染まらない花

煙々茸

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家族3

3-8

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 俺はキッチンに立つ李煌さんのところへ皿を運んだ。
「李煌さん、片付けくらい手伝うよ」
「え、ううん大丈夫。今日は唐木くんもいるんだし、ちゃんと相手してあげないとダメだよ」
 そう言われてしまったら、強く出る事はできない。
 あれから李煌さんのことを考えて、〝兄さん〟と呼んだことがあったのだが、今まで通りで大丈夫だからと笑って言われ、その言葉に甘えている。
 急に変えたら悠くんが不思議がるでしょう? と冗談めかしても言っていたが、本意は別にあるのだと俺は思っている。
 どうして呼び名を許してくれたのか、訊こうか迷っていた時だ――。
 不意に、背後から手が伸びて来た。
「手伝いなら俺がやる」
 そう言って俺と李煌さんの間に立ったのは兄貴だった。
「魁くん。仕事はどうしたの?」
「まだ納期は先だから平気だ。それより、これだけの量を一人でやるのはキツイだろ。最初、何もしていなかったから片付けくらいやらせてくれ」
 あまりの珍しい光景に呆気に取られてしまう。
 李煌さんも兄貴の申し出には頷いていたし、問題はないのだが……。
(何を考えてるんだ? 俺を敵対視してるのは知ってるけど……それと関係しているのかさっぱり分からん。別に、あれから李煌さんとは普通でいられているはずだし……)
 俺は黙ってふたりから離れ、そっと二階へ上がった。
「はぁ……なんか、どっと疲れた」
「相見、お疲れさま~」
 俺の呟きが聞こえたのか、部屋で待っていた唐木が苦笑を零した。
「ああ。慣れない場は精神的に来るな」
「でも、嬉しかったでしょ?」
「……まあ、な」
 毎年のこととはいえ、苦手なものはなかなか克服できない。
(ま、唐木と違って俺はそういう性分だからな)
 と、諦めておく。
 指定の場所に腰を下ろし、ベッドに背を預ける。
 そこへ思い出したように唐木が口を開いた。
「そういえば、合同記録会のこと、話したの?」
「誰に話すんだ?」
「え……お兄さんたちに。記録会は家族も招待していいことになってるじゃない」
「招待するかは自由だろ。大会じゃないんだし、わざわざ来てもらうほどじゃ……」
「あー、そういえば、去年も相見のとこは来てなかったっけ。話しすらしないの?」
「しないな」
(変に気を遣わせるのは避けたいし、大きな大会でもないのに来てほしいなんて……――あれ、俺は来てほしいと思っているのか? いや、まさか……)
 自分の思考にふるふると首を振る。
「ふぅん。相見の場合、その結果すら話さないんだろうね」
「そんなこと話したら、どうして教えてくれなかったんだって問い詰められるのが落ちだからな」
「あはは。まぁね。……でもさ、もうそういう遠慮とか、無しにしてもいいんじゃない?」
 急に静かなトーンで話す唐木に、俺は瞼を僅かに落とした。
(気持ちでは分かってるんだよ、そんなことは……――でも、)
 あの人への気持ちが、邪魔をする。
 期待したところで、それは虚しく散るかもしれない。
 本当に、ヘタレだと思う。
 自分のことになると臆病虫が大量発生するらしい。
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