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脱却3
3-2
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(何が大丈夫なのかまったく分からん……)
とはいえ、そろそろ始業式が始まる時間だ。
唐木を信じたわけじゃないが、後に続いて教室へ……。
時間が迫っているのだから、変に絡まれることはないだろう。
始業式が終わり、ホームルームも終了して今日は半日で終業した。
そのあとは、部によってまちまちだが活動を開始する部活もある。
水泳部は着替えてプールサイドに集合する予定になっていた。
俺はもちろん、部活がなかったとしても一人で泳ぐつもりで水着持参だ。
(泳いでる間になんとか頭ん中整理して、今日中にはアイツに打ち明けたい。……が、簡単に済めばいいけどな……)
この気の重さも今日で終わってくれれば非常に有り難い。
(いつまでも、李煌さんを不安にさせるわけにはいかないからな)
早々と教室を出て更衣室に向かった。
水着の上にジャージを羽織り、プールサイドに来ると、後から唐木も追いついて来た。
「ふぅ……間に合った。もーっ! 一人で行っちゃうことないじゃない!」
俺に向かって剥れる唐木に眉を寄せる。
「お前、クラスの奴と喋ってただろ。邪魔しちゃ悪いと思ったんだ」
「だからって声も掛けずに行く!?」
「行く。っつか、女の群れじゃねえんだから、そんなことで一々怒るなよ」
「な、なんか大河が冷たいっ……。僕何かしたっけ?」
一瞬息を呑んだ
どうにかしなければと思う余り、つい棘のある言い方をしてしまった。
「――……いや、ごめん」
「? ……大河?」
不思議そうに俺を見る視線が少し辛い。
「お前は何もしてないから、気にしなくていい」
「本当に? 本当の本当に?」
「しつこいぞ。俺が言ってること信用できねぇのか?」
「できる! けど、さ……」
腑に落ちない様子の唐木に、どうしたものかと目を眇める。
(……逆にチャンスかもな。ここで切り出せばこっちのもんだ)
「なあ、唐木。部活終わったら少し付き合ってくれ」
「……え?」
唐木の不満そうな顔は、鳩が豆鉄砲を喰らったようなそれに変わった。
「少し話したい事がある」
「……うん、分かったよ。着替えたら待ってる」
さっきまでとは打って変わり、静かで落ち着いた声音には敢えて触れないでおく。
俺の声や態度から、あまり良い話ではないと察したのかもしれない。
――……。
カチャっ……。
「お、相見」
「……?」
「唐木が昇降口で待ってるってさ」
「……分かった。ありがとう」
更衣室に入ると、丁度出て行く部員に伝言を受け取った。
唐木と一緒に部活を終えるのが気まずくて、一番最後まで残って泳いでいたのだが、そんな俺の気持ちを汲み取ってアイツは更衣室から出て待ってくれているのだろう。
(色々、気ぃ回し過ぎだよな……アイツも……)
ポタポタと、髪から滴り落ちる水滴をタオルで拭きながら、誰もいない更衣室で小さく息を吐いた。
とはいえ、そろそろ始業式が始まる時間だ。
唐木を信じたわけじゃないが、後に続いて教室へ……。
時間が迫っているのだから、変に絡まれることはないだろう。
始業式が終わり、ホームルームも終了して今日は半日で終業した。
そのあとは、部によってまちまちだが活動を開始する部活もある。
水泳部は着替えてプールサイドに集合する予定になっていた。
俺はもちろん、部活がなかったとしても一人で泳ぐつもりで水着持参だ。
(泳いでる間になんとか頭ん中整理して、今日中にはアイツに打ち明けたい。……が、簡単に済めばいいけどな……)
この気の重さも今日で終わってくれれば非常に有り難い。
(いつまでも、李煌さんを不安にさせるわけにはいかないからな)
早々と教室を出て更衣室に向かった。
水着の上にジャージを羽織り、プールサイドに来ると、後から唐木も追いついて来た。
「ふぅ……間に合った。もーっ! 一人で行っちゃうことないじゃない!」
俺に向かって剥れる唐木に眉を寄せる。
「お前、クラスの奴と喋ってただろ。邪魔しちゃ悪いと思ったんだ」
「だからって声も掛けずに行く!?」
「行く。っつか、女の群れじゃねえんだから、そんなことで一々怒るなよ」
「な、なんか大河が冷たいっ……。僕何かしたっけ?」
一瞬息を呑んだ
どうにかしなければと思う余り、つい棘のある言い方をしてしまった。
「――……いや、ごめん」
「? ……大河?」
不思議そうに俺を見る視線が少し辛い。
「お前は何もしてないから、気にしなくていい」
「本当に? 本当の本当に?」
「しつこいぞ。俺が言ってること信用できねぇのか?」
「できる! けど、さ……」
腑に落ちない様子の唐木に、どうしたものかと目を眇める。
(……逆にチャンスかもな。ここで切り出せばこっちのもんだ)
「なあ、唐木。部活終わったら少し付き合ってくれ」
「……え?」
唐木の不満そうな顔は、鳩が豆鉄砲を喰らったようなそれに変わった。
「少し話したい事がある」
「……うん、分かったよ。着替えたら待ってる」
さっきまでとは打って変わり、静かで落ち着いた声音には敢えて触れないでおく。
俺の声や態度から、あまり良い話ではないと察したのかもしれない。
――……。
カチャっ……。
「お、相見」
「……?」
「唐木が昇降口で待ってるってさ」
「……分かった。ありがとう」
更衣室に入ると、丁度出て行く部員に伝言を受け取った。
唐木と一緒に部活を終えるのが気まずくて、一番最後まで残って泳いでいたのだが、そんな俺の気持ちを汲み取ってアイツは更衣室から出て待ってくれているのだろう。
(色々、気ぃ回し過ぎだよな……アイツも……)
ポタポタと、髪から滴り落ちる水滴をタオルで拭きながら、誰もいない更衣室で小さく息を吐いた。
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