染まらない花

煙々茸

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家族3

3-11

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「うん。貰った」
「……そ、れで……」
 続きを紡ぐのが気まずいのか、下唇を噛む李煌さん。
 その表情だけでも、愛おしくて堪らなくなる。
「……気になる?」
 この訊き方は少し意地悪だったかと思い、李煌さんの気持ちを汲み取って説明した。
「その子には呼び出されたから会った。でも、ちゃんと気持ちは伝えた。付き合えないって」
「……ん。そうだよね。そうじゃないと、俺に告白なんてするはずないもんね」
 ちゃんと確認できたことで、安堵の色が窺えた。
 ずっと気にしてくれていたことに、今すぐこの人を抱きしめたくなった。
(いや、ちゃんと李煌さんの返事を聞くまで我慢しねぇと……!)
 俺は前に出そうになる体をグッと押し止めた。
「他に聞きたい事ある?」
「……ううん、今は大丈夫。大河くんの気持ちは分かったし、ちょっと、混乱してるけど……」
「返事、貰える……?」
「あ……ダメ!」
「え……?」
「あ、……そうじゃなくて、返事はちゃんとする。でも、少しだけ時間貰えると嬉しい……かな」
「それはもちろん、いいけど……」
(李煌さんも俺のこと好きってことでいいのか? 流れ的にそういう気持ちはあるってことになるとは思うけど……)
 言い淀んだ俺に、李煌さんが慌てて口を開いた。
「俺もっ……大河くんのこと、好き、なんだと思う。でも、兄弟だし……男だし……、この気持ちは伝えちゃ駄目だって思ってきたから、急には、まだ……勇気持てなくて」
 名前呼びを拒んだのは、きっと自分の気持ちにストッパーを掛ける為だったんだろう。
(昔からとはいえ、そりゃ名前で呼ばれてたら意識するよな)
 俺自身、心当たりがあり過ぎて自嘲が零れそうになる。
「いつから」
「え?」
「いつから、俺の事好きだった?」
 俺の質問に、李煌さんは恥ずかしそうに視線を落とした。
「……大河くんが、高校に上がった頃から、意識し出したかな。それまでも、好きだったのかもしれないけど、意識するほどじゃなかったから。でも、声とか体つきとか、急に大人っぽくなって……気付いたら目で追ってた」
(ヤバイ……今度こそニヤケそうだ。もういっそ押し倒したいんだが……)
 自分の口を押さえて何とか自制する。
「えっと、ありがとう。凄く嬉しい」
 もごもごと告げると、落としていた視線を俺に向けて来た。
「それは俺も同じだよ。気持ち、凄く嬉しい。ビックリした」
「だよな……」
「うん。それに、」
「ん?」
「大河くん、昔から水泳やってるから、…その……肩幅とか、筋肉のつき方とか、いつも凄いなって思ってて……っ」
(……うん?)
「ほら、俺ってなかなか筋肉つかない体質じゃない? だから憧れてたって言うか……」
(………んんん?)
「いつか触ってみたいなって思ってたり……、あ! 嫌ならいいのっ、うん。無い物ねだり? みたいな感じだから!」
(……えーっと。どういう流れだ? コレ…)
 頬を紅葉させて語る李煌さんに、眉を顰めて脳みそをフル回転させた。
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