嫌われ令息に成り代わった俺、なぜか過保護に愛でられています

岩永みやび

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17歳

684 実は仲良し?

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「ティアンの友達どこ」
「そんなのいません」
「いや、いるって言ったじゃん」

 馬車での旅も三日目に突入した。
 本日カミールの屋敷近くまで到着する予定。今夜泊まる宿はカミールの屋敷近くにあるという。彼の誕生日パーティーも明日。夕方からの開催なので、余裕を持って到着できそうだ。

 今日も頑張るぞと気合を入れて外に向かう。とはいえ俺は馬車で座っているだけなんだけどね。

 朝の清々しい空気の下、騎士たちが出発準備に勤しんでいる。慌ただしく駆けまわる騎士たちの姿をなんとなく目で追いかけて、俺は隣にいたティアンの袖を引いた。

 第二部隊にはティアンの学園時代の同級生も所属していると聞いた。紹介してと頼んでみるが、ティアンは「そんなのいません」と素っ気ない。どうしてそうわかりやすい嘘を吐くんだろうか。

 白い騎士服に身を包んだ騎士たちの中から、ティアンと歳が近そうな人を探してみる。しかし同じ騎士服に身を包んで、忙しそうに動きまわる彼らの外見だけでパッと判別するのは難しい。あちこち視線を彷徨わせていると、ティアンがタイラーに呼ばれた。

「ちょっと行ってきます。ルイス様は馬車にどうぞ」

 馬車で待っておくように言われて適当に頷いておく。タイラーのところへ小走りに向かうティアンを見送って、俺は近くにいたエドウィンへと声をかけた。

「エドウィン!」
「ルイス様。おはようございます。お疲れではありませんか?」

 こちらを気遣うように問いかけてくるエドウィンに、「大丈夫!」と元気に返しておく。途端にエドウィンが優しい笑みを浮かべた。エドウィンは優しいお兄さんって感じで親しみやすい。

「ちょっと訊きたいことがあるんだけど」
「はい。なんなりと」

 嫌な顔ひとつしないエドウィンは、背筋を伸ばしてにこやかに耳を傾けてくれる。

「第二部隊にティアンの同級生がいるって。誰かわかる?」
「ティアンの?」

 少し考え込むように眉を寄せたエドウィンは、ちらりと周囲に目をやった。

「ティアンに直接訊けばよろしいのでは?」

 エドウィンのもっともな提案に、それはそうなんだけどと肩をすくめる。

「ティアンが教えてくれないの」
「……なるほど」

 怪訝な顔で、しかし一応頷いたエドウィンは顎に手をやって考え込む。やや間を置いて、エドウィンが誰かを探すように視線を彷徨わせた。

「それでしたら、おそらくホレイシオがティアンと近い年齢だと思いますけど」
「ホレイシオ?」
「はい。ええと、どこに行ったんですかね?」

 背伸びしてきょろきょろするエドウィンは、やがてお目当ての人物を発見したらしく右手を挙げた。

「ホレイシオ! ちょっと!」

 声を張り上げるエドウィンに、周囲の視線がこちらに集まる。それと同時に「はい!」という元気のいい返事が聞こえてくる。

「お呼びですか? 隊長」
「あぁ」

 やって来たのは、ティアンと同じような年頃の青年だった。茶髪に茶色っぽい瞳という少し地味な容姿の彼は、なんだか落ち着く雰囲気を漂わせている。ティアンよりも背が低いかもしれない。俺よりは高いけどね。

 人懐こい笑顔の彼は、俺を認識するなり「おはようございます! ルイス様!」と元気に挨拶してくれた。それに「おはよう」と返していれば、背後からグッと肩を掴まれた。びっくりして振り返れば、苦い顔したティアンがホレイシオと呼ばれた茶髪の青年を睨みつけていた。

「……」

 妙な緊張感が走る。
 ティアンとエドウィンを忙しなく見比べていれば、咳払いをしたエドウィンが青年を示した。

「こちらがホレイシオです。おそらくティアンの同期だと思いますが」

 控えめな紹介に、ホレイシオが「はい! 同期ですね!」と軽快に応えてくれた。ただひとりティアンだけが苦い顔だ。

「ティアンの友達?」

 わくわくとホレイシオに問えば、すごくいい笑顔で「はい!」と肯定してくれる。だが当のティアンが冷たい目で「違います」と否定してしまった。

「単なる同期です。同じ時期に同じ場所で学んでいたというだけの赤の他人です」
「ひっでぇ」

 思わずといった感じでホレイシオがこぼした声に笑ってしまう。そんなこと言うなよとの意味を込めてティアンの袖をくいくい引けば、ホレイシオが「ティアンは変わらないね」と目を細める。

「相変わらずの態度で安心したよ」

 相変わらず? やっぱりティアンって学園で偉そうにしてたんだな?

 ティアンが学園で無駄に敵を作っていそうで心配。「友達は大事にしないとダメだよ」と囁けば、「これは友達ではありません」と酷い言葉が返ってくる。

 クソ失礼なティアンの態度にも腹を立てないホレイシオはいい人。すごくいい人。

「これからもティアンと仲良くしてあげてね。態度は悪いけど、いい人だから」
「はい! お任せください」

 はきはき応じてくれるホレイシオは誰とでも仲良くなれるタイプだと思う。「俺とも仲良くしてね」と言い添えれば、ホレイシオが目を見開いた。

「え!? 俺がルイス様とですか!? よろしいのですか!?」
「ダメに決まってるでしょ!」

 なぜか眉を吊り上げるティアンが、俺とホレイシオを引き離すように間に割って入ってきた。

 なんでダメなんだ。俺だってティアンの友達と仲良くしたいのに。文句を言ってやろうとティアンを見上げるが、逆に咎めるような視線をもらってしまい機会を逃してしまう。

「いいですか、ルイス様。こんな得体の知れない奴と仲良くする必要はありません」
「ひっでぇ。俺のどこが得体の知れないって言うんだよ」

 あんまりな言い草にも拘わらず、ホレイシオは怒ることなく軽口で流してしまう。これ、実は仲良しな感じ? ぽんぽん冗談言い合える仲ってこと?

 なんにせよティアンに友達らしき人がいてよかった。
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