いたずらっ子な転生者はおっきいもふもふを捕まえたい!

岩永みやび

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18 興味ない

「構え方が違いますよ。ちょっと剣が大きいですね。もう少し小さいものを用意しましょうか。ちょっとお待ちください」
「お構いなく」

 オリビアは、真剣な顔で俺に剣術の指導をしてくる。興味のない俺は、嫌々彼女に付き合う。何度か逃げようとしたのだが、オリビアは変に鋭い。俺が駆け出す前に察知して、さりげなく妨害してくる。

「俺は忙しいのに」
「護身程度に身につけておいた方がよろしいかと」
「でも俺、剣は持ち歩かないから意味ないと思うよ?」
「そんなことは。とにかく、身を守る術は覚えておいて損にはなりません」

 無理矢理話をまとめるオリビア。やる気のない俺は、重い剣を両手で持って、切っ先を地面に突き刺すような形をとっている。オリビアは構えろというが、重くて持てない。あとやる気もない。

 やれやれと肩をすくめるオリビアは、俺の背後にまわって抱え込むように俺の両腕をとってくる。

「ほら。腕に力入れて。とりあえず剣を持ち上げてみてくださいよ」
「嫌だ。他のことしようよ。木登りしたい」
「危ないからダメです」
「剣も危ないだろ」
「私が見ているので大丈夫です」
「そんなの横暴だ」

 つまんない、退屈と駄々をこねていれば、オリビアは困ったように眉尻を下げてしまう。なんだその被害者面は。楽しく遊んでいたところを突然捕まえられて、興味もない剣術をさせられている俺の方が被害者だ。

 もう嫌だと剣を投げ出そうとするが、オリビアが離してくれない。

 あぁ! と大声で出しておくが、オリビアは怯まない。なんてしぶとい奴だ。いい加減しつこいぞ。

「頑張っていますね」

 オリビアの足を無言で踏んで抗議していた時である。そんな朗らかな声と共に割り込んできたのは、副団長であった。

 片手に小さめの木刀らしき物を手にしている。嫌な予感しかしない。

「いきなり剣は難しいだろ。ね? テオ様」

 オリビアに文句を言ってみせた副団長は、同意を求めるように俺の顔を覗き込んでくる。

「得物を途中で変える方が難しいと思いますけどね」

 こいつ。副団長相手だろうと遠慮しないな。
 そのままバチバチと睨み合いを始めてしまう騎士ふたり。

「副団長。お名前は?」
「え? 俺ですか? デリックですよ」

 知らなかったんですか? と苦笑する副団長。騎士の名前とか興味なかった。正直に言えば、デリックは苦い顔になる。仕方なくない? 他の騎士ならともかく。みんな副団長のことは副団長としか呼ばないもん。

「デリックは、兄上にも剣術教えた?」
「いえ。フレッド様の師匠は別の人ですよ」
「ふーん?」

 なんでも兄上が小さい頃に剣術を教えていた師匠さんがいるらしい。だが、歳のためにすでに騎士団はやめたのだとか。

「兄上は剣術できる?」
「えぇ。テオ様も頑張りましょうね」
「俺は大丈夫」

 ここに居てはダメだ。どうやらデリックも俺に剣を教えたいらしい。なんて奴らだ。しばらくは騎士棟付近には近寄らないでおこう。

 パッと剣から手を離せば、油断していたオリビアが慌てて受け止める。その隙に、彼女の腕から抜け出して走った。とにかく走った。背後からオリビアの怒ったような声が聞こえてくるが、無視である。あいつは基本的にいつも怒っているから。気にするだけ無駄だろう。デリックは、追いかけてくる気配はない。

 剣の片付けやらでその場を離れるわけにはいかないらしいオリビアは、結局俺のことを追ってはこなかった。





『何してんの』
「猫。いたのか」

 よいしょっと、頑張って枝に手を伸ばす。足を引っ掛ける場所を探して、何度も下を確認する。

『危ないからやめなよ』

 地面に座って、こちらを見上げてくるユナは、『オリビアに怒られるよ』と嫌なことを言い出す。

 今、ユナの相手をしている暇はない。

『で? 何してるのさ。追いかけっこはどうなったの。全然追いかけにこないからびっくりなんだけど』
「見てわかるだろ。木登り」

 オリビアと副団長デリックを撒いてひとりになった俺は、庭で大きな木を見つけて木登りしていた。そういえば、追いかけっこなんてやっていたな。忘れてた。頑張って上に登る俺を、ユナが心配そうに見守っている。

 そうして時間をかけて、ようやくいい感じの枝まで登ることができた。すごく大きな木だ。枝も太いため、俺が座ってもびくともしない。

 そうして眺めの良い上から随分と下にいるユナを見下ろす。足をぷらぷらさせながら、景色を見渡す。非常に清々しい気分だ。

「猫も登ってこい」
『嫌だよ。危ないからそろそろ降りておいで』
「うるさい猫だな」
『なんだと』

 風が吹いて、心地よい。遠くから、訓練中の騎士たちの声が響いてくる。青空の下、非日常的な空気に俺は大変満足である。

 高い木と言っても、そんなに高くはない。俺が腰掛けている枝は、オリビアがちょっと手を伸ばせば触れられるくらいの高さだろう。だが、七歳児の俺にとってはすげぇ高い。

「猫もこいって」
『嫌だって言ってるでしょ。何度言わせるの』
「弱虫猫め」
『なんだって!?』

 本当に、うるさい猫である。
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