嫌われ令息に成り代わった俺、なぜか過保護に愛でられています

岩永みやび

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17歳

777 困惑

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 ティアンの紹介で、ロレッタと対面する。清楚な見た目であるが、ティアンとユリスに結婚を申し入れた人である。あまり油断はできない。

 ちょっぴり緊張する俺だが、しれっとついてきたニックとユリスは平気な顔だ。綿毛ちゃんだけがオロオロしている。背の高い綿毛ちゃんが、自信なさそうにしている様子は少し面白い。

「はじめまして、ルイス様。私、ロレッタといいます」
「はじめまして」

 十八歳だというロレッタは、にこりと余裕のある笑みを浮かべている。俺よりひとつ年上だ。

 途端に緊張する俺。年下の女の子は何人か知り合いがいるけど、年上のお姉さんは珍しい。落ち着きなく視線を彷徨わせていると、ユリスに小突かれた。慌てて姿勢を正すと、ロレッタがくすくすと控えめに笑う。

「仲がよろしいのですね」
「え? ユリスと? う、うん。それなりに」

 それなりってなんだ、という冷静な問いかけがユリスから飛んでくる。それを聞き流して、改めてロレッタを見た。ティアンが賑やかな子と言っていたが、今のところ物静かな印象だ。

 年上のお姉さんって感じ。なんだか新鮮だ。

 突っ込んだ質問をするのが憚られて、なんとなくティアンの背中に隠れる。カミールの妹であるヘイゼルも大人っぽい子だったけど、あちらは年下だったので気楽に接することができたのだ。

 挙動不審な俺に、ユリスが不思議そうにしている。ユリスは誰が相手でも基本的に態度を変えない。清楚系お姉さん相手でも緊張しないのだろう。

「ルイス様?」

 ユリスに加えて、ティアンまでもが心配そうな顔をした。「ルイス様って人見知りするような性格でしたっけ?」とニックが余計な疑問を口にしている。俺だって、たまには人見知りする。しかしこのまま引き下がるわけにもいかない。意を決して、俺はティアンの背中から顔を出してみる。

「……ティアンとは、えっと。友達?」

 ぎこちなく問えば、ロレッタがふわりと微笑んだ。花が咲くような可憐な笑みだ。

「先程まで婚約者でした。ですから今は、元婚約者?」
「違います」

 そっと首を傾げるロレッタに、ティアンが意外と冷たい声を発した。驚いてティアンを見ると、頬をかいた彼が「彼女の言うことは話半分で聞いてください」と失礼なアドバイスをよこす。

 それに怒りもしないロレッタは、にこにこと笑みをたたえたまま。

 どうやらティアンとロレッタには婚約していたという事実はないらしい。理解の追いつかない俺を放って、ロレッタがユリスを見据えた。

「今はユリス様と婚約しております」
「してないが?」

 きっぱり否定するユリスは「僕は君に興味が持てない」と面と向かって酷いことを放つ。綿毛ちゃんが慌てて「ダメだよぉ。そんなこと言ったら」と注意しているけど、いまいち頼りにならない。

 少しだけ困ったように首を傾げるロレッタは「また振られてしまいました」と肩を落とす。今のは振られたことになるのか? 単なる冗談じゃなくて?

「えーと、気にしないで? ユリスには、ほら。デニスがいるから」

 振られたのはロレッタが悪いわけではないと励ますと、ユリスに「適当なことを言うな」と怒られてしまう。なんでだよ。デニスと仲いいだろ。

 ぱっと表情を明るくするロレッタは「まぁ!」と口元を押さえる。

「なんてお優しい。私、ルイス様と結婚したいです。私と婚約していただけませんか?」
「え」

 驚いて、一歩後ろに下がる俺。ティアン、ユリスに続いて俺にまで。この短時間で一体何人に婚約を申し込んでいるのだ。

 困惑する俺とは対照的に、ユリスはニヤッと笑っていた。絶対にこの状況を楽しんでいる。ティアンは額を押さえて天を仰いでいる。綿毛ちゃんは「え! もう婚約しちゃうの? すごくはやいね」と妙に感心していた。

 みんなから一歩離れた位置で見守っていたニックが「ルイス様を困惑させるなんて。すごいですね」と変な感想をもらす。俺だって普通に困惑することだってあるぞ。

「私、はやいうちに結婚したくて。ルイス様とであれば、素晴らしい結婚生活が送れると思うのです」

 にこっとロレッタに微笑みかけられて、たじろいでしまう。あくまで控えめに。けれども押しの強いロレッタに、どう対応すればいいのかわからない。

 困った末に、俺はティアンを前に押しやった。

「俺にはティアンがいるから! ごめんね!」
「まぁ……!」

 顔の前で両手を合わせて。なぜかきらきらとした表情になるロレッタは「そういうことですか」とひとりで納得してしまう。

「愛の形なんて様々ですからね。わかりました。では私はルイス様の側室ということで」

 なにその割り切りのよさ。
 俺は側室の募集なんてしてないから。
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