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17歳
783 可愛い子
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自分は猫が好きであると微妙にどうでもいい嘘を吐いたティアンは、そわそわした面持ちで俺のお母様を見ていた。口が滑ったとでも言うべきか。勢い余って俺のことが好きと口走ったティアンであるが、のんびりしたお母様には伝わらなかった。なんか可哀想。せっかく勇気を出したのに。
精一杯ふり絞った決意が無駄に終わったティアンは、緊張がピークに達している。先程以上に落ち着きのない態度で、しきりに何かを言おうとしては口を閉ざしている。
「あの。私はそろそろ。ケイシーのことも心配ですから」
ティアンのただならぬ雰囲気に、キャンベルの方はなにかを察したらしい。気を遣って、席を外そうとしてくれる。それを静かに制止したのはお母様だった。
「あら? まだいいじゃない」
にこりと微笑むお母様は、ここを教えてほしいとマイペースに刺繍を続けている。俺とティアンに視線をやったキャンベルは、「ごめんね」と言わんばかりに小さく頭を下げると、再びお母様と一緒に刺繍を始めてしまった。キャンベルも家族だから、この場にいても問題はない。
一生懸命に花の刺繍をしているお母様は、手元に視線を集中させている。そわそわしている綿毛ちゃんが、『言わないの?』とすんごい小声でティアンを急かしている。
無言で事の成り行きを見守るユリスは、おとなしく座っている。お母様の前だと、ユリスは途端に静かになるのだ。ソファに座っていた俺は、ティアンを振り返る。口パクで「がんばれ」と伝えるが、ティアンは無理と言わんばかりに固い表情だ。どうやらお父様への報告よりも、お母様への報告の方が難易度が高いらしい。
「……それで? あなた、ルイスのことが好きなの?」
集中していたはずのお母様が、手元に目線を固定したままそう呟いた。突然の問いかけに、ティアンが目を丸くした。
どうやら話を聞いていないように見えて、きちんと理解していたらしい。キャンベルも驚いたようにお母様を見ている。
「気持ちはわかるわよ。ルイスは可愛いもの」
唐突な褒め言葉に、俺は照れてしまう。お母様はいまだに俺たちのことを可愛いと言う。ユリスはそれが少々不満らしい。もう十七だからね。可愛いという単語が気に食わなくても無理はない。俺は普通に嬉しいけどね。
にこにこ笑う俺と目を合わせて、お母様が頷いた。
「でも可愛いからこそ、親としては心配なのよ。変な人に騙されやしないかとか」
「俺、別に騙されたりしないよ」
横から口を挟むけど、お母様は納得してくれない。ティアンとも目を合わせないお母様は、のんびり刺繍を続けている。
修羅場だと叫びたそうにしている綿毛ちゃんは、けれども空気を読んで黙っている。
ティアンが、前に出た。
先程までの緊張はどこへやら。背筋を伸ばしたティアンは、俺の座るソファのすぐ横まで来ると足を止めた。
「大公妃様。少々よろしいでしょうか」
「どうぞ」
のんびり応じるお母様は、手を止めた。ここでようやくティアンの顔を見た。
ふたりの間に流れる堅苦しい空気に、俺は黙っておくことができなくなった。俺のお母様への報告なのだから、ティアンに任せきりにするのはおかしいだろう。
「お母様! 俺、ティアンと付き合うから!」
勢いで割り込めば、ティアンが「え」と目を見張る。
「あらまあ」
ここでものんびり呟くお母様は、たいして驚いていない。まぁ、こうなることを予想していたのだろう。
「ルイスがそこまで言うなんて。いいんじゃないかしら。あの人よりはマシよね」
お母様の言うあの人とは、アロンのことである。お母様は前々からアロンのことが苦手である。あのクソな性格が気に入らないのだ。それは仕方がないので、放っておこう。
「ありがとうございます」
素早く頭を下げたティアンは、なんだか微妙な顔をしていた。アロンと比べられたのが不服なのだろう。しかしすぐに表情を引き締めると、改めて俺とお付き合いすることになったと報告した。自分の口からも伝えたいという律儀な態度に、お母様がにこにこしていた。どうやらティアンの真面目さに好感を抱いたらしい。
これで両親へのご報告というミッションは達成した。すごく気疲れしたけど、ティアンが寄り添ってくれるのがわかり、嬉しい気分にもなれた。
精一杯ふり絞った決意が無駄に終わったティアンは、緊張がピークに達している。先程以上に落ち着きのない態度で、しきりに何かを言おうとしては口を閉ざしている。
「あの。私はそろそろ。ケイシーのことも心配ですから」
ティアンのただならぬ雰囲気に、キャンベルの方はなにかを察したらしい。気を遣って、席を外そうとしてくれる。それを静かに制止したのはお母様だった。
「あら? まだいいじゃない」
にこりと微笑むお母様は、ここを教えてほしいとマイペースに刺繍を続けている。俺とティアンに視線をやったキャンベルは、「ごめんね」と言わんばかりに小さく頭を下げると、再びお母様と一緒に刺繍を始めてしまった。キャンベルも家族だから、この場にいても問題はない。
一生懸命に花の刺繍をしているお母様は、手元に視線を集中させている。そわそわしている綿毛ちゃんが、『言わないの?』とすんごい小声でティアンを急かしている。
無言で事の成り行きを見守るユリスは、おとなしく座っている。お母様の前だと、ユリスは途端に静かになるのだ。ソファに座っていた俺は、ティアンを振り返る。口パクで「がんばれ」と伝えるが、ティアンは無理と言わんばかりに固い表情だ。どうやらお父様への報告よりも、お母様への報告の方が難易度が高いらしい。
「……それで? あなた、ルイスのことが好きなの?」
集中していたはずのお母様が、手元に目線を固定したままそう呟いた。突然の問いかけに、ティアンが目を丸くした。
どうやら話を聞いていないように見えて、きちんと理解していたらしい。キャンベルも驚いたようにお母様を見ている。
「気持ちはわかるわよ。ルイスは可愛いもの」
唐突な褒め言葉に、俺は照れてしまう。お母様はいまだに俺たちのことを可愛いと言う。ユリスはそれが少々不満らしい。もう十七だからね。可愛いという単語が気に食わなくても無理はない。俺は普通に嬉しいけどね。
にこにこ笑う俺と目を合わせて、お母様が頷いた。
「でも可愛いからこそ、親としては心配なのよ。変な人に騙されやしないかとか」
「俺、別に騙されたりしないよ」
横から口を挟むけど、お母様は納得してくれない。ティアンとも目を合わせないお母様は、のんびり刺繍を続けている。
修羅場だと叫びたそうにしている綿毛ちゃんは、けれども空気を読んで黙っている。
ティアンが、前に出た。
先程までの緊張はどこへやら。背筋を伸ばしたティアンは、俺の座るソファのすぐ横まで来ると足を止めた。
「大公妃様。少々よろしいでしょうか」
「どうぞ」
のんびり応じるお母様は、手を止めた。ここでようやくティアンの顔を見た。
ふたりの間に流れる堅苦しい空気に、俺は黙っておくことができなくなった。俺のお母様への報告なのだから、ティアンに任せきりにするのはおかしいだろう。
「お母様! 俺、ティアンと付き合うから!」
勢いで割り込めば、ティアンが「え」と目を見張る。
「あらまあ」
ここでものんびり呟くお母様は、たいして驚いていない。まぁ、こうなることを予想していたのだろう。
「ルイスがそこまで言うなんて。いいんじゃないかしら。あの人よりはマシよね」
お母様の言うあの人とは、アロンのことである。お母様は前々からアロンのことが苦手である。あのクソな性格が気に入らないのだ。それは仕方がないので、放っておこう。
「ありがとうございます」
素早く頭を下げたティアンは、なんだか微妙な顔をしていた。アロンと比べられたのが不服なのだろう。しかしすぐに表情を引き締めると、改めて俺とお付き合いすることになったと報告した。自分の口からも伝えたいという律儀な態度に、お母様がにこにこしていた。どうやらティアンの真面目さに好感を抱いたらしい。
これで両親へのご報告というミッションは達成した。すごく気疲れしたけど、ティアンが寄り添ってくれるのがわかり、嬉しい気分にもなれた。
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