9 / 23
9
しおりを挟む
「ねえねえ、アメリア。あなたとクロウはどう言う関係なの? クロウは妹としか言わないけど、それじゃ納得できないのよねぇ」
「え、あ、その……」
「こらミーシャ。あまりアメリアをいじめるな」
「あら虐めてなんてないわよ? こんな可愛い妹がいるならわたしに紹介して欲しかったのに。絶対可愛がるって約束できるわっ」
「アメリアの教育によくないだろ」
「よくないってどう言うことー⁈ ねーレオン、クロウが酷いこと言うのよーっ」
「はぁ、クロウ。ミーシャには話してもいいんじゃないか?」
お兄様の大きなため息が響く。どうやらレオン様はわたし達の事情を知っているみたい。
それからお兄様はミーシャ様にわたし達の関係について話ていた。
「まぁまぁ! そんな小さな頃から一緒なのねっ。それなら納得だわぁ。それでそれで、二人は付き合ってるのっ?」
ミーシャ様はわたしにぐいぐい迫ってくる。つ、付き合ってる⁈ そんなのありえないわ。だってわたしはただ彼の食事だもの。侍女の仕事をちゃんとできているとも思えないし、今なんて学園に通わせてもらってる。
ただの、食事係だもの……
黙り込むわたしに戸惑う表情のミーシャ様、頭を抱えているレオン様にわたしをじっと見ているお兄様。
「……ごめんなさいね。ちょっと早かったみたい。クロウ、アメリア借りてもいいかしら?」
「どうぞ。余計なことは言うなよ」
「言わないわよっ。あなた怒ると怖いものっ」
黙り込んでしまったわたしを連れて奥の部屋へ行くミーシャ様。
ソファに座ってわたしの手を握ってくれた。
「ねぇ、アメリア。あなたクロウのことはどう思ってるの?」
「え……?」
「好きか嫌いかで言ったらどっち?」
好きか嫌いかで言ったら好き……と思う。
「好き、だと思います……」
「じゃあ、そばにいない時は?」
「……あまり、考えたことない、です」
「そう、ならこれからちょっとずつ考えてあげて」
なぜこんな話をされているかはわからないけど、頷いた。考えるって、どうやって考えたらいいんだろう。それにシャルル様のこともある。
あまり彼に近づきすぎてはいけない……
それから部屋に帰って、勉強をする。いつものルーティーンだ。
「ここはこれを当てはめて計算するんだよ」
「……はい」
ずっと考えていた。わたしとご主人様の関係。でも、何度考えてもよくわからない。食事として血液を分け与える。そのための衣食住は保証されている。さらには学園にまで通わせてもらっている。ここまでは何にもないただの食事係だと思う。
けれど、食事の時に、キスをしたり二人で一緒に寝てる。これは、本で読んだ気持ちの通じあった恋人同士がする行為だと書いてある。それにマナーの本にもそう書いてあった気がする。婚約者同士でなければはしたないとされていると。
「どうしたの? ミーシャに何か言われた?」
どうやら考え込んでしまったらしい。ご主人様に声をかけられ、はっとした。
「え、いえ、なんでも、ない、です……」
そんなわたしの様子を怪訝な眼差して見つめた後、「おいで」と言ってベッドへ連れていかれた。
ベッドの縁に座らされる。そんなわたしを後ろから抱きしめるご主人様。あったかい……
思わず前に回されている腕をきゅっと掴んだ。
「ちょっと早いけど、ご飯、ちょうだい」
カプリと牙を立てられて、皮膚を裂く。この痛みだけは毎回襲ってきて、肩がピクリと動く。
そこからジュルジュルと血を啜られた。
「んっ……」
この気持ちよさはなんだかうまく表現できない。けど、だんだん何も考えられなくなってくる。
「アメリア。どうしたの? 何を考えてる?」
ああ、彼の声だけ鮮明に聞こえる。何を……ってなんのこと。
「俺のこと、好き?」
あ、好き……? 好き、好き、好き……
「す、き……っ」
え、なんで? 勝手に口から……
「それは、どんな好き?」
どんな、どんな……
「わからない……けどっ、っん……す、き」
「俺たちの関係って……何?」
関係、関係、関係……何……?
「食事、っががり……?」
「……うまく、伝わらないものだね」
彼の声が、急に寂しそうに聞こえて。そのままわたしはくるりと体を回されて。
ご主人様と向き合った。
「ねぇ、アメリア」
首の後ろに腕を回される。だんだん彼の顔が近づいてきて。
唇にキスを落とされる。
「レオンと、こう言うこと、できる?」
「あ……」
「どうなの」
急かされる。どう、なんだろう。他の人とキス……それどころかこんなに触れてて不快に思わないのは、ご主人様だけかもしれない。他の人は……いや、されたことがないから、わからない。
どう、なんだろう……わからない……
「わか、ん、ない……わかんない」
「そう。アメリアは鈍感なんだね。というか、俺が囲いすぎたかな。なら、明日試してみようか」
「え……」
「さ、おやすみ」
ふわりと眠くなる。わたしは重くなる瞼をそのまま受け入れた。
「え、あ、その……」
「こらミーシャ。あまりアメリアをいじめるな」
「あら虐めてなんてないわよ? こんな可愛い妹がいるならわたしに紹介して欲しかったのに。絶対可愛がるって約束できるわっ」
「アメリアの教育によくないだろ」
「よくないってどう言うことー⁈ ねーレオン、クロウが酷いこと言うのよーっ」
「はぁ、クロウ。ミーシャには話してもいいんじゃないか?」
お兄様の大きなため息が響く。どうやらレオン様はