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81 手伝って
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「動けぇ! ぐうたらポメラニアンめ!」
『……』
すやすや寝息を立てるポメちゃんのリードを力任せに引っ張ってやる。床に両足を踏ん張って、ほぼ全体重をかけてやるがポメちゃんは一向に動かない。平気な顔でお昼続行中である。
そんな俺たちのことを、部屋に戻ってきたオリビアがなんとも言えない目で観察している。突っ立っていないで少しは手伝ったらどうなんだ。俺より力あるだろう。
「オリビア。手伝って!」
踏ん張りながらオリビアを振り返ると、呆れたと額を押さえる彼女の姿。なんだか小言が始まりそうな雰囲気である。
「テオ様。無理強いはいけませんよ」
お姉さんぶって叱りつけてくるオリビア。俺が悪いの? 俺と遊んでくれないポメちゃんが全面的に悪いと思う。
「コンちゃん! コンちゃん来てぇ!」
困った末に大声を出せば、俺の使い魔でもあるコンちゃんがのんびり部屋にやってくる。「あの教師とやらは帰ったのか?」ときょろきょろしている。
コンちゃんは人間姿での生活が気に入ったらしく、もふもふキツネ姿をあまり見せてくれなくなった。俺はコンちゃんがおっきいもふもふだから使い魔にしたのに。現実は冷たい目をしたお兄さんという受け入れ難いこの状況。ちょっぴりコンちゃんと契約したことを後悔している。もっと頻繁にキツネ姿になってくれてもいいんだぞ?
「なにをしている」
低い声を出すコンちゃんは、確実に俺のことを軽蔑していた。なんかそんな目をしていた。
「ポメちゃんを庭に出すの。手伝って」
「普通に命じればいいだろう。おまえは自分の使い魔も満足に従えられないのか? そんな体たらくでよく魔獣と契約しようと思えたな」
……コンちゃん、おまえ。自分だって俺の言うこときかないくせに。よくそんなこと言えたな。
刺々しい言葉を投げてくるコンちゃん。別に使い魔にしたくてしたわけではない。ちょっと触ったら勝手に契約されてしまったのだ。とはいえポメちゃんはペットにしたいと思っていたけど。
ぐいぐい引っ張る俺に、コンちゃんは「ペットの散歩じゃないんだぞ」と舌打ちする。しかし呆れたようにため息を吐くと、オリビアのことを押し退けて俺の隣にやってきた。
「ここに魔力を込めて命じればいい」
偉そうに言ったコンちゃんは、なにやらポメちゃんの首あたりを示す。ちょうど首輪がはめてあるところだ。
「ほら、はやくしろ」
まさか魔法の使い方教えてくれてる?
え、マシュー先生より優しい。先生はぐちぐち言って実際に使うのはまだ早いと一歩も引かないのだ。
オリビアも、コンちゃんが魔法の使い方を教えてくれるというまさかの事態に困惑している。「え、ちょっと。テオ様、やめましょう?」と弱気発言をしている。
コンちゃんは人間を見下している割には、ちょいちょい優しい。なんだろう。ツンデレってやつかな。違うかも。
とにかくコンちゃんの気が変わらないうちにと、リードを手放してポメちゃんに近寄る。『余計なこと教えないでよ』と恨めしい声を出すポメちゃんは、欠伸をしながら『面倒だなぁ』と繰り返す。
『それテオくんに教えたら君もいいように使われるよ』
珍しく会話をするポメちゃんは、コンちゃんのことを止めようとしている。しかしポメちゃんの言葉もその通りである。
コンちゃんだって俺の使い魔である。そんな方法教えたらコンちゃんにとって不利になるだろう。
しかしコンちゃんは勝ち誇った笑みを浮かべている。
「私がそう易々と急所を触らせるわけがないだろう」
「……」
え?
ぽかんとする俺をよそに、コンちゃんは得意顔で仁王立ちしている。
コンちゃんの話によれば、首元に魔力を込める必要があるらしい。魔力を込めるには、そこに触るのが一番手っ取り早い。
俺よりも背の高いコンちゃんを見上げる。試しに手を伸ばしてみるが、コンちゃんの首に微妙に手が届かない。ひとりで苦戦していれば、コンちゃんが鼻で笑ってきた。
「卑怯だぞ!」
思わず声を荒げれば、コンちゃんがうっすらと笑みを浮かべた。意地の悪い笑い方である。性格の悪さが滲み出ている。
「私はなにもしていないが?」
「俺だってこれから身長伸びるもん!」
「伸びたとて。私がそう簡単に隙を見せると思ったら大間違いだぞ」
「許せない!」
オリビアに飛びつけば、苦笑しながら抱っこしてくれた。
『……』
すやすや寝息を立てるポメちゃんのリードを力任せに引っ張ってやる。床に両足を踏ん張って、ほぼ全体重をかけてやるがポメちゃんは一向に動かない。平気な顔でお昼続行中である。
そんな俺たちのことを、部屋に戻ってきたオリビアがなんとも言えない目で観察している。突っ立っていないで少しは手伝ったらどうなんだ。俺より力あるだろう。
「オリビア。手伝って!」
踏ん張りながらオリビアを振り返ると、呆れたと額を押さえる彼女の姿。なんだか小言が始まりそうな雰囲気である。
「テオ様。無理強いはいけませんよ」
お姉さんぶって叱りつけてくるオリビア。俺が悪いの? 俺と遊んでくれないポメちゃんが全面的に悪いと思う。
「コンちゃん! コンちゃん来てぇ!」
困った末に大声を出せば、俺の使い魔でもあるコンちゃんがのんびり部屋にやってくる。「あの教師とやらは帰ったのか?」ときょろきょろしている。
コンちゃんは人間姿での生活が気に入ったらしく、もふもふキツネ姿をあまり見せてくれなくなった。俺はコンちゃんがおっきいもふもふだから使い魔にしたのに。現実は冷たい目をしたお兄さんという受け入れ難いこの状況。ちょっぴりコンちゃんと契約したことを後悔している。もっと頻繁にキツネ姿になってくれてもいいんだぞ?
「なにをしている」
低い声を出すコンちゃんは、確実に俺のことを軽蔑していた。なんかそんな目をしていた。
「ポメちゃんを庭に出すの。手伝って」
「普通に命じればいいだろう。おまえは自分の使い魔も満足に従えられないのか? そんな体たらくでよく魔獣と契約しようと思えたな」
……コンちゃん、おまえ。自分だって俺の言うこときかないくせに。よくそんなこと言えたな。
刺々しい言葉を投げてくるコンちゃん。別に使い魔にしたくてしたわけではない。ちょっと触ったら勝手に契約されてしまったのだ。とはいえポメちゃんはペットにしたいと思っていたけど。
ぐいぐい引っ張る俺に、コンちゃんは「ペットの散歩じゃないんだぞ」と舌打ちする。しかし呆れたようにため息を吐くと、オリビアのことを押し退けて俺の隣にやってきた。
「ここに魔力を込めて命じればいい」
偉そうに言ったコンちゃんは、なにやらポメちゃんの首あたりを示す。ちょうど首輪がはめてあるところだ。
「ほら、はやくしろ」
まさか魔法の使い方教えてくれてる?
え、マシュー先生より優しい。先生はぐちぐち言って実際に使うのはまだ早いと一歩も引かないのだ。
オリビアも、コンちゃんが魔法の使い方を教えてくれるというまさかの事態に困惑している。「え、ちょっと。テオ様、やめましょう?」と弱気発言をしている。
コンちゃんは人間を見下している割には、ちょいちょい優しい。なんだろう。ツンデレってやつかな。違うかも。
とにかくコンちゃんの気が変わらないうちにと、リードを手放してポメちゃんに近寄る。『余計なこと教えないでよ』と恨めしい声を出すポメちゃんは、欠伸をしながら『面倒だなぁ』と繰り返す。
『それテオくんに教えたら君もいいように使われるよ』
珍しく会話をするポメちゃんは、コンちゃんのことを止めようとしている。しかしポメちゃんの言葉もその通りである。
コンちゃんだって俺の使い魔である。そんな方法教えたらコンちゃんにとって不利になるだろう。
しかしコンちゃんは勝ち誇った笑みを浮かべている。
「私がそう易々と急所を触らせるわけがないだろう」
「……」
え?
ぽかんとする俺をよそに、コンちゃんは得意顔で仁王立ちしている。
コンちゃんの話によれば、首元に魔力を込める必要があるらしい。魔力を込めるには、そこに触るのが一番手っ取り早い。
俺よりも背の高いコンちゃんを見上げる。試しに手を伸ばしてみるが、コンちゃんの首に微妙に手が届かない。ひとりで苦戦していれば、コンちゃんが鼻で笑ってきた。
「卑怯だぞ!」
思わず声を荒げれば、コンちゃんがうっすらと笑みを浮かべた。意地の悪い笑い方である。性格の悪さが滲み出ている。
「私はなにもしていないが?」
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「伸びたとて。私がそう簡単に隙を見せると思ったら大間違いだぞ」
「許せない!」
オリビアに飛びつけば、苦笑しながら抱っこしてくれた。
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