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24 恋愛感情ですよね?
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それって恋愛感情ですよね? と。
ウザい確認をしてくるマルセルを振り払って、自室に駆け込んだ俺は、勢いよくソファーに倒れ込んだ。
「あぁ! 腹黒王子め! なんだあいつ!」
感情のままにバタバタと足を振って苛立ちを発散する。後から静かに入室してきたイアンが、なんとも言えない顔をしていた。
「ミナト様は、マルセル殿下に好意を持っておられるのでは?」
「違う!」
終いには、イアンまでもがそんなことを言う。馬鹿を言うな。俺の恋愛対象は年上で大人の余裕がある綺麗なお姉さんだ。マルセルは違う。性別からして違う。
「俺は! 自分よりイケメンでかっこいいマルセルに嫉妬してるだけだから!」
「……左様で」
この心のざわつきも、全部マルセルに対する嫉妬である。こっちは本物のアイドルなのに。俺より素できらきらしているマルセルに引け目を感じているだけなのだ。
断じて! 恋愛感情などではない!
「マジでマルセルにぎゃふんと言わせたい」
もはや俺の呟きに返事もしなくなったイアンは、部屋の隅で気配を消すことに徹している。そんなに俺の相手が面倒か? 少しくらい会話してくれてもよくないか?
ちくしょう、マルセルめ。
なんだあの余裕ぶった態度。すごく腹が立つ。こっちはおまえのことで悩んでいるのに、なにが「それは恋愛感情ではなく?」だ。俺を茶化して遊ぶんじゃない。
※※※
「……カミ様って、壊滅的に恋愛下手くそですね」
「恋愛下手くそってなに。そんなこと言われたの人生初だよ」
相変わらず、えぐいほどに情報通の雪音ちゃんは、早速俺の部屋に乗り込んできた。
俺とマルセルのやり取りを聞きかじったらしい彼女は、開口一番そんなことを言う。
「普通はそこで、いいですよって答えて両想いになる場面ですよ。なんで嫉妬っていう結論になるんですか」
「なんでもかんでも恋愛に結びつけるなぁ」
弱々しく抗議をするが、雪音ちゃんは止まらない。俺の返答がいかに愚かであるかを延々語り始める。人の傷口を抉る嫌な行為である。君は聖女じゃないのか。落ち込んでいる人には優しくしろ。
「マルセル殿下が可哀想ですよ」
「なんでそうなる」
俺だけ一方的に責められて不公平である。口を尖らせれば、雪音ちゃんは「だって」と信じられない仮説を披露する。
「マルセル殿下はカミ様のことが好きなんですよ。それなのに、カミ様がこれは恋愛感情ではないって大声で主張するから。殿下、今頃きっと落ち込んでますよ」
「そんなわけ」
だからなんで。どいつもこいつも恋愛に結び付けようとするのか。反射的に否定するが、ふと疑問が浮かんでくる。
そういや、マルセルも「それって私への恋愛感情では?」とウザかった。あの時は、なんだこいつ。頭ん中お花畑かよ、と考えていたのだが。今思えば、なんかおかしくないか。普通、自分への恋愛感情では? みたいなこと思わないだろ。どういう思考回路してんだよ。
ちょっと雪音ちゃんにもその点尋ねてみるが、案の定、「やっぱり! マルセル殿下もカミ様に気がありますよ!」とはしゃぎ始める。
「確かに。普通そんなさ、それって私への恋愛感情ですよね、みたいなこと言わないよな。どんな確認だよ。恥ずかしいわ」
「ですよね、ですよね!? てことは? てことはどういう意味ですか!」
前のめりで答えを求めてくる雪音ちゃんの目は、期待にきらきらと輝いている。
そりゃね、俺ももう二十数年生きてますから。人生経験は雪音ちゃんよりも豊富である。
大きく頷いて、答えを出す。
「つまりだ。マルセルはナルシストのクソヤベェ奴ってことだろ」
「クソヤベェのはカミ様の方ですよ」
「なんだと!」
突然向けられるファンからの罵倒ほど、俺の心を抉るものはない。裏切られたみたいな気分になって呆然としていると、雪音ちゃんが「マジでヤベェですよ」と冷たい目を向けてくる。
おまえ、それが推しに向ける目か?
いつになく不機嫌な雪音ちゃんは、「なんでわかんないかなぁ」と盛大に頭を抱えている。
「相手に、自分のことが好きかどうか確認する時ってどういう時ですか!」
「頭がどうかしてる時」
「ちっがう!」
大声で否定する雪音ちゃんは、ちょっと怖かった。
「なんですかその夢も希望もない答えは!」
もっと他にあるでしょ! との勢いの気圧されて、俺は考える。自分のことを好きかどうか確認する時ってなんだ。んな確認しねぇよ、と思って、ハッとする。
いや、したことあるわ。「俺のこと好き?」って言ったことあるわ、俺。問題は、それがいつだったかってことだろ。だったら答えは簡単だ。
雪音ちゃんを真正面から見据えて、ニヤリと口角を持ち上げる。この勝負、もらった。
「ライブの時!」
「ちっ、がわないけど、違う!」
複雑な顔をした雪音ちゃんは、多分俺らのライブ風景を思い出していた。マイク握ってファンの子たちに向かって「俺のこと好き?」って尋ねると、なんか面白いくらいに「好きー!」って揃った答えが返ってくるのだ。打ち合わせでもしたんか君らってくらい綺麗に声が揃うから面白いのだ。
そういうことを語って聞かせれば、「ファンで遊ばないでください」と苦々しい声が返ってきた。
ウザい確認をしてくるマルセルを振り払って、自室に駆け込んだ俺は、勢いよくソファーに倒れ込んだ。
「あぁ! 腹黒王子め! なんだあいつ!」
感情のままにバタバタと足を振って苛立ちを発散する。後から静かに入室してきたイアンが、なんとも言えない顔をしていた。
「ミナト様は、マルセル殿下に好意を持っておられるのでは?」
「違う!」
終いには、イアンまでもがそんなことを言う。馬鹿を言うな。俺の恋愛対象は年上で大人の余裕がある綺麗なお姉さんだ。マルセルは違う。性別からして違う。
「俺は! 自分よりイケメンでかっこいいマルセルに嫉妬してるだけだから!」
「……左様で」
この心のざわつきも、全部マルセルに対する嫉妬である。こっちは本物のアイドルなのに。俺より素できらきらしているマルセルに引け目を感じているだけなのだ。
断じて! 恋愛感情などではない!
