とぶん太には、母親違いの兄がいるんだよ。......なんでもそいつは、最近よくこの病室に足を運んでいるらしくてね。...看護師さんが教えてくれたよ。それとね、アンタがずっと好きだって言っていたぶん太はね、私が捨てたんじゃない。アイツが勝手に家を出ていったんだよ。なんでも、惚れた男に逢いに行くだとかで、勝手に自分で大学決めて行っちゃったんだよ。分かったか???アンタのひとりよがりの恋はとっくに終わってるの。(笑)...はぁ、という事だから...そうねぇ、1ヶ月後......私の元に帰ってきなさい。それまでは、自由に遊んでていいわよ???その代わり...私の店...働き手が少ないし、若い子もいないから困ってるの。だから1ヶ月後は、私と同じ仕事......やってもらうから。(笑)......いい???約束よ???(笑)......1ヶ月経ったら、この電話番号に電話をかけてきなさいね??約束...守れなかったら、その時はあんたの大事なお兄ちゃん......この世から、消してあげるから。(笑)...じゃあね、サラ???」

 とこう言うと、何も言わずにベッドの上で固まっているサラを放ったらかして、そのまま病室を去っていった。

 サラは母親が病室を去ってから、しばらくの間その場にじっとしていたが、やがて母親に言われたことを理解すると、去り際に渡された小さな紙切れを見つめ

 「仕事.........自分の夢...は...。...でも、お兄ちゃんが不幸になるのは、もっと嫌。......なら私は......お母さんの元に......。」

 と小さく独り言を零すと、不意に廊下を足早に歩く足音が聞こえ...何となく嫌な予感がしたサラは、咄嗟に紙切れを近くの引き出しに入れると、何事もなかったかのようにベッドの上にじっと座っていた。

 そんなサラの予感は的中し、中に入ってきたのは、壮馬だった。

 壮馬は、サラが起きていることに感嘆の声を漏らしていたが、それと同時にサラは.........その時に、自身の母親の言っていたことを全て悟ったのだ。

 そう......今目の前にいる人物は、ぶん太と自分の兄である人...。

 その瞬間...サラは、ある決意をした。

 「...お母さんの言っていたお兄ちゃんが、もしもぶん太兄ちゃんではなく......この人だったら...。......私なら、この人たちを守ってあげられる。......私は、二人の幸せを願うよ。...でもね、やっぱり夢はみたい。だから、今だけ......この最後の1ヶ月間は......私の好きなようにさせて...。短くてもいいの。どうか、夢を...夢を見させて。」

 とこう考えたサラは、壮馬に軽くキスをしてみせた。

 コチョウランの香り......今だけは、幸せを運んでくれる...きっと。

 Another story END
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