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第一章 祓い師
【伍】ー1
しおりを挟む翌日――。
少し事情があり、予定していた時間よりも二時間ほど遅れての入山となった。
かといって誰かと約束していたわけではないので遅れようが逆に早かろうがどうでも良いのだが……。
今日は貴人も一緒に地下へと下りていく。
早朝から温泉に二回も入った彼女は機嫌が良さそうだ。仕事が終わったらもう一度入ってから帰るとやる気を漲らせている。
「ここ……前からこんな状態だったの?」
今日は敵が一匹も見当たらないため騰蛇に照明としての炎を増やして貰い、浮かび上がった地下の惨状に貴人が唖然と呟く。
「ちょっと不自然な感じがするんだけど……」
「昨日もこんな感じだったと思います。それ以前は分かりませんが。不自然さは私も感じていました」
洞窟のようなこの空間に入ったところで全ての壁が剥き出しになっている。
昨日は暗かったため肌で感じた程度だが、いきなり土壁に変わっているのはやはり違和感しかない。
――何か強い衝撃によって吹き飛ばされたような……。
晴明は不自然に崩れた壁を手でなぞる。
「恐らく、この奥に置かれていた何かが原因で地下が削られたのでしょう。であれば、あの時の地震にも説明がつきます。特にそこの邪気が酷かった……間違いないですね」
昨日、騰蛇が見つけた何かがあった場所で晴明は立ち止まる。
髪に隠れた左目が疼くような気がして頭を振った。
「晴明……大丈夫か?」
「ええ、問題ありません」
庇うように左目をそっと掌で押さえる晴明を気遣うように騰蛇が身を寄せる。
問題ないのは確かだが、何故か昨夜見た夢が脳裏を過ぎり、暫くそこから離れられずにいた。
騰蛇が痺れを切らして足下からスルスルと這い上がって来る。
「早く仕事片付けて此処から出よう。何も無いにしてもあまり留まらない方がいい……おい、晴明? 聞いてるか?」
自分を呼ぶ声は聞こえているが、意識は別の場所にあった。
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