20 / 102
20 副団長
しおりを挟む
「いいですか。とりあえず謝っといてください。あまり副団長を刺激しないで」
「僕、礼節はわきまえてるから大丈夫」
「本当ですか?」
今のどこに疑いの目を向ける要素があった。
失礼なザックは副団長室の前で立ち止まると一度息を吐いてから軽くノックする。すぐに中から「どうぞ」と声がかかった。
「失礼いたします」
かしこまって挨拶をしたザックが扉を開けてくれる。中に入るよう視線で促された僕は、とりあえず堂々としておくことにする。胸を張って入室した僕。
執務机でなにやら書類を見ていたらしい副団長っぽい男が顔を上げる。神経質そうな顔。ザックも大概真面目そうな見た目だが、なんだろう。だいぶ違う。
ザックがいいとこの世間知らずのお坊ちゃんみたいな見た目なのに対して、副団長はクソ真面目な学者みたいな顔してた。四角い眼鏡が余計にそう印象付けるのかもしれない。あんまり騎士には見えないな。僕より事務仕事得意そう。近衛騎士だから見た目重視なのかな。イケメンではある。僕には劣るけど。
そんなことを考えながらボケっとしていれば、背後でザックがわざとらしく咳払いをした。なんだ?
「風邪でもひいた?」
体調を気遣ってやればすごい目で見られた。なんだよ。
「副団長。リアムさんをお連れしました」
視線を副団長に向けたザックが、僕の背中を押す。ようやく意図を察した僕は「初めまして」と頭を下げた。
「事務官のリアムです」
「初めまして、リアムさん。近衛騎士団副団長のギルと申します」
立ち上がって丁寧に自己紹介してくれたギルはすぐに座ってこちらを見上げてくる。鋭い目だ。
「色々と引き継ぎなどをしようと思ってお呼びしたのですがその前に」
言葉を切ったギルが、すっと目を細める。
「今までどこで何を? 随分と探したのですが」
淡々とした静かな声だ。たぶん怒っているな、これは。なんて答えようか。遅刻の言い訳を考えるのをすっかり忘れていた。困った僕は目を伏せる。気弱なリアムらしい答えを出さねば。
「えっと、その。寝坊してしまいまして。申し訳ありません」
結局無難な答えになってしまった。まぁエドワードに捕まってベッドからなかなか抜け出せなかったのだ。あながち嘘ではない。
ぺこりと頭を下げれば、ギルがなにやら言いたげな顔をしている。しばらく無言のまま見つめあっていた僕らだが、先にギルが口を開いた。
「物事には限度があると思いませんか。少しの遅刻であれば大目に見ることも考えますが、いくらなんでもこれは酷い。もうすぐ昼ですよ」
「はい、すみません」
「あなた初日にも遅刻してきたそうじゃないですか」
「はい」
「はいじゃなくて。改善する気はないのですか」
「あります」
そうですか、と腕を組んだギルは小さく首を振る。
「わかりました。今日のところはあなたのその言葉を信じましょう」
「ありがとうございます。以後気をつけます」
やった。なんだかよくわからんが許してもらえた。話は終わったのだし回れ右して帰ろうとしたら「ちょっと待ちなさい」とギルに制止された。
「引き継ぎのために呼んだのですよ」
そういやそうだったな。笑顔を取り繕って対応すればギルはなにやら難しい話を始める。僕の背後でザックが心配そうにしている気配を感じた。
ギルの話は半分も理解できなかったが、わからないと白状して怒られるのも嫌なのでふんふん頷いておく。後でザックに確認しよう。
「ということでお願いできますか」
「はい!」
最後に元気よく返事をすれば完璧だ。
「……本当にわかっています?」
「もちろん!」
なんだかギルが不安そうな顔をしていた。勢いよく返事をしすぎたかな。
「僕、礼節はわきまえてるから大丈夫」
「本当ですか?」
今のどこに疑いの目を向ける要素があった。
失礼なザックは副団長室の前で立ち止まると一度息を吐いてから軽くノックする。すぐに中から「どうぞ」と声がかかった。
「失礼いたします」
かしこまって挨拶をしたザックが扉を開けてくれる。中に入るよう視線で促された僕は、とりあえず堂々としておくことにする。胸を張って入室した僕。
執務机でなにやら書類を見ていたらしい副団長っぽい男が顔を上げる。神経質そうな顔。ザックも大概真面目そうな見た目だが、なんだろう。だいぶ違う。
ザックがいいとこの世間知らずのお坊ちゃんみたいな見た目なのに対して、副団長はクソ真面目な学者みたいな顔してた。四角い眼鏡が余計にそう印象付けるのかもしれない。あんまり騎士には見えないな。僕より事務仕事得意そう。近衛騎士だから見た目重視なのかな。イケメンではある。僕には劣るけど。
そんなことを考えながらボケっとしていれば、背後でザックがわざとらしく咳払いをした。なんだ?
「風邪でもひいた?」
体調を気遣ってやればすごい目で見られた。なんだよ。
「副団長。リアムさんをお連れしました」
視線を副団長に向けたザックが、僕の背中を押す。ようやく意図を察した僕は「初めまして」と頭を下げた。
「事務官のリアムです」
「初めまして、リアムさん。近衛騎士団副団長のギルと申します」
立ち上がって丁寧に自己紹介してくれたギルはすぐに座ってこちらを見上げてくる。鋭い目だ。
「色々と引き継ぎなどをしようと思ってお呼びしたのですがその前に」
言葉を切ったギルが、すっと目を細める。
「今までどこで何を? 随分と探したのですが」
淡々とした静かな声だ。たぶん怒っているな、これは。なんて答えようか。遅刻の言い訳を考えるのをすっかり忘れていた。困った僕は目を伏せる。気弱なリアムらしい答えを出さねば。
「えっと、その。寝坊してしまいまして。申し訳ありません」
結局無難な答えになってしまった。まぁエドワードに捕まってベッドからなかなか抜け出せなかったのだ。あながち嘘ではない。
ぺこりと頭を下げれば、ギルがなにやら言いたげな顔をしている。しばらく無言のまま見つめあっていた僕らだが、先にギルが口を開いた。
「物事には限度があると思いませんか。少しの遅刻であれば大目に見ることも考えますが、いくらなんでもこれは酷い。もうすぐ昼ですよ」
「はい、すみません」
「あなた初日にも遅刻してきたそうじゃないですか」
「はい」
「はいじゃなくて。改善する気はないのですか」
「あります」
そうですか、と腕を組んだギルは小さく首を振る。
「わかりました。今日のところはあなたのその言葉を信じましょう」
「ありがとうございます。以後気をつけます」
やった。なんだかよくわからんが許してもらえた。話は終わったのだし回れ右して帰ろうとしたら「ちょっと待ちなさい」とギルに制止された。
「引き継ぎのために呼んだのですよ」
そういやそうだったな。笑顔を取り繕って対応すればギルはなにやら難しい話を始める。僕の背後でザックが心配そうにしている気配を感じた。
ギルの話は半分も理解できなかったが、わからないと白状して怒られるのも嫌なのでふんふん頷いておく。後でザックに確認しよう。
「ということでお願いできますか」
「はい!」
最後に元気よく返事をすれば完璧だ。
「……本当にわかっています?」
「もちろん!」
なんだかギルが不安そうな顔をしていた。勢いよく返事をしすぎたかな。
251
あなたにおすすめの小説
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います
緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。
知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。
花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。
十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。
寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。
見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。
宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。
やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。
次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。
アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。
ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。
僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!
「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!
だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる