嫌われ令息に成り代わった俺、なぜか過保護に愛でられています

岩永みやび

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17歳

841 お土産

 なんで勝手に屋敷を抜け出すんだと、ひと通り俺たちを叱りつけてきたブルース兄様は何度もため息を吐いている。

 それを全部聞こえていないふりで乗り切るユリスは、面倒くさそうにポケットに手を突っ込んでいた。ユリスは、ブルース兄様のことをどうでもいいと考えている節がある。ついでにオーガス兄様のことも軽んじている。

「もういいか? 眠いんだが」
「おまえは本当に……」

 ユリスのぶれない態度に、ブルース兄様が頭を抱えてしまった。ブルース兄様は毎度ユリスの扱いに苦労している。

 エドウィンは今夜うちに泊まっていくと言った。彼のことはアロンたちに任せて、俺は綿毛ちゃんと共に部屋へ戻った。

『疲れたよぉ』
「綿毛ちゃん。俺に内緒で勝手にお出かけしないで」
『えぇー? どうしようかなぁ』

 へらへら笑う悪い毛玉を揺さぶってから、ベッドに押し込めておく。綿毛ちゃんは俺のペットなのに。どうして誰にでついて行くのだろうか。そういうのはダメだと思う。

 うるさい毛玉がいなくなったところで、俺はティアンを振り返る。

「……なんか邪魔してごめんね」

 ティアンだってたまには息抜きしたいだろうに、完全に邪魔をしてしまった。今更ではあるが謝罪すると、ティアンから「いえ、邪魔だなんてそんな」と困ったような苦笑が返ってきた。

「でも無断で屋敷を抜け出すのはやめてください。僕だって心配しますよ」
「うん。それはごめん」

 思った以上の騒ぎになってしまった。俺の計画では、グリシャ以外にはバレずに済ませるつもりだったのに。なんか結局みんなにバレてしまった。

 そういえば、グリシャにも迷惑をかけてしまったな。あとエドウィンにも。

「あ。そういえばティアンにお土産買ったよ。エドウィンにお金返さないといけない」

 街のお菓子屋さんで買ったのだ。俺が持参した金塊では買い物できなかったから、代わりにエドウィンが出してくれたのだ。

「ありがとうございます。隊長殿には後で僕が返しておきますよ」
「それじゃ、お土産にならないでしょ!」

 なんでティアンへのお土産代をティアンに支払ってもらう必要があるのか。それは意味不明だろ。単なる押し売りじゃないか。急いで戸棚を開けた俺は、一番奥へと手を伸ばす。ちまちま貯めていたお小遣いを引っ張り出して、必要額を確保した。

「エドウィンに返してくるね」
「もう遅いですから。明日でもいいのでは?」
「そう?」

 ティアンの言う通り、エドウィンは疲れた顔をしていた。もう早々に寝ているかもしれない。そうすると邪魔をするのは悪い。

「うん。じゃあ明日にするね」
「はい」

 ティアンが微笑んだのを見た俺は、「あれ?」と首を傾げる。

「お土産は? どこ?」

 肝心のお土産が見当たらない。
 きょろきょろする俺に、ティアンが「そういえば」とドアの方に視線をやった。

「グリシャさんが何か持っていましたけど」
「それだ!」

 買った後、グリシャに持ってもらっていたような気がする。受け取るのをすっかり忘れてしまっていた。

「もらってくるね」

 グリシャも忘れていそうな気がして、俺は緩く笑う。しかしティアンは「だったら僕が」と申し出た。

「ルイス様はお休みになってください。もう遅いですから」
「でも」
「僕が受け取ってきますから大丈夫ですよ」

 ティアンへのお土産なのに、ティアンを顎で使っているような感じになってしまう。それは申し訳ないと眉尻を下げる俺に、ティアンは「お気になさらず」と微笑む。

「うん。じゃあお願い。先に食べてもいいよ。でも俺とユリスの分も入ってるから」

 俺の分は別にティアンにあげちゃってもいいけど、ユリスの分は残しておかないとあのお子様は間違いなく怒る。地味に食い意地が張っているのだ。

「先に食べたりしませんよ。明日、一緒に食べましょう」
「うん!」

 嬉しい提案に全力で頷いておく。
 なんだか明日が楽しみになってきた。

 おやすみなさいと言って退出するティアンを見送ってから、俺は明日に備えて寝ることにした。
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