「マジでマルセルにぎゃふんと言わせたい」
もはや俺の呟きに返事もしなくなったイアンは、部屋の隅で気配を消すことに徹している。そんなに俺の相手が面倒か? 少しくらい会話してくれてもよくないか?
ちくしょう、マルセルめ。
なんだあの余裕ぶった態度。すごく腹が立つ。こっちはおまえのことで悩んでいるのに、なにが「それは恋愛感情ではなく?」だ。俺を茶化して遊ぶんじゃない。
※※※
「……カミ様って、壊滅的に恋愛下手くそですね」
「恋愛下手くそってなに。そんなこと言われたの人生初だよ」
相変わらず、えぐいほどに情報通の雪音ちゃんは、早速俺の部屋に乗り込んできた。
俺とマルセルのやり取りを聞きかじったらしい彼女は、開口一番そんなことを言う。
「普通はそこで、いいですよって答えて両想いになる場面ですよ。なんで嫉妬っていう結論になるんですか」
「なんでもかんでも恋愛に結びつけるなぁ」
弱々しく抗議をするが、雪音ちゃんは止まらない。俺の返答がいかに愚かであるかを延々語り始める。人の傷口を抉る嫌な行為である。君は聖女じゃないのか。落ち込んでいる人には優しくしろ。
「マルセル殿下が可哀想ですよ」
「なんでそうなる」
俺だけ一方的に責められて不公平である。口を尖らせれば、雪音ちゃんは「だって」と信じられない仮説を披露する。
「マルセル殿下はカミ様のことが好きなんですよ。それなのに、カミ様がこれは恋愛感情ではないって大声で主張するから。殿下、今頃きっと落ち込んでますよ」
「そんなわけ」
だからなんで。どいつもこいつも恋愛に結び付けようとするのか。反射的に否定するが、ふと疑問が浮かんでくる。
そういや、マルセルも「それって私への恋愛感情では?」とウザかった。あの時は、なんだこいつ。頭ん中お花畑かよ、と考えていたのだが。今思えば、なんかおかしくないか。普通、自分への恋愛感情では? みたいなこと思わないだろ。どういう思考回路してんだよ。
ちょっと雪音ちゃんにもその点尋ねてみるが、案の定、「やっぱり! マルセル殿下もカミ様に気がありますよ!」とはしゃぎ始める。
「確かに。普通そんなさ、それって私への恋愛感情ですよね、みたいなこと言わないよな。どんな確認だよ。恥ずかしいわ」
「ですよね、ですよね!? てことは? てことはどういう意味ですか!」
前のめりで答えを求めてくる雪音ちゃんの目は、期待にきらきらと輝いている。
そりゃね、俺ももう二十数年生きてますから。人生経験は雪音ちゃんよりも豊富である。
大きく頷いて、答えを出す。
「つまりだ。マルセルはナルシストのクソヤベェ奴ってことだろ」
「クソヤベェのはカミ様の方ですよ」
「なんだと!」
突然向けられるファンからの罵倒ほど、俺の心を抉るものはない。裏切られたみたいな気分になって呆然としていると、雪音ちゃんが「マジでヤベェですよ」と冷たい目を向けてくる。
おまえ、それが推しに向ける目か?
いつになく不機嫌な雪音ちゃんは、「なんでわかんないかなぁ」と盛大に頭を抱えている。
「相手に、自分のことが好きかどうか確認する時ってどういう時ですか!」
「頭がどうかしてる時」
「ちっがう!」
大声で否定する雪音ちゃんは、ちょっと怖かった。
「なんですかその夢も希望もない答えは!」
もっと他にあるでしょ! との勢いの気圧されて、俺は考える。自分のことを好きかどうか確認する時ってなんだ。んな確認しねぇよ、と思って、ハッとする。
いや、したことあるわ。「俺のこと好き?」って言ったことあるわ、俺。問題は、それがいつだったかってことだろ。だったら答えは簡単だ。
雪音ちゃんを真正面から見据えて、ニヤリと口角を持ち上げる。この勝負、もらった。
「ライブの時!」
「ちっ、がわないけど、違う!」
複雑な顔をした雪音ちゃんは、多分俺らのライブ風景を思い出していた。マイク握ってファンの子たちに向かって「俺のこと好き?」って尋ねると、なんか面白いくらいに「好きー!」って揃った答えが返ってくるのだ。打ち合わせでもしたんか君らってくらい綺麗に声が揃うから面白いのだ。
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