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17歳
802 清々しい
「ルイス様」
「なに?」
真剣な表情のアロンに呼ばれて、そちらに顔を向けた。
「ティアンとはいつ別れますか」
「別れないよ」
なにを言い出すんだ。思わず半眼になる俺に、アロンは「ティアンと付き合ってても面白くないでしょ!」と声を大きくする。うるさいぞ。
昼食後、部屋でゴロゴロしていた俺である。
突然乗り込んできたアロンは、同じ部屋にティアンがいるにもかかわらず勝手なことを言い始める。うんざりしたように眉を寄せるティアンに、綿毛ちゃんが『ティアンさん、元気出してぇ』とすり寄っている。ズボンが毛だらけになりそう。
さりげなく綿毛ちゃんから距離を取るティアンは、アロンを見据えて「なんの用ですか」と冷たく言い放つ。それを綺麗に無視したアロンは、再び「いつ別れますか」と言い出す。だから別れないってば。
「あなた、何度も振られたじゃないですか」
アロンのしつこさに苛立ったのか。ティアンがそんなことを言い始める。バチバチし始めた空気に、ジャンが部屋の隅に移動した。気配を消してやり過ごすつもりらしい。
俺も綿毛ちゃんを拾って、アロンとティアンから離れる。
にこっと場違いに笑顔を浮かべるアロンは「だからなに?」と悪びれない様子だ。
「俺はルイス様とは付き合えないらしいので、それはもう諦めてます」
大袈裟に肩をすくめるアロンは、俺を横目で見ながらそんなことを言う。諦めてるなら、別にいいんだけど。本当だろうか。
諦めたのであれば、なぜティアンに妙な絡み方をするのだろうか。
そんな疑問を察したのだろう。アロンが真面目な顔になった。
「俺を差し置いてティアンがルイス様と付き合うとか意味わからないので。とりあえず全力でティアンの邪魔をしてやろうと思って」
「クズだね」
思わずポロッとこぼれた本音に、アロンが薄く笑う。
「どうせ俺はクズ野郎ですよ」
自嘲気味に言っているが、事実である。あまり同情する気分にはなれない。綿毛ちゃんが『おもしろーい』とケラケラ笑っている。綿毛ちゃんは、ちょっと黙っていた方がいいと思うぞ。空気を読むんだ。
呆れたように佇むティアンは、深く息を吐き出してしまう。先輩であるアロンの言動に引いていた。まぁ、アロンの言動がクソなのは昔からだ。今更気にしても、どうにもならないだろう。
「こんな面白味のない男のどこがいいんですか。俺の方が絶対に面白いですよ」
「別に面白さを基準に選んでるわけじゃないから」
俺って一体なんだと思われているのだろうか。面白い奴と付き合うと宣言した覚えはない。
ケラケラ笑う毛玉を叩いて、「変な話しないで!」と言っておく。
「ティアンは面白くないけど、別にいいもん!」
ティアンは優しいから。俺はその優しさが好きなのだ。大声で面白くないと言われて、ティアンが小声で「なんかすみません。面白くなくて」と呟いた。だから別にいいんだって。
不満を隠しもしないアロンは、ティアンの悪口を並べ始める。
「ろくに友達もいないような陰湿野郎のどこがいいんですか」
「ティアンだって友達いるから!」
あとティアンは陰湿な性格ではない。どちらかと言えばはっきり物を言うタイプだ。適当なこと言うアロンは、どうにかティアンの悪口を並べたいだけだ。
『ティアンさん。友達いないの? 安心してね。オレはティアンさんの友達だよ』
「綿毛ちゃん、うるさいぞ」
『えー?』
嬉々として首を突っ込んでくる綿毛ちゃんを静かにさせて、俺は仁王立ちする。
「ティアンの悪口言わないで!」
「俺は事実を言っているだけです」
「捏造した事実はね、事実じゃないんだよ」
アロンを諭すが、クソ野郎はこれくらいでは怯まない。短く鼻で笑って聞き流してしまう。態度の悪い大人だな。
アロンのすごいところは、平気な顔で人に嫌がらせしちゃうところである。普通は隠れて嫌がらせするだろう。なんで無駄に堂々としているのだろうか。清々しい。
どうやら俺とティアンを別れさせたいらしいアロンは、事あるごとに俺にティアンの悪口を吹き込んでくる。どれも些細なものだったり、明らかな嘘だったりするけど。その情熱は一体どこから出てくるのだろうか。ブルース兄様も呆れていた。もっとその熱量を他に向けるべきだと思うぞ。
「アロン。そんな変なことしてないで、もっと楽しいことしたら?」
「今のところティアンとルイス様を別れさせようと画策している時が一番楽しいです」
「クソだね」
もっとマシな趣味を探した方がいいと思うぞ。絶対に。
「なに?」
真剣な表情のアロンに呼ばれて、そちらに顔を向けた。
「ティアンとはいつ別れますか」
「別れないよ」
なにを言い出すんだ。思わず半眼になる俺に、アロンは「ティアンと付き合ってても面白くないでしょ!」と声を大きくする。うるさいぞ。
昼食後、部屋でゴロゴロしていた俺である。
突然乗り込んできたアロンは、同じ部屋にティアンがいるにもかかわらず勝手なことを言い始める。うんざりしたように眉を寄せるティアンに、綿毛ちゃんが『ティアンさん、元気出してぇ』とすり寄っている。ズボンが毛だらけになりそう。
さりげなく綿毛ちゃんから距離を取るティアンは、アロンを見据えて「なんの用ですか」と冷たく言い放つ。それを綺麗に無視したアロンは、再び「いつ別れますか」と言い出す。だから別れないってば。
「あなた、何度も振られたじゃないですか」
アロンのしつこさに苛立ったのか。ティアンがそんなことを言い始める。バチバチし始めた空気に、ジャンが部屋の隅に移動した。気配を消してやり過ごすつもりらしい。
俺も綿毛ちゃんを拾って、アロンとティアンから離れる。
にこっと場違いに笑顔を浮かべるアロンは「だからなに?」と悪びれない様子だ。
「俺はルイス様とは付き合えないらしいので、それはもう諦めてます」
大袈裟に肩をすくめるアロンは、俺を横目で見ながらそんなことを言う。諦めてるなら、別にいいんだけど。本当だろうか。
諦めたのであれば、なぜティアンに妙な絡み方をするのだろうか。
そんな疑問を察したのだろう。アロンが真面目な顔になった。
「俺を差し置いてティアンがルイス様と付き合うとか意味わからないので。とりあえず全力でティアンの邪魔をしてやろうと思って」
「クズだね」
思わずポロッとこぼれた本音に、アロンが薄く笑う。
「どうせ俺はクズ野郎ですよ」
自嘲気味に言っているが、事実である。あまり同情する気分にはなれない。綿毛ちゃんが『おもしろーい』とケラケラ笑っている。綿毛ちゃんは、ちょっと黙っていた方がいいと思うぞ。空気を読むんだ。
呆れたように佇むティアンは、深く息を吐き出してしまう。先輩であるアロンの言動に引いていた。まぁ、アロンの言動がクソなのは昔からだ。今更気にしても、どうにもならないだろう。
「こんな面白味のない男のどこがいいんですか。俺の方が絶対に面白いですよ」
「別に面白さを基準に選んでるわけじゃないから」
俺って一体なんだと思われているのだろうか。面白い奴と付き合うと宣言した覚えはない。
ケラケラ笑う毛玉を叩いて、「変な話しないで!」と言っておく。
「ティアンは面白くないけど、別にいいもん!」
ティアンは優しいから。俺はその優しさが好きなのだ。大声で面白くないと言われて、ティアンが小声で「なんかすみません。面白くなくて」と呟いた。だから別にいいんだって。
不満を隠しもしないアロンは、ティアンの悪口を並べ始める。
「ろくに友達もいないような陰湿野郎のどこがいいんですか」
「ティアンだって友達いるから!」
あとティアンは陰湿な性格ではない。どちらかと言えばはっきり物を言うタイプだ。適当なこと言うアロンは、どうにかティアンの悪口を並べたいだけだ。
『ティアンさん。友達いないの? 安心してね。オレはティアンさんの友達だよ』
「綿毛ちゃん、うるさいぞ」
『えー?』
嬉々として首を突っ込んでくる綿毛ちゃんを静かにさせて、俺は仁王立ちする。
「ティアンの悪口言わないで!」
「俺は事実を言っているだけです」
「捏造した事実はね、事実じゃないんだよ」
アロンを諭すが、クソ野郎はこれくらいでは怯まない。短く鼻で笑って聞き流してしまう。態度の悪い大人だな。
アロンのすごいところは、平気な顔で人に嫌がらせしちゃうところである。普通は隠れて嫌がらせするだろう。なんで無駄に堂々としているのだろうか。清々しい。
どうやら俺とティアンを別れさせたいらしいアロンは、事あるごとに俺にティアンの悪口を吹き込んでくる。どれも些細なものだったり、明らかな嘘だったりするけど。その情熱は一体どこから出てくるのだろうか。ブルース兄様も呆れていた。もっとその熱量を他に向けるべきだと思うぞ。
「アロン。そんな変なことしてないで、もっと楽しいことしたら?」
「今のところティアンとルイス様を別れさせようと画策している時が一番楽しいです」
「クソだね」
もっとマシな趣味を探した方がいいと思うぞ。絶対に。
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