60 / 62
脱却3
3-9
しおりを挟む
「あっはは。随分仲良くなったじゃないか、二人とも」
義父さんの言葉に目をむく。
「どこをどう見たらそう思えるんだ?」
「え? 昔から言うでしょ。喧嘩するほど仲がいいって。前は会話すらしてなかったじゃないか」
そう言われてみればそうだ。
こんなに話すようになったのはいつからだろう。
(多分、最近……)
少し考え込んでいると、兄貴が椅子から立ち上がった。
「大河、夕飯はもう済んだろ。ちょっと俺の部屋に来い」
「……へ?」
予期せぬ誘いに間の抜けた返事をしてしまった。
そんな俺を無視してさっさと兄貴は出て行ってしまう。
「あら。やっぱり仲良しなのね~」
義母さんの弾ませた声には敢えて触れずにガタと席を立つ。
「李煌さん、御馳走様。美味かったよ。義父さんたちもゆっくり休んで」
皿をシンクへ運んで俺も二階へと向かう。
少しだけ李煌さんの顔が曇ったのが気になったが、それは後だ――。
(呼ばれた理由が思い当たらないわけでもないしな)
――……。
「お前のことだ。呼ばれた理由くらいは見当ついてるんだろう?」
パソコン机の前の椅子を回転させて俺に向き直った兄貴が早速問うてきた。
俺はベッドの淵に腰かけて指を絡めて握った。
「あぁ……李煌さんのことだろ」
「と、お前のことな」
「……」
脚を組んで気だるげに溜息を零す兄貴と、二人きりで対面すると威圧感が倍増する。
今更怖いわけじゃないが、苦手だ。
「李煌さんから何か聞いたのか……?」
俺が口を開くと眼鏡の奥の瞳が細められ、全てを見透かすように見据えて来た。
「いや、アイツからは何もないな。だからかえって違和感がある」
(ハハ……さすが。まあ李煌さん分かりやすいし、李煌さん本人も気付かない変化に気付いたりするんだろうな)
「で、問い質そうかとも思ったが、アイツが躊躇っているならお前に聞くしかないわけだが……」
「李煌さんが話さないことを無理に知る必要ってあるのか? あんたなら見て見ぬふりとかしてあげそうなのに」
「今回のことは李煌のためにならない。自分の態度の変化にも気付かず無意識に無理をしているなら、こっちからこじ開けてやるべきだろ」
(やっぱり気付いてたのか)
俺と二人きりの時は他人を気にすることがないから違和感はないが、第三者がいると俺への接し方が少しぎこちなかった。
(家族に関係がバレるのは、不安だし照れ臭いんだろうけど、いつかは打ち明けなきゃならないことだからな)
「――その様子じゃ、想いが通じ合ってると言う事でいいんだな」
「……っ」
そう言われて、深く眉間に皺を寄せていたことに気付き、指先でグッと自分の眉間を押す。
すると、ハアと大きな溜息が聞こえて来た。
「……ま、中途半端な気持ちじゃないなら反対はしないさ」
「――え……」
ポカンと兄貴を見遣る。
義父さんの言葉に目をむく。
「どこをどう見たらそう思えるんだ?」
「え? 昔から言うでしょ。喧嘩するほど仲がいいって。前は会話すらしてなかったじゃないか」
そう言われてみればそうだ。
こんなに話すようになったのはいつからだろう。
(多分、最近……)
少し考え込んでいると、兄貴が椅子から立ち上がった。
「大河、夕飯はもう済んだろ。ちょっと俺の部屋に来い」
「……へ?」
予期せぬ誘いに間の抜けた返事をしてしまった。
そんな俺を無視してさっさと兄貴は出て行ってしまう。
「あら。やっぱり仲良しなのね~」
義母さんの弾ませた声には敢えて触れずにガタと席を立つ。
「李煌さん、御馳走様。美味かったよ。義父さんたちもゆっくり休んで」
皿をシンクへ運んで俺も二階へと向かう。
少しだけ李煌さんの顔が曇ったのが気になったが、それは後だ――。
(呼ばれた理由が思い当たらないわけでもないしな)
――……。
「お前のことだ。呼ばれた理由くらいは見当ついてるんだろう?」
パソコン机の前の椅子を回転させて俺に向き直った兄貴が早速問うてきた。
俺はベッドの淵に腰かけて指を絡めて握った。
「あぁ……李煌さんのことだろ」
「と、お前のことな」
「……」
脚を組んで気だるげに溜息を零す兄貴と、二人きりで対面すると威圧感が倍増する。
今更怖いわけじゃないが、苦手だ。
「李煌さんから何か聞いたのか……?」
俺が口を開くと眼鏡の奥の瞳が細められ、全てを見透かすように見据えて来た。
「いや、アイツからは何もないな。だからかえって違和感がある」
(ハハ……さすが。まあ李煌さん分かりやすいし、李煌さん本人も気付かない変化に気付いたりするんだろうな)
「で、問い質そうかとも思ったが、アイツが躊躇っているならお前に聞くしかないわけだが……」
「李煌さんが話さないことを無理に知る必要ってあるのか? あんたなら見て見ぬふりとかしてあげそうなのに」
「今回のことは李煌のためにならない。自分の態度の変化にも気付かず無意識に無理をしているなら、こっちからこじ開けてやるべきだろ」
(やっぱり気付いてたのか)
俺と二人きりの時は他人を気にすることがないから違和感はないが、第三者がいると俺への接し方が少しぎこちなかった。
(家族に関係がバレるのは、不安だし照れ臭いんだろうけど、いつかは打ち明けなきゃならないことだからな)
「――その様子じゃ、想いが通じ合ってると言う事でいいんだな」
「……っ」
そう言われて、深く眉間に皺を寄せていたことに気付き、指先でグッと自分の眉間を押す。
すると、ハアと大きな溜息が聞こえて来た。
「……ま、中途半端な気持ちじゃないなら反対はしないさ」
「――え……」
ポカンと兄貴を見遣る。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
15
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる