王太子の愛人である傾国の美男子が正体隠して騎士団の事務方始めたところ色々追い詰められています

岩永みやび

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20 副団長

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「いいですか。とりあえず謝っといてください。あまり副団長を刺激しないで」
「僕、礼節はわきまえてるから大丈夫」
「本当ですか?」

 今のどこに疑いの目を向ける要素があった。
 失礼なザックは副団長室の前で立ち止まると一度息を吐いてから軽くノックする。すぐに中から「どうぞ」と声がかかった。

「失礼いたします」

 かしこまって挨拶をしたザックが扉を開けてくれる。中に入るよう視線で促された僕は、とりあえず堂々としておくことにする。胸を張って入室した僕。

 執務机でなにやら書類を見ていたらしい副団長っぽい男が顔を上げる。神経質そうな顔。ザックも大概真面目そうな見た目だが、なんだろう。だいぶ違う。

 ザックがいいとこの世間知らずのお坊ちゃんみたいな見た目なのに対して、副団長はクソ真面目な学者みたいな顔してた。四角い眼鏡が余計にそう印象付けるのかもしれない。あんまり騎士には見えないな。僕より事務仕事得意そう。近衛騎士だから見た目重視なのかな。イケメンではある。僕には劣るけど。

 そんなことを考えながらボケっとしていれば、背後でザックがわざとらしく咳払いをした。なんだ?

「風邪でもひいた?」

 体調を気遣ってやればすごい目で見られた。なんだよ。

「副団長。リアムさんをお連れしました」

 視線を副団長に向けたザックが、僕の背中を押す。ようやく意図を察した僕は「初めまして」と頭を下げた。

「事務官のリアムです」
「初めまして、リアムさん。近衛騎士団副団長のギルと申します」

 立ち上がって丁寧に自己紹介してくれたギルはすぐに座ってこちらを見上げてくる。鋭い目だ。

「色々と引き継ぎなどをしようと思ってお呼びしたのですがその前に」

 言葉を切ったギルが、すっと目を細める。

「今までどこで何を? 随分と探したのですが」

 淡々とした静かな声だ。たぶん怒っているな、これは。なんて答えようか。遅刻の言い訳を考えるのをすっかり忘れていた。困った僕は目を伏せる。気弱なリアムらしい答えを出さねば。

「えっと、その。寝坊してしまいまして。申し訳ありません」

 結局無難な答えになってしまった。まぁエドワードに捕まってベッドからなかなか抜け出せなかったのだ。あながち嘘ではない。

 ぺこりと頭を下げれば、ギルがなにやら言いたげな顔をしている。しばらく無言のまま見つめあっていた僕らだが、先にギルが口を開いた。

「物事には限度があると思いませんか。少しの遅刻であれば大目に見ることも考えますが、いくらなんでもこれは酷い。もうすぐ昼ですよ」
「はい、すみません」
「あなた初日にも遅刻してきたそうじゃないですか」
「はい」
「はいじゃなくて。改善する気はないのですか」
「あります」

 そうですか、と腕を組んだギルは小さく首を振る。

「わかりました。今日のところはあなたのその言葉を信じましょう」
「ありがとうございます。以後気をつけます」

 やった。なんだかよくわからんが許してもらえた。話は終わったのだし回れ右して帰ろうとしたら「ちょっと待ちなさい」とギルに制止された。

「引き継ぎのために呼んだのですよ」

 そういやそうだったな。笑顔を取り繕って対応すればギルはなにやら難しい話を始める。僕の背後でザックが心配そうにしている気配を感じた。

 ギルの話は半分も理解できなかったが、わからないと白状して怒られるのも嫌なのでふんふん頷いておく。後でザックに確認しよう。

「ということでお願いできますか」
「はい!」

 最後に元気よく返事をすれば完璧だ。

「……本当にわかっています?」
「もちろん!」

 なんだかギルが不安そうな顔をしていた。勢いよく返事をしすぎたかな。
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