52 / 62
脱却3
3-1
しおりを挟む
冬休みが終わり、三学期が始まった。
唐木とは同じクラスだから、顔を合わせないわけにはいかない。
(違うクラスだったとしても、逃げるわけにはいかないからな……。部活も同じだし、チャンスはいくらでもあるか)
今日は朝練が休みで、重い足を教室へと向けた。
「あ、相見くんおはよー」
教室に入ると、逸早く俺に気付いたクラスメイトの女子が声をかけてきた。
「……おはよ」
「相見くんは初詣行った?」
俺の席にまでついて来た女子が、少し興奮気味に話す。
「相見くんってあんまりイメージないけど、見かけたって子がいてさぁ」
(見かけた? まあ、あの人出だし、知人に見られないって方がおかしいか)
現に唐木とバッタリ会ってしまったわけだし。
「見たって言うなら、そうなのかもな」
「へ? 本当に行ったんだあ!?」
そんなに驚くほど意外だろうか。
机に肘を立てて頬杖を突く。
(俺を見たなら、李煌さんのことも見ているはずだよな。変に突っ込まれなきゃいいけど……)
「なになに? 何の話してんのー?」
騒ぎを聞き付けてクラスの女子が数人集まって来た。
正直、煩い。
俺は気にしない振りをして窓の外へ視線を投げた。
そんな俺にはお構いなしに話は進む。
「初詣の話―。相見くんも行ったんだって」
「そうなの? バッタリ会えればラッキーだったのにー!」
「袴だったとか?」
(そんな面倒なもの着るわけないだろ)
と、心中で突っ込んでおく。
「ううん、見かけたって子に聞いたけど袴じゃなかったよ。――ね? 相見くん」
(俺に話を振るな)
とはいえ、俺の話をしているならそうもいかないんだろう。
「……ああ」
俺の返答に周りの女子があからさまに肩を落とした。
「そっかー、残念。袴だったら絶対写メ撮ってたよね」
「うんうん! 転送希望する!」
(それは盗撮だろ。新年早々犯罪に手を染める気か。女って怖いな)
素っ気ない突っ込みもそこそこに、俺は席を立った。
女子の視線に背中を刺されながらも、教室を出て廊下の窓際に凭れる。
寒いけど、無性に泳ぎたい気分だ。
一人でのんびりと、静かに……――。
「大河―? 何してるの? 廊下なんかで……」
(っ!?)
油断していたところに、あろうことか唐木に声をかけられて体がビクついてしまった。
「え、なに? ちょっと驚き過ぎじゃない?」
「ごめん。なんでもないんだ」
「そう? まあいいけど。おはようとあけおめー」
「……おはよ」
「中入らないの? ここ、寒いでしょ」
「あー……まぁ、入りたいのは山々なんだが……」
チラリと教室へ視線を向ける。
ここからじゃ見えないが、室内は落ち着いているようには感じた。
「え……。んー、大丈夫だよ。僕も一緒だからさ」
俺の様子に何かを察したのか、軽くウインクをこっちに投げて教室へ入って行く唐木。
唐木とは同じクラスだから、顔を合わせないわけにはいかない。
(違うクラスだったとしても、逃げるわけにはいかないからな……。部活も同じだし、チャンスはいくらでもあるか)
今日は朝練が休みで、重い足を教室へと向けた。
「あ、相見くんおはよー」
教室に入ると、逸早く俺に気付いたクラスメイトの女子が声をかけてきた。
「……おはよ」
「相見くんは初詣行った?」
俺の席にまでついて来た女子が、少し興奮気味に話す。
「相見くんってあんまりイメージないけど、見かけたって子がいてさぁ」
(見かけた? まあ、あの人出だし、知人に見られないって方がおかしいか)
現に唐木とバッタリ会ってしまったわけだし。
「見たって言うなら、そうなのかもな」
「へ? 本当に行ったんだあ!?」
そんなに驚くほど意外だろうか。
机に肘を立てて頬杖を突く。
(俺を見たなら、李煌さんのことも見ているはずだよな。変に突っ込まれなきゃいいけど……)
「なになに? 何の話してんのー?」
騒ぎを聞き付けてクラスの女子が数人集まって来た。
正直、煩い。
俺は気にしない振りをして窓の外へ視線を投げた。
そんな俺にはお構いなしに話は進む。
「初詣の話―。相見くんも行ったんだって」
「そうなの? バッタリ会えればラッキーだったのにー!」
「袴だったとか?」
(そんな面倒なもの着るわけないだろ)
と、心中で突っ込んでおく。
「ううん、見かけたって子に聞いたけど袴じゃなかったよ。――ね? 相見くん」
(俺に話を振るな)
とはいえ、俺の話をしているならそうもいかないんだろう。
「……ああ」
俺の返答に周りの女子があからさまに肩を落とした。
「そっかー、残念。袴だったら絶対写メ撮ってたよね」
「うんうん! 転送希望する!」
(それは盗撮だろ。新年早々犯罪に手を染める気か。女って怖いな)
素っ気ない突っ込みもそこそこに、俺は席を立った。
女子の視線に背中を刺されながらも、教室を出て廊下の窓際に凭れる。
寒いけど、無性に泳ぎたい気分だ。
一人でのんびりと、静かに……――。
「大河―? 何してるの? 廊下なんかで……」
(っ!?)
