839 / 964
17歳
841 お土産
なんで勝手に屋敷を抜け出すんだと、ひと通り俺たちを叱りつけてきたブルース兄様は何度もため息を吐いている。
それを全部聞こえていないふりで乗り切るユリスは、面倒くさそうにポケットに手を突っ込んでいた。ユリスは、ブルース兄様のことをどうでもいいと考えている節がある。ついでにオーガス兄様のことも軽んじている。
「もういいか? 眠いんだが」
「おまえは本当に……」
ユリスのぶれない態度に、ブルース兄様が頭を抱えてしまった。ブルース兄様は毎度ユリスの扱いに苦労している。
エドウィンは今夜うちに泊まっていくと言った。彼のことはアロンたちに任せて、俺は綿毛ちゃんと共に部屋へ戻った。
『疲れたよぉ』
「綿毛ちゃん。俺に内緒で勝手にお出かけしないで」
『えぇー? どうしようかなぁ』
へらへら笑う悪い毛玉を揺さぶってから、ベッドに押し込めておく。綿毛ちゃんは俺のペットなのに。どうして誰にでついて行くのだろうか。そういうのはダメだと思う。
うるさい毛玉がいなくなったところで、俺はティアンを振り返る。
「……なんか邪魔してごめんね」
ティアンだってたまには息抜きしたいだろうに、完全に邪魔をしてしまった。今更ではあるが謝罪すると、ティアンから「いえ、邪魔だなんてそんな」と困ったような苦笑が返ってきた。
「でも無断で屋敷を抜け出すのはやめてください。僕だって心配しますよ」
「うん。それはごめん」
思った以上の騒ぎになってしまった。俺の計画では、グリシャ以外にはバレずに済ませるつもりだったのに。なんか結局みんなにバレてしまった。
そういえば、グリシャにも迷惑をかけてしまったな。あとエドウィンにも。
「あ。そういえばティアンにお土産買ったよ。エドウィンにお金返さないといけない」
街のお菓子屋さんで買ったのだ。俺が持参した金塊では買い物できなかったから、代わりにエドウィンが出してくれたのだ。
「ありがとうございます。隊長殿には後で僕が返しておきますよ」
「それじゃ、お土産にならないでしょ!」
なんでティアンへのお土産代をティアンに支払ってもらう必要があるのか。それは意味不明だろ。単なる押し売りじゃないか。急いで戸棚を開けた俺は、一番奥へと手を伸ばす。ちまちま貯めていたお小遣いを引っ張り出して、必要額を確保した。
「エドウィンに返してくるね」
「もう遅いですから。明日でもいいのでは?」
「そう?」
ティアンの言う通り、エドウィンは疲れた顔をしていた。もう早々に寝ているかもしれない。そうすると邪魔をするのは悪い。
「うん。じゃあ明日にするね」
「はい」
ティアンが微笑んだのを見た俺は、「あれ?」と首を傾げる。
「お土産は? どこ?」
肝心のお土産が見当たらない。
きょろきょろする俺に、ティアンが「そういえば」とドアの方に視線をやった。
「グリシャさんが何か持っていましたけど」
「それだ!」
買った後、グリシャに持ってもらっていたような気がする。受け取るのをすっかり忘れてしまっていた。
「もらってくるね」
グリシャも忘れていそうな気がして、俺は緩く笑う。しかしティアンは「だったら僕が」と申し出た。
「ルイス様はお休みになってください。もう遅いですから」
「でも」
「僕が受け取ってきますから大丈夫ですよ」
ティアンへのお土産なのに、ティアンを顎で使っているような感じになってしまう。それは申し訳ないと眉尻を下げる俺に、ティアンは「お気になさらず」と微笑む。
「うん。じゃあお願い。先に食べてもいいよ。でも俺とユリスの分も入ってるから」
俺の分は別にティアンにあげちゃってもいいけど、ユリスの分は残しておかないとあのお子様は間違いなく怒る。地味に食い意地が張っているのだ。
「先に食べたりしませんよ。明日、一緒に食べましょう」
「うん!」
嬉しい提案に全力で頷いておく。
なんだか明日が楽しみになってきた。
おやすみなさいと言って退出するティアンを見送ってから、俺は明日に備えて寝ることにした。
それを全部聞こえていないふりで乗り切るユリスは、面倒くさそうにポケットに手を突っ込んでいた。ユリスは、ブルース兄様のことをどうでもいいと考えている節がある。ついでにオーガス兄様のことも軽んじている。
「もういいか? 眠いんだが」
「おまえは本当に……」
ユリスのぶれない態度に、ブルース兄様が頭を抱えてしまった。ブルース兄様は毎度ユリスの扱いに苦労している。
エドウィンは今夜うちに泊まっていくと言った。彼のことはアロンたちに任せて、俺は綿毛ちゃんと共に部屋へ戻った。
『疲れたよぉ』
「綿毛ちゃん。俺に内緒で勝手にお出かけしないで」
『えぇー? どうしようかなぁ』
へらへら笑う悪い毛玉を揺さぶってから、ベッドに押し込めておく。綿毛ちゃんは俺のペットなのに。どうして誰にでついて行くのだろうか。そういうのはダメだと思う。
うるさい毛玉がいなくなったところで、俺はティアンを振り返る。
「……なんか邪魔してごめんね」
ティアンだってたまには息抜きしたいだろうに、完全に邪魔をしてしまった。今更ではあるが謝罪すると、ティアンから「いえ、邪魔だなんてそんな」と困ったような苦笑が返ってきた。
「でも無断で屋敷を抜け出すのはやめてください。僕だって心配しますよ」
「うん。それはごめん」
思った以上の騒ぎになってしまった。俺の計画では、グリシャ以外にはバレずに済ませるつもりだったのに。なんか結局みんなにバレてしまった。
そういえば、グリシャにも迷惑をかけてしまったな。あとエドウィンにも。
「あ。そういえばティアンにお土産買ったよ。エドウィンにお金返さないといけない」
