嫌われ令息に成り代わった俺、なぜか過保護に愛でられています

岩永みやび

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17歳

829 楽しい計画

 無理矢理に自分を納得させた俺は、ブルース兄様の言葉に頷いておく。それにティアンは、単に熟睡していて俺の声かけに気がついていない可能性だってある。ちょっと姿が見えないだけで、ここまで大騒ぎする必要はなかったかもしれない。

「綿毛ちゃんもいないんだ」

 眉を寄せたブルース兄様は、「隠れて何か食ってるんじゃないか」と失礼な推理を披露した。しかし綿毛ちゃんは食い意地が張っている。その可能性も否定できない。

 とにかくはやく寝ろと兄様に言われて、俺とユリスは部屋に戻ることにした。エリスちゃんを抱えたまま階段をおりる俺の前を歩いていたユリスは、納得していない様子で腕を組んだ。

「こんなにみんなが不在とかあり得るのか?」
「みんなでどっかに出かけてるんじゃない?」

 ティアンはともかく。アロンやニックは時折街に出かけている。それに綿毛ちゃんがついて行くというのは、普通に考えられる話だ。

「どこに出かけるんだ」
「え? 知らないけど」

 なぜか引き下がらないユリスは、「怪しいだろ」と険しい表情になる。

「夜中に集まって、なにか企んでいるんじゃないか?」
「なにを企むんだよ」

 変なところで好奇心旺盛なユリスは、一階にたどり着くなり「おい、ルイス」と強めに俺の腕を掴んできた。

「なに?」
「ちょっと外に行ってみないか?」
「え?」

 衝撃の発言に思わず聞き返す。
 ユリスは基本的に面倒なことが嫌いだ。おまけに外も嫌いで家の中に引きこもりがち。自分から外に行こうと提案するなんて、珍しいこともあるんだな。

 ユリスの顔をまじまじ眺める俺に、ユリスが「嫌なのか?」と半眼になる。

「嫌って言うか。え、外ってどこ? どこまで行くつもりなの?」

 話の流れからして、ティアンやアロン、綿毛ちゃんを探しに行くのだろうことは予想できた。だが庭にいる可能性は低いと思う。俺の疑問に、ユリスは「街に決まっているだろう」とまたもや予想外のことを言った。

「それ本気で言ってるの?」
「あぁ」

 それはいいのか? いや、ダメだろ。
 バレたら絶対に怒られるやつじゃん。

 戸惑う俺に、ユリスは「最低限の護衛を連れて行けば大丈夫だろ」と無責任なことを言い放つ。

 こういうのに嬉々として付き合ってくれそうなのはアロンである。しかしそのアロンは不在なのだ。この状況で一体誰に頼むつもりなのか。

「まさかタイラーに頼むの? 絶対にダメって言われるよ」

 頑固なタイラーである。あいつが折れるとは思えない。普通に怒られて終わりだと思う。ユリスもそう思ったのだろう。「あれはダメだな」と肩をすくめた。

「もっといい奴がいるだろ」
「誰? ニックもレナルドもいなかったよ」

 あのふたりも案外適当なところがあるので、お願いすればなんとかなるかもしれないけど。いないのだから、どうしようもない。考え込む俺であったが、ユリスが口を開いた。

「グリシャは?」

 またもや予想外の提案に、しばし動きを止める。グリシャの部屋には行っていないから不在かどうかはわからない。でもグリシャ?

「グリシャもダメって言うんじゃないかな」
「そんなことないだろ。ほら、あれだ。多少の金を渡せばついてくるだろ」
「えぇー?」

 なんかグリシャのことを買収しようとしているユリスは、「いくら持ってる?」と小突いてきた。

「え? そんなに持ってないけど」

 なんかちまちま集めたお小遣いが、戸棚の奥にあったかもしれない。自分で買い物することなんてないから、基本的に現金は持っていないのだ。それはユリスだって同じだろう。

「じゃあとりあえず着替えてこい」
「本当に行くの?」

 真面目な顔で問いかける俺に、ユリスは当然と言わんばかりの顔で頷いてみせた。ユリスにしては珍しく積極的な姿勢に、俺は流されてしまう。

 とりあえず指示された通り部屋で着替えてきた。外に行くというので、エリスちゃんはベッドに置いてきた。外で離れ離れになっても嫌だからね。エリスちゃんは外に連れて行けないのだ。

 廊下で待っていたユリスも、きちんと着替えを済ませている。

「グリシャに頼むの?」
「あぁ」

 素っ気なく頷いたユリスは、迷いなくグリシャの部屋に向かった。

 なんだか急に緊張してきた俺は、ユリスの隣にぴたりとくっつく。

「歩きにくい。離れろ」
「だってなんか怖いんだもん」

 そんな冷たいこと言わないでと、ユリスの腕にしがみついた。
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