油断していたところに、あろうことか唐木に声をかけられて体がビクついてしまった。
「え、なに? ちょっと驚き過ぎじゃない?」
「ごめん。なんでもないんだ」
「そう? まあいいけど。おはようとあけおめー」
「……おはよ」
「中入らないの? ここ、寒いでしょ」
「あー……まぁ、入りたいのは山々なんだが……」
チラリと教室へ視線を向ける。
ここからじゃ見えないが、室内は落ち着いているようには感じた。
「え……。んー、大丈夫だよ。僕も一緒だからさ」
俺の様子に何かを察したのか、軽くウインクをこっちに投げて教室へ入って行く唐木。
0
あなたにおすすめの小説
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
【完結】弟を幸せにする唯一のルートを探すため、兄は何度も『やり直す』
バナナ男さん
BL
優秀な騎士の家系である伯爵家の【クレパス家】に生まれた<グレイ>は、容姿、実力、共に恵まれず、常に平均以上が取れない事から両親に冷たく扱われて育った。 そんなある日、父が気まぐれに手を出した娼婦が生んだ子供、腹違いの弟<ルーカス>が家にやってくる。 その生まれから弟は自分以上に両親にも使用人達にも冷たく扱われ、グレイは初めて『褒められる』という行為を知る。 それに恐怖を感じつつ、グレイはルーカスに接触を試みるも「金に困った事がないお坊ちゃんが!」と手酷く拒絶されてしまい……。 最初ツンツン、のちヤンデレ執着に変化する美形の弟✕平凡な兄です。兄弟、ヤンデレなので、地雷の方はご注意下さいm(__)m
推しにプロポーズしていたなんて、何かの間違いです
一ノ瀬麻紀
BL
引きこもりの僕、麻倉 渚(あさくら なぎさ)と、人気アイドルの弟、麻倉 潮(あさくら うしお)
同じ双子だというのに、なぜこんなにも違ってしまったのだろう。
時々ふとそんな事を考えてしまうけど、それでも僕は、理解のある家族に恵まれ充実した引きこもり生活をエンジョイしていた。
僕は極度の人見知りであがり症だ。いつからこんなふうになってしまったのか、よく覚えていない。
本音を言うなら、弟のように表舞台に立ってみたいと思うこともある。けれどそんなのは無理に決まっている。
だから、安全な自宅という城の中で、僕は今の生活をエンジョイするんだ。高望みは一切しない。
なのに、弟がある日突然変なことを言い出した。
「今度の月曜日、俺の代わりに学校へ行ってくれないか?」
ありえない頼み事だから断ろうとしたのに、弟は僕の弱みに付け込んできた。
僕の推しは俳優の、葛城 結斗(かつらぎ ゆうと)くんだ。
その結斗くんのスペシャルグッズとサイン、というエサを目の前にちらつかせたんだ。
悔しいけど、僕は推しのサインにつられて首を縦に振ってしまった。
え?葛城くんが目の前に!?
どうしよう、人生最大のピンチだ!!
✤✤
「推し」「高校生BL」をテーマに書いたお話です。
全年齢向けの作品となっています。
一度短編として完結した作品ですが、既存部分の改稿と、新規エピソードを追加しました。
✤✤
本気になった幼なじみがメロすぎます!
文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。
俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。
いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。
「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」
その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。
「忘れないでよ、今日のこと」
「唯くんは俺の隣しかだめだから」
「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」
俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。
俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。
「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」
そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……!
【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)
ある日、人気俳優の弟になりました。2
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。
平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。
うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。
春雨
BL
前世を思い出した俺。
外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。
愛が重すぎて俺どうすればいい??
もう不良になっちゃおうか!
少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。
初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。
※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。
※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。
もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。
なるべく全ての感想に返信させていただいてます。
感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる