嫌われ令息に成り代わった俺、なぜか過保護に愛でられています

岩永みやび

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17歳

688 用意した

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 ぱっと目が覚めて、自分が熟睡していたことを知った。ティアンに対して勢いよく「眠れなかったらティアンのせいだからな!」と言った割にはあっさり眠れてしまったようだ。まぁいいや。

「おはよう、ティアン」
「はい。おはようございます」

 寝室を出ると既に身支度を整えたティアンとジャンがいた。今日はいよいよパーティーだ。久しぶりにカミールに会える。テオドールも参加するのだろうか。

 パーティーは夕方からなので、それまでは宿でゆっくりする予定。ここからカミールの屋敷は馬車で三十分くらいの距離にあるらしい。なので比較的ゆっくり出発できる。

 本当は宿の外を観光でもしてみたいのだが、エドウィンたちに迷惑はかけられない。俺が出かけるとなれば、護衛とか面倒なことになるからな。

 しかし暇なのでユリスの部屋にお邪魔する。朝食はユリスと一緒に食べようと思う。

 ユリスの部屋は俺に割り当てられた部屋と同じ造りであった。俺はティアンと同室だが、ユリスはタイラーと同室だ。

 テーブルの上に放置してあった本をなんとなく眺めて、席につく。眠そうなユリスに、タイラーが「夜更かしなんてするからですよ」と小言をもらしている。ユリスはずっと寝ていると思っていたのだが、どうやら宿では夜更かししていたらしい。どうせ本でも読んでいたのだろう。それで日中馬車の中でほとんど寝ていたのだろう。ちょっぴり呆れていれば、ユリスが「なんだ」とこちらを睨んできた。

「夜更かしはダメだよ」
「うるさい」

 うるさいってなんだ。
 運ばれてきた朝食を口にしながら、ユリスと他愛もない話をする。

「ユリス。パーティーで変なことしないでね」
「変なこととは? というか。それは僕のセリフだ」
「なんでだよ」

 俺はカミールの友達だけど、ユリスはカミールに会ったことがない。あまり社交的とも言えないユリスが、知らない人の誕生日パーティーでどう振る舞うのか想像ができない。嫌味な態度で変な空気にしないことを願うばかりである。

「あ、でも。デニスがいるんだっけ?」

 だったらパーティー中はずっとデニスと一緒にいるのだろう。というかデニスが一方的にユリスをつけまわすんだと思う。いいな、ユリスは。一緒にいる友達が確保できて。

「俺は誰と一緒にいればいいんだろう」

 前にエリック主催のパーティーに参加したときは、ティアンと一緒だった。だが今回そのティアンは不参加である。フランシスは友達がたくさんいるから俺と一緒にいてくれないと思う。カミールは主役だから忙しいだろうし。テオドールはよくわからない。改めて考えると俺って友達少ないな。

 ぼんやりと考えていれば、ユリスが小首を傾げた。

「ルイスも僕と一緒にいればいいだろ」
「デニスが嫌って言うよ」

 俺の顔を見るたび「お子様はあっちに行って!」とうるさいのだ。そんなに歳は変わらないんだけどな。

 しかしユリスは「そんなことない」と断言する。

「確かに普段だったらそう言うだろうが。今回のような公の場ではむしろルイスに話しかけてくるのでは?」
「あー、なるほど」

 心当たりはある。それこそエリック主催のパーティーでの話だ。なぜかデニスは俺を探して声をかけてきた。

 きっとデニスは大公家の双子と仲良しアピールがしたいのだろうとティアンが言っていたことを思い出す。アピールというかなんというか。まぁ小さい頃から頻繁に遊んでいたのは事実だしな。

「デニーはそういう打算的なことをするから」
「ふうん?」

 やれやれと肩をすくめるユリスであるが、そこに咎めるような響きはない。ユリスは昔から口ではデニスの悪口を言いつつも、その手を振り払うことは絶対にしない。

「ユリスってデニスと付き合ってるの?」
「なんでそうなる」

 半眼になるユリスは「なんで僕があんなうるさい奴と」と吐き捨てる。

「でもいつも一緒じゃん」
「あれの顔が可愛いから」
「それはちょっとわかる。顔は可愛いよね」

 デニスは今年で十八歳だ。もうお子様というよりお兄さんって感じの年齢である。でも相変わらず可愛い顔なのだ。

「まぁ俺の方が美少年だけど」

 ふんと胸を張れば、ユリスがなんとも言えない目を向けてくる。黙っていたタイラーが「ルイス様は相変わらずですね」と苦笑する。

「ルイスと僕は同じ顔だろう」
「じゃあユリスも美少年だね」
「……そうだな」

 遠い目で頷くユリスは、「ところで」と無理矢理に話題を変えてきた。

「カミールへのプレゼントは結局どうなったんだ?」
「時計だよ」
「時計?」
「うん。懐中時計」

 アロンの友達である情報屋ハドリーに聞いたところ、カミールはちょうど使用していた懐中時計が壊れてしまい新しいものを探しているところだという。

「どこで知ったんだ。そんな話」

 ハドリーの情報源は謎である。だがまったく間違いというわけでもないだろう。

「懐中時計なんて高いだろ」
「そうなの?」

 そういえば値段聞かなかったな。
 カミールにプレゼントしたいと言ったらブルース兄様が手配してくれた。屋敷に商人を呼んでくれたのだ。そのまま支払いもブルース兄様に任せてしまった。

「でもブルース兄様はなにも言わなかったよ」

 あんまり高かったら兄様だって文句言うだろう。

「ブルースはいつからそんな過保護になったんだ?」

 ユリスの呆れたような呟きに、ティアンとタイラーが苦笑した。
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