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脱却2
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「どうかした?」
「いや、何でもないよ。――そういえば、李煌さんのおみくじはどんなことが書いてあったんだ?」
「え……っ」
何となく思い出して尋ねてみたのだが、思いの外動揺する李煌さんに何だか申し訳なくなった。
(言いたくないってことは、よほど嫌なことが書いてあったのかな。それだと余計気になるんだけど……)
「ごめん。無理ならいいんだ。でも、話してくれれば俺の意見とか言えるし、李煌さんの気持ちを軽くしてあげられるかもしれないから」
暫し沈黙する李煌さん。
そして、ゆっくり口を開いた。
「あのね……」
「うん」
「大切な物を失くすでしょうって書いてあったの」
「大切な物? 失くすって……」
「俺にとっては家族が大事で、もし、一番身近なモノだったとしたら……」
チラリと李煌さんが俺に目配せした。
(――ああ。俺の事を気にして、言えなかったのか)
愛おし過ぎて今すぐ抱きしめたい衝動に駆られたがグッと耐える。
(李煌さんは真剣に悩んでるわけだし、ここは安心させてやらないとな)
そもそも、おみくじでそこまで思い悩むなんて俺には持ち合わせない感情だ。
ある意味凄いと思う。
だから、手離すなんて考えられないんだ。
「李煌さん、コレ」
立ち止まり、コートのポケットに押し込んでいた俺自身のおみくじを李煌さんに差し出す。
少し皺くちゃだが、読めれば問題ないだろう。
「コレに書いてある事、覚えてる?」
俺の手からおみくじを受け取った李煌さんが少し考えた後ハッと顔を上げた。
「確か、失くした物が見つかるって……!」
「そう。だからコレは李煌さんが持ってて」
「え? でも……」
「きっと、これを持っていれば打ち消してくれる。でもね、李煌さんに信じてもらいたいのはおみくじじゃなくて、俺なんだけどな」
「――っ……」
「俺を信じて、李煌さん。俺はずっと李煌さんの傍にいるから」
(どんなことがあっても、絶対――放さないから)
薄らと涙の滲む李煌さんの目元を指の背で撫でる。
そして、俺を映す綺麗な瞳が揺れて、優しく細められた。
「ありがとう。大河くん」
「ん。……行こうか」
俺はおみくじを握る李煌さんの細い手をそっと掌に包み込んだ。
「いや、何でもないよ。――そういえば、李煌さんのおみくじはどんなことが書いてあったんだ?」
「え……っ」
何となく思い出して尋ねてみたのだが、思いの外動揺する李煌さんに何だか申し訳なくなった。
(言いたくないってことは、よほど嫌なことが書いてあったのかな。それだと余計気になるんだけど……)
「ごめん。無理ならいいんだ。でも、話してくれれば俺の意見とか言えるし、李煌さんの気持ちを軽くしてあげられるかもしれないから」
暫し沈黙する李煌さん。
そして、ゆっくり口を開いた。
「あのね……」
「うん」
「大切な物を失くすでしょうって書いてあったの」
「大切な物? 失くすって……」
「俺にとっては家族が大事で、もし、一番身近なモノだったとしたら……」
チラリと李煌さんが俺に目配せした。
(――ああ。俺の事を気にして、言えなかったのか)
愛おし過ぎて今すぐ抱きしめたい衝動に駆られたがグッと耐える。
(李煌さんは真剣に悩んでるわけだし、ここは安心させてやらないとな)
そもそも、おみくじでそこまで思い悩むなんて俺には持ち合わせない感情だ。
ある意味凄いと思う。
だから、手離すなんて考えられないんだ。
「李煌さん、コレ」
立ち止まり、コートのポケットに押し込んでいた俺自身のおみくじを李煌さんに差し出す。
少し皺くちゃだが、読めれば問題ないだろう。
「コレに書いてある事、覚えてる?」
俺の手からおみくじを受け取った李煌さんが少し考えた後ハッと顔を上げた。
「確か、失くした物が見つかるって……!」
「そう。だからコレは李煌さんが持ってて」
「え? でも……」
「きっと、これを持っていれば打ち消してくれる。でもね、李煌さんに信じてもらいたいのはおみくじじゃなくて、俺なんだけどな」
「――っ……」
「俺を信じて、李煌さん。俺はずっと李煌さんの傍にいるから」
(どんなことがあっても、絶対――放さないから)
薄らと涙の滲む李煌さんの目元を指の背で撫でる。
そして、俺を映す綺麗な瞳が揺れて、優しく細められた。
「ありがとう。大河くん」
「ん。……行こうか」
俺はおみくじを握る李煌さんの細い手をそっと掌に包み込んだ。
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