嫌われ令息に成り代わった俺、なぜか過保護に愛でられています

岩永みやび

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17歳

778 側室

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 側室の件も丁重にお断りする。しかしロレッタは引かない。物静かな見た目に反して、すごく手強い。終始にこにこしている彼女は「ご迷惑はおかけしません。私のことは、いないものと考えていただいて構いませんので」と言い出す始末だ。

 そんなことできるわけがない。

 断固拒否する俺と、やんわり意見を押し通そうとするロレッタの戦いはしばらく続いた。途中でユリスが「いいじゃないか、側室くらい」と言い出すから大変だった。いいわけないだろう。無責任な提案をするユリスは、ニヤッと笑ってティアンを見ていた。どうやらティアンを揶揄うための発言らしい。やめてやれ。

 ついには綿毛ちゃんが首を突っ込んできた。修羅場大好き綿毛ちゃんは、しかしこの修羅場はお気に召さなかったらしい。「みんなやめて!」と中心に立って主張していた。

 そんなどうしようもない修羅場を止めたのは、ロニーに背中を押されて渋々外に出てきたセドリックであった。

 俺たちは、騎士棟付近でずっと言い争っていた。その声は、近くを通る騎士たちに丸聞こえ。ずっと揉めているようなので、心配になった騎士たちがセドリックを呼びに行ってくれたらしい。

 面倒くさがりなセドリックは、とても腰が重い。びっくりするくらい積極性がない。騎士団の団長になったのに、やる気は皆無。

 けれども面倒を嫌う彼は、人と言い合うのも得意ではない。その場に居合わせたロニーをはじめとする騎士たちにあれこれ言われて、反論するほどの積極性をセドリックは持っていない。結果、渋々外に出てくることになったらしい。

 突然現れたセドリックに、ニックが露骨に目を輝かせた。「団長! どうしたんですか!?」と急にやる気を見せるニックは、俺を見据えて「ルイス様。団長がこんなところで言い争うのはやめろって言っていますよ!」と背筋を伸ばした。いやセドリックは何も言ってないけど?

 セドリックの前ということで、急に張り切るニックはタチが悪い。ティアンも到底先輩に向けるものとは思えないような目で、ニックを睨んでいる。それをまったく気にしないニックは、しれっとセドリックの隣を確保していた。

 そんなニックに苦笑してみせたロニーが、心配そうな面持ちで「なにかありましたか?」と問いかけてきた。

 眉尻を下げたロニーに訊かれて、俺は素早く首を左右に振った。

「なんでもない! 大丈夫! 心配かけてごめんね」
「坊ちゃん。急におとなしくなるねぇ」

 余計なことを口走る綿毛ちゃんの足を踏んでやる。いつも人の足を好き勝手に踏んでいる毛玉は、へにゃっと情けない顔になった。

「どうやらルイスは、ロニーの方がお好みらしいな」

 腕を組んだユリスが、横目でティアンを見た。先程からユリスのティアンに対する対抗心がすごい。一体なんなのだ。

 慌ててティアンに「違うよ」と説明する羽目になる。ロニーは好きだが、ティアンに対する好きとは違うのだ。俺にはもうロニーと付き合いたいという気持ちはない。

 そんな俺たちの小競り合いを見ていたロレッタが「まぁ!」と手を合わせた。

「なるほど。そちらの殿方も含めて複雑なご関係なのですね」
「違うよ!?」

 彼女の中で、俺たちの相関図がとんでもないことになっている。にこりと微笑んだままのロレッタは「わかりました」とゆっくり頷く。突然巻き込まれたロニーが、しきりに目を瞬いていた。

「どんなに複雑なご関係であろうと、私は気にしません。側室である私は一切口を挟みませんのでご安心ください」
「だから違うんだって!」

 それにロレッタを側室にする話は断ったはずだ。全然受け入れてくれないロレッタは、もう既に自分が側室の立場になったつもりでいる。

 もうどうにもできない空気に、俺は立ち尽くした。同じく立ち尽くすティアンは、俺にロレッタを紹介したことを後悔している様子であった。

「ちょっと、彼女のこと止めてくださいよ」

 困った末に、ティアンはロレッタのお供に助けを求めた。ずっとロレッタの後ろに控えていた使用人らしき男性は、俯けていた顔を持ち上げた。二十代くらいの茶髪の青年は、「え」と声をもらす。

「い、いえ。俺には無理です!」

 ぶんぶん首を振る青年は、ティアンから遠ざかっていく。自分たちで解決してくださいと言わんばかりの態度だ。どうやらロレッタのこれは、特に珍しくない行動のようだ。

 出てきた割にひと言も発しないセドリックは、ぼんやり遠くを眺めていた。ロニーがその背中を押して何事かを囁いている。どうにかしてくれと頼んでいるのだろう。頼まれたセドリックは、表情が死んでいるけど。
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