ダメな私と吸血鬼

日向 ずい

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第9章 「黒幕は...。」

もう...お別れだ...。

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 ニーソンは、背後にいるラグルとエピーヌに悲しそうな表情を向けると
「...ラグル...そしてエピーヌ。今までありがとう...。でも、もう会えないと思う...。」
と静かに独りごちた。
 ラグルとエピーヌから目を逸らすと、今度は、気味の悪い笑みを浮かべ、フィリエに
「さぁ、お前が誰を相手にしたのか...誰を怒らせたのか...。誰の仲間を傷つけたのか...。思う存分、教えてやる...地獄に行っても消えない...深い傷としてな...。(怒)」
と言って自らの服の襟のボタンをひとつ開けると、首に下げているネックレス型の白い魔石を引きちぎった。すると、ニーソンの姿が白い光に包まれて...やがて姿を現したのは...長髪に背中には羽が生えた全身が黒に包まれるカラスを思わせるものだった。
 その姿を見た瞬間フィリエは
「へぇ??お前も、俺と同じ力の使い手か。(笑)...まぁ、たしかにその姿って便利だよな...だって、カラスって神の使いだろ??つまりは、みんな怖気付くってわけで......。あー、でもお前の変化は、未完成だな...だって、全身本物のカラスになれてないし??...人型のカラスって...笑えるよ!(笑)」
と言って爆笑しているフィリエにニーソンは、表情を変えずに
「さぁ、この私が相手だ。」
と言ってじっとフィリエを見つめていた。
 そんなニーソンにますますおかしくなって
「はははっ、面白いジョークだけど...そろそろ嫌われるよ??(笑)しつこい男は...女の子にね??(笑)」
と言って指を指すフィリエの先には...頭を抱えて身体を起こしたエピーヌの姿だった。
「...ん??...あれ...なんで私ここに??」
と言ってニーソンたちの方を見たエピーヌは、目を丸くしてそのまま固まってしまった。
 そんなエピーヌのことは、特に気にした様子もなく...
「...我が名は...リバティ。またの名を、自由な漆黒の鴉だ。神の使いである我に勝てると思うなよ...。」
と言ってじっとフィリエを見つめるニーソンにフィリエは
「はぁ??なーに、厨二病くさいこと言ってんだよ...??そろそろ俺も本気で怒るけど???(怒)」
と言い、顔を歪ませていた。
 そんなフィリエに動じた様子がないニーソンは
「...今なら、まだ間に合うぞ??」
と言ってフィリエにニヤッと笑いかけた。
 そんなニーソンにフィリエは、眉間に皺を寄せ
「はぁ、もういい加減飽きた...。早く、攻撃しかけてきなよね...??」
と言って不満そうな顔をしていた。
 そんなフィリエにニーソンは
「なら、これまでお前のしてきた数々の罪を償うが良い。神がお前を地獄へと誘(いざな)うだろう...。」
と言ってニーソンは、一瞬エピーヌの方を振り返り、エピーヌに手をかざすと...エピーヌは、力なく地面に倒れ、意識を再度失った。
「...人に見せることは...良くないのでな...。すまぬな...小娘よ。」
 そう言って、再び生意気な顔をしたフィリエに向き直ると
「我に...力を...我の元に集いし...神の使いのその使い...。彼を地獄へと誘い...罪を償わせるように...。我の力と引き換えに...使いに力を分け与え...彼に...罪を償わせたまえ。」
と言って呪文を唱えると一瞬で床が暗黒の世界になり、そこから沢山の手が...そう、フィリエ達に命を奪われた彼らが...フィリエの身体に腕を伸ばすと暗黒の床の世界へと引きずり込んで行こうとした。
 そんな状況にまずいと思いフィリエは
「なぁ、ニーソン??ここで俺を見逃してくれたら...後でお前にも、報酬として一生遊んで暮らせるだけの金貨をやるよ!!なぁ??いい話だろ??(汗)だから...『もう...おそい...。さっき時間は、あげただろ...?』...っつ...やだ...やだ。俺は、まだ死にたくない...。頼む...助けてくれ!!俺は...俺はこの国の頂点に!!!!ぐぁあーー!!!!!」
フィリエは、ニーソンに命乞いをしたが、とうのニーソンは冷たい目をして、知らないふりをした。そしてフィリエは、そのまま暗黒の床の世界へと引きずり込まれてしまった。
 そして全てが終わり、静寂に包まれた部屋の中...ニーソン...ではなく、リバティは、部屋に倒れるエピーヌとラグルをじっと見つめて
「神が二人に幸せをきっと運んでくれる...。我は...まもなく...迎えがくるだろう...。重罪を犯した...からな...。(笑)」
と言って部屋を去ろうとしたリバティに
「...ねぇ??ニーソン??姿は、違うけど、あなたの声はニーソンよ。間違いないわ。」
と言って声をかけたのは...エピーヌだった。
 エピーヌは、振り返らないニーソンに
「...ねぇ、ニーソン??...家に帰ったら...『...我は、神の使いであるのに、神の言うこと以外のことをしてしまった...つまり、神の世界のルールを破ったのだ...。よって、重罪を犯した...。もう、生きて帰ることは叶わない...。でも、それでいいんだ...。お前たちといれた日々......我には、これだけで...これだけあれば、充分だ...。...ありがとう。そして...さよなら...エピーヌ。君たちのことは死んでも忘れない...。』...えっ...待って...!!ニーソン!!!...ニーソン!!!!(泣)」
 こういってエピーヌの叫び声も虚しく...青白い光に包まれて、ニーソンは消えた。
 ニーソンが姿を消したあと、静かな部屋の中では、ただエピーヌの嗚咽だけが響き渡っていた。
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