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「やあローズ。いい子にしてたかい?」
ゾワゾワと背筋に悪寒が走る。気持ち悪い。でもあんまり変に対応しても後が怖いので笑顔を貼り付ける。
「さ、こちらへ」
肩を抱かれて、歩き出すアントニー、いや気持ち悪いから名前すら呼びたくないわっ。
ブルリと震えるわたしを見て、何を勘違いしたのかひたすら気持ち悪い笑顔でこちらを見た。
「そんなに期待しているのですか……?いいでしょう。楽しませてあげますから」
もうわたしの心はダメージが大きすぎて空虚になっている。
表情がすっぽり抜け落ちているわたしを連れて別の場所へ移動していた。
なんだか牢屋みたいなところにたくさんの女の子や子供がいる。思わず顔が引き攣った。もしかして人身売買の……被害者?
「あの、あの子達は……」
「ああ、あの子達ですか。わたしと結婚していただくので知っていてもいいでしょう。この人たちは売り飛ばすのですよ。令嬢であればマニアな人に高く売れますし、子供も貴族やそう言った趣味の方には高値で取引される。いい金になります」
平然と言ってのける彼に固まってしまう。この人、人をなんだと思ってるの……?
そして一つの部屋にたどり着いた時、わたしの体は誰かに抱き込まれた。
「そこまでだ。アントニー侯爵令息。もう逃げられん」
後ろからは王太子殿下、そして騎士の人がたくさん来ていた。どうやら囮作戦は成功したらしい。自供取れてるもんね。よかった。
わたしをぎゅうぎゅう抱きしめている主は何も発さずちょっと震えているような……?
「抑えろウィル。もう終わる」
怒ってたのか。
その後、アントニーは王太子殿下の連れてきた騎士達に取り押さえられた。ルージェちゃんはマクルトに保護され、わたしはウィルに捕獲されている。
屋敷に囚われていたご令嬢や子供達は解放され、それぞれ話を聞いた後で家へ返されることなった。
こうして事件は無事に解決されたのである。
私たち四人は王宮へ連れられていた。
事情聴取とともに今回の件の解決に尽力したとしておもてなしを受けるためだという。
無事に裏の主導者を捕まえられたことで、国王陛下からもお礼を述べられ、オロオロしてしまった。
その後は晩餐に招待され、豪華な食事をみんなでワイワイ食べる。普段は食べられない高級食材に感動しながらそのまま眠りについた。
ウィルとわたしはなぜか同室を準備され、いつもと変わらずというかいつも以上にベタベタされてちょっと鬱陶しかった。
それからなんと、あの事件の後ルージェちゃんとマクルトは婚約した。トルトン男爵家は爵位返上と極刑をうけ、ルージェちゃんは平民となったが、マクルトの家は子爵家。子爵家ならば平民と結婚することも度々あるのだ。特に支障はない。ということで、無事にくっついた。
わたしはその話をニヤニヤしながら聞いていて、マクルトに怒られたけど。
それから……
「これから先、何があろうとも妻を愛し抜くことを誓いますか?」
「誓います」
「これから先、何があろうとも夫を愛し抜くことを誓いますか?」
「誓います」
「それでは近いのキスを」
わたしは彼と向き合う。お互いに真っ白な衣装を身につけて、今日という日を指折り数えていた。
彼はふと微笑んでわたしの唇に自分の唇を重ねる。
みんなの前だったからちょっと恥ずかしかったけど、彼が満足そうなのでよしとしよう。
「一生、愛してるよ」
「はい……わたしも愛してる」
ーー数年後
「キャッキャっ」
小さな声が聞こえてくる。
「お母様っ、フラムが笑ってます!」
「あらあらそうね。お兄様が来てくれて嬉しいのかしら」
わたしはあれから二人の子宝に恵まれた。一番上がソルト、三歳になる男の子だ。二番目はフラムでそろそろ一歳になる。これまた男の子。
そして……
「こらローズ。あまり歩き回るな」
「多少の運動は必要だって前から言ってるじゃないっ」
わたしのお腹の中には三人目。
結婚してから次々と子供を授かっていた。その理由は……みなさんお分かりと思うが毎日夜が明けるまで抱き潰されているのだ。やっと落ち着いたと思ったのに、結婚して彼が伯爵家を同時に継いでから全然離してくれないのだ。
一回落ち着いたと思ったのに……
いくら言っても何をしてもなかなか離してくれない。
体力的には大変だけど、なんだかんだ幸せだ。ただ、もう少し控えてもらおう。そうしよう。
「次は女の子がいいかな」
「ふふっ。そんなのわからないわよ」
くすくす笑っている二人の元には、玉のような女の子がやってきたのであった。
おしまい
ゾワゾワと背筋に悪寒が走る。気持ち悪い。でもあんまり変に対応しても後が怖いので笑顔を貼り付ける。
「さ、こちらへ」
肩を抱かれて、歩き出すアントニー、いや気持ち悪いから名前すら呼びたくないわっ。
ブルリと震えるわたしを見て、何を勘違いしたのかひたすら気持ち悪い笑顔でこちらを見た。
「そんなに期待しているのですか……?いいでしょう。楽しませてあげますから」
もうわたしの心はダメージが大きすぎて空虚になっている。
表情がすっぽり抜け落ちているわたしを連れて別の場所へ移動していた。
なんだか牢屋みたいなところにたくさんの女の子や子供がいる。思わず顔が引き攣った。もしかして人身売買の……被害者?
「あの、あの子達は……」
「ああ、あの子達ですか。わたしと結婚していただくので知っていてもいいでしょう。この人たちは売り飛ばすのですよ。令嬢であればマニアな人に高く売れますし、子供も貴族やそう言った趣味の方には高値で取引される。いい金になります」
平然と言ってのける彼に固まってしまう。この人、人をなんだと思ってるの……?
そして一つの部屋にたどり着いた時、わたしの体は誰かに抱き込まれた。
「そこまでだ。アントニー侯爵令息。もう逃げられん」
後ろからは王太子殿下、そして騎士の人がたくさん来ていた。どうやら囮作戦は成功したらしい。自供取れてるもんね。よかった。
わたしをぎゅうぎゅう抱きしめている主は何も発さずちょっと震えているような……?
「抑えろウィル。もう終わる」
怒ってたのか。
その後、アントニーは王太子殿下の連れてきた騎士達に取り押さえられた。ルージェちゃんはマクルトに保護され、わたしはウィルに捕獲されている。
屋敷に囚われていたご令嬢や子供達は解放され、それぞれ話を聞いた後で家へ返されることなった。
こうして事件は無事に解決されたのである。
私たち四人は王宮へ連れられていた。
事情聴取とともに今回の件の解決に尽力したとしておもてなしを受けるためだという。
無事に裏の主導者を捕まえられたことで、国王陛下からもお礼を述べられ、オロオロしてしまった。
その後は晩餐に招待され、豪華な食事をみんなでワイワイ食べる。普段は食べられない高級食材に感動しながらそのまま眠りについた。
ウィルとわたしはなぜか同室を準備され、いつもと変わらずというかいつも以上にベタベタされてちょっと鬱陶しかった。
それからなんと、あの事件の後ルージェちゃんとマクルトは婚約した。トルトン男爵家は爵位返上と極刑をうけ、ルージェちゃんは平民となったが、マクルトの家は子爵家。子爵家ならば平民と結婚することも度々あるのだ。特に支障はない。ということで、無事にくっついた。
わたしはその話をニヤニヤしながら聞いていて、マクルトに怒られたけど。
それから……
「これから先、何があろうとも妻を愛し抜くことを誓いますか?」
「誓います」
「これから先、何があろうとも夫を愛し抜くことを誓いますか?」
「誓います」
「それでは近いのキスを」
わたしは彼と向き合う。お互いに真っ白な衣装を身につけて、今日という日を指折り数えていた。
彼はふと微笑んでわたしの唇に自分の唇を重ねる。
みんなの前だったからちょっと恥ずかしかったけど、彼が満足そうなのでよしとしよう。
「一生、愛してるよ」
「はい……わたしも愛してる」
ーー数年後
「キャッキャっ」
小さな声が聞こえてくる。
「お母様っ、フラムが笑ってます!」
「あらあらそうね。お兄様が来てくれて嬉しいのかしら」
わたしはあれから二人の子宝に恵まれた。一番上がソルト、三歳になる男の子だ。二番目はフラムでそろそろ一歳になる。これまた男の子。
そして……
「こらローズ。あまり歩き回るな」
「多少の運動は必要だって前から言ってるじゃないっ」
わたしのお腹の中には三人目。
結婚してから次々と子供を授かっていた。その理由は……みなさんお分かりと思うが毎日夜が明けるまで抱き潰されているのだ。やっと落ち着いたと思ったのに、結婚して彼が伯爵家を同時に継いでから全然離してくれないのだ。
一回落ち着いたと思ったのに……
いくら言っても何をしてもなかなか離してくれない。
体力的には大変だけど、なんだかんだ幸せだ。ただ、もう少し控えてもらおう。そうしよう。
「次は女の子がいいかな」
「ふふっ。そんなのわからないわよ」
くすくす笑っている二人の元には、玉のような女の子がやってきたのであった。
おしまい
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