街のお菓子屋さんで買ったのだ。俺が持参した金塊では買い物できなかったから、代わりにエドウィンが出してくれたのだ。
「ありがとうございます。隊長殿には後で僕が返しておきますよ」
「それじゃ、お土産にならないでしょ!」
なんでティアンへのお土産代をティアンに支払ってもらう必要があるのか。それは意味不明だろ。単なる押し売りじゃないか。急いで戸棚を開けた俺は、一番奥へと手を伸ばす。ちまちま貯めていたお小遣いを引っ張り出して、必要額を確保した。
「エドウィンに返してくるね」
「もう遅いですから。明日でもいいのでは?」
「そう?」
ティアンの言う通り、エドウィンは疲れた顔をしていた。もう早々に寝ているかもしれない。そうすると邪魔をするのは悪い。
「うん。じゃあ明日にするね」
「はい」
ティアンが微笑んだのを見た俺は、「あれ?」と首を傾げる。
「お土産は? どこ?」
肝心のお土産が見当たらない。
きょろきょろする俺に、ティアンが「そういえば」とドアの方に視線をやった。
「グリシャさんが何か持っていましたけど」
「それだ!」
買った後、グリシャに持ってもらっていたような気がする。受け取るのをすっかり忘れてしまっていた。
「もらってくるね」
グリシャも忘れていそうな気がして、俺は緩く笑う。しかしティアンは「だったら僕が」と申し出た。
「ルイス様はお休みになってください。もう遅いですから」
「でも」
「僕が受け取ってきますから大丈夫ですよ」
ティアンへのお土産なのに、ティアンを顎で使っているような感じになってしまう。それは申し訳ないと眉尻を下げる俺に、ティアンは「お気になさらず」と微笑む。
「うん。じゃあお願い。先に食べてもいいよ。でも俺とユリスの分も入ってるから」
俺の分は別にティアンにあげちゃってもいいけど、ユリスの分は残しておかないとあのお子様は間違いなく怒る。地味に食い意地が張っているのだ。
「先に食べたりしませんよ。明日、一緒に食べましょう」
「うん!」
嬉しい提案に全力で頷いておく。
なんだか明日が楽しみになってきた。
おやすみなさいと言って退出するティアンを見送ってから、俺は明日に備えて寝ることにした。
あなたにおすすめの小説
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
【完結】第三王子、ただいま輸送中。理由は多分、大臣です
ナポ
BL
ラクス王子、目覚めたら馬車の中。
理由は不明、手紙一通とパン一個。
どうやら「王宮の空気を乱したため、左遷」だそうです。
そんな理由でいいのか!?
でもなぜか辺境での暮らしが思いのほか快適!
自由だし、食事は美味しいし、うるさい兄たちもいない!
……と思いきや、襲撃事件に巻き込まれたり、何かの教祖にされたり、ドタバタと騒がしい!!
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
契約結婚だけど大好きです!
泉あけの
BL
子爵令息のイヴ・ランヌは伯爵ベルナール・オルレイアンに恋をしている。
そんな中、子爵である父からオルレイアン伯爵から求婚書が届いていると言われた。
片思いをしていたイヴは憧れのベルナール様が求婚をしてくれたと大喜び。
しかしこの結婚は両家の利害が一致した契約結婚だった。
イヴは恋心が暴走してベルナール様に迷惑がかからないようにと距離を取ることに決めた。
......
「俺と一緒に散歩に行かないか、綺麗な花が庭園に咲いているんだ」
彼はそう言って僕に手を差し伸べてくれた。
「すみません。僕はこれから用事があるので」
本当はベルナール様の手を取ってしまいたい。でも我慢しなくちゃ。この想いに蓋をしなくては。
この結婚は契約だ。僕がどんなに彼を好きでも僕達が通じ合うことはないのだから。
※小説家になろうにも掲載しております
※直接的な表現ではありませんが、「初夜」という単語がたびたび登場します
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された
楽矢
BL
【完結/番外編準備中】
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。
何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。
記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。
----------
※注)
かっこいい攻はいません。
タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意!
貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。
ハッピーエンドです。
激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします!
全16話 完結済み
他サイトにも同作品を投稿しています。
様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。
初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!
----------
追記:読んでくださった皆さま、本当にどうもありがとうございました!!
完結しましたが回収しきれていないエピソードが私の中でいくつかあるので笑、後日番外編をアップしたいなと現在準備中です。
詳しい更新日まだ未定ですが、もしよろしかったらゼヒまた覗いてやってくださいねー!