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17歳
750 でも
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「なに?」
ユリスを振り返ると「なにじゃないだろ」と冷たい声が返ってくる。なぜか目線を鋭くして、ジェフリーとティアンを見比べるユリス。ティアンは、どこか居心地悪そうにそわそわしている。みんなから少し離れた位置で控えるタイラーは、首を突っ込みたくないと言わんばかりに黙り込んでいる。
そんな妙な空気の中、ユリスが偉そうに腕を組んだ。
「それで? 結局ルイスは誰のことが好きなんだ」
「えっ」
なにその質問。
目を丸くする俺に、ユリスは「どうなんだ」と詰め寄ってくる。その隣には、相変わらずデニスがぴたりとくっついている。「えー、ルイスくん。ジェフリーと付き合ってるの?」と冗談めいた口調でにこにこするデニスは、興味津々といった様子で俺たちを見守っている。
そのジェフリーは、なにやら期待に満ちた目を向けてくる。
どうして突然そういう話になるのだ。
いや、まぁ。ジェフリーのあの発言が原因なのは明白なんだけど。
でも俺、ジェフリーとはお付き合いできないってもう何度も言ってるよね? さすがはデニスの弟である。すごく諦めが悪い。兄弟揃って期待の眼差しを向けてくるものだから、居心地の悪くなった俺は俯いてしまう。
「……俺には、ティアンがいるから」
考えた末に、そんな言葉が口をついた。ジェフリーが目に見えてがっかりするのがわかった。でもこればかりは仕方がない。俺は出会ったときからジェフリーのことを弟みたいだと思っている。最近ではジェフリーが成長して、あまり身長も変わらなくなってしまったけど、それでもジェフリーは俺の弟だと思う。名前を呼ばれたティアンが、静かに息を呑んだのがわかった。
「だから、別に誰かと付き合うとかそういうのは、今は考えてないって言うか」
もはや自分でもなにを言っているのか理解できない。ティアンがいるから誰ともお付き合いできないってなんだよ。どういうことだよ。
てか、突然付き合うとかそんなこと訊かれてもわからないっての。
急に恥ずかしくなった俺は、とにかくこの話題を終わらせようと一度大きく手を叩く。みんなの顔を見ないようにして、固まるように佇んでいたティアンに駆け寄った。
その腕を一方的に掴んで、強引に引っ張る。たたらを踏むティアンは、迷うように俺とユリスたちを見比べている。早く行こうとティアンに言いかけた瞬間。
「……ルイス様は、やはりティアンさんとお付き合いしているんですか?」
みんなが困惑する中、ジェフリーが恐る恐るといった様子で口を開いた。どうなんだと問いかける目が、俺に突き刺さる。
ティアンを伴って自室に戻ろうとしていた俺は、ぴたりと足を止める。
なにを考えているのかわからないティアンの薄青の瞳が、俺を捉えた。その瞬間、自分でも理解不能な感情が湧き上がってくる。
困惑、羞恥、動揺。
いろんな感情が混ざり合って、思うように答えが出てこない。
一体なにを躊躇う必要があるのか。俺とティアンは友達である。正確には主人と騎士という主従関係のようなものかもしれない。でも、少なくとも俺はティアンとは対等な立場でいるつもりだ。ティアンの方は、そうは思っていないだろうけど。
そう答えればいいはずだ。俺とティアンはお付き合いなんてしていない。単なる友達なのだから、と。けれども、なぜか言葉が出てこない。
俯いたまま視線を彷徨わせていると、俺の手がティアンの袖をガッチリ握っているのが視界に入った。気づいた途端、弾かれたように手を離す。
パッと背中に両手を回して、ティアンから隠すようにする。
「……」
黙り込む俺と目線を合わせて、ティアンが小さく微笑んだ。よくよく観察していないと見逃してしまうくらいに、ほんの一瞬の小さな笑みだった。
でもそれを見た途端に、体の力が抜けた。変に焦っていたのが、急に馬鹿らしく思えてくる。別に変な質問をされたわけでもない。慌てる必要はなにもない。少しばかりの余裕を取り戻した俺は、ジェフリーに向き直った。
「付き合ってはないよ」
簡潔に事実だけを告げる。
けれどもぎゅっと眉間に力を入れているジェフリーは、到底納得などしていない。
無言で俺の隣に立ったティアンが「そうですね」と俺の言葉に同意した。
「僕とルイス様は付き合ってはいません」
だよね。
内心でうんうん頷きながらティアンの言葉に耳を傾ける。ちょっぴり低く耳触りのよい声は、聞き慣れた優しいものだ。
「でも」
一旦そこで言葉を切ったティアンは、気持ち俺の方に体を寄せた。背中に手を添えられて、くすぐったい気分になる。
なんだろうとティアンを見上げる。
真面目な顔でユリスたちを前にするティアンは、まるで深呼吸でもするかのように少し息を吸ってから俺を見た。
「付き合えたらいいなって、思ってますよ」
その意味するところを徐々に理解する。
ぽかんと口を開ける俺は、ゆっくりと目を見開いた。ユリスの「ふーん?」という面白いと言わんばかりの反応が、どこか遠くから聞こえる。
背中に添えられたティアンの手が、静かに離れていった。
ユリスを振り返ると「なにじゃないだろ」と冷たい声が返ってくる。なぜか目線を鋭くして、ジェフリーとティアンを見比べるユリス。ティアンは、どこか居心地悪そうにそわそわしている。みんなから少し離れた位置で控えるタイラーは、首を突っ込みたくないと言わんばかりに黙り込んでいる。
そんな妙な空気の中、ユリスが偉そうに腕を組んだ。
「それで? 結局ルイスは誰のことが好きなんだ」
「えっ」
なにその質問。
目を丸くする俺に、ユリスは「どうなんだ」と詰め寄ってくる。その隣には、相変わらずデニスがぴたりとくっついている。「えー、ルイスくん。ジェフリーと付き合ってるの?」と冗談めいた口調でにこにこするデニスは、興味津々といった様子で俺たちを見守っている。
そのジェフリーは、なにやら期待に満ちた目を向けてくる。
どうして突然そういう話になるのだ。
いや、まぁ。ジェフリーのあの発言が原因なのは明白なんだけど。
でも俺、ジェフリーとはお付き合いできないってもう何度も言ってるよね? さすがはデニスの弟である。すごく諦めが悪い。兄弟揃って期待の眼差しを向けてくるものだから、居心地の悪くなった俺は俯いてしまう。
「……俺には、ティアンがいるから」
考えた末に、そんな言葉が口をついた。ジェフリーが目に見えてがっかりするのがわかった。でもこればかりは仕方がない。俺は出会ったときからジェフリーのことを弟みたいだと思っている。最近ではジェフリーが成長して、あまり身長も変わらなくなってしまったけど、それでもジェフリーは俺の弟だと思う。名前を呼ばれたティアンが、静かに息を呑んだのがわかった。
「だから、別に誰かと付き合うとかそういうのは、今は考えてないって言うか」
もはや自分でもなにを言っているのか理解できない。ティアンがいるから誰ともお付き合いできないってなんだよ。どういうことだよ。
てか、突然付き合うとかそんなこと訊かれてもわからないっての。
急に恥ずかしくなった俺は、とにかくこの話題を終わらせようと一度大きく手を叩く。みんなの顔を見ないようにして、固まるように佇んでいたティアンに駆け寄った。
その腕を一方的に掴んで、強引に引っ張る。たたらを踏むティアンは、迷うように俺とユリスたちを見比べている。早く行こうとティアンに言いかけた瞬間。
「……ルイス様は、やはりティアンさんとお付き合いしているんですか?」
みんなが困惑する中、ジェフリーが恐る恐るといった様子で口を開いた。どうなんだと問いかける目が、俺に突き刺さる。
ティアンを伴って自室に戻ろうとしていた俺は、ぴたりと足を止める。
なにを考えているのかわからないティアンの薄青の瞳が、俺を捉えた。その瞬間、自分でも理解不能な感情が湧き上がってくる。
困惑、羞恥、動揺。
いろんな感情が混ざり合って、思うように答えが出てこない。
一体なにを躊躇う必要があるのか。俺とティアンは友達である。正確には主人と騎士という主従関係のようなものかもしれない。でも、少なくとも俺はティアンとは対等な立場でいるつもりだ。ティアンの方は、そうは思っていないだろうけど。
そう答えればいいはずだ。俺とティアンはお付き合いなんてしていない。単なる友達なのだから、と。けれども、なぜか言葉が出てこない。
俯いたまま視線を彷徨わせていると、俺の手がティアンの袖をガッチリ握っているのが視界に入った。気づいた途端、弾かれたように手を離す。
パッと背中に両手を回して、ティアンから隠すようにする。
「……」
黙り込む俺と目線を合わせて、ティアンが小さく微笑んだ。よくよく観察していないと見逃してしまうくらいに、ほんの一瞬の小さな笑みだった。
でもそれを見た途端に、体の力が抜けた。変に焦っていたのが、急に馬鹿らしく思えてくる。別に変な質問をされたわけでもない。慌てる必要はなにもない。少しばかりの余裕を取り戻した俺は、ジェフリーに向き直った。
「付き合ってはないよ」
簡潔に事実だけを告げる。
けれどもぎゅっと眉間に力を入れているジェフリーは、到底納得などしていない。
無言で俺の隣に立ったティアンが「そうですね」と俺の言葉に同意した。
「僕とルイス様は付き合ってはいません」
だよね。
内心でうんうん頷きながらティアンの言葉に耳を傾ける。ちょっぴり低く耳触りのよい声は、聞き慣れた優しいものだ。
「でも」
一旦そこで言葉を切ったティアンは、気持ち俺の方に体を寄せた。背中に手を添えられて、くすぐったい気分になる。
なんだろうとティアンを見上げる。
真面目な顔でユリスたちを前にするティアンは、まるで深呼吸でもするかのように少し息を吸ってから俺を見た。
「付き合えたらいいなって、思ってますよ」
その意味するところを徐々に理解する。
ぽかんと口を開ける俺は、ゆっくりと目を見開いた。ユリスの「ふーん?」という面白いと言わんばかりの反応が、どこか遠くから聞こえる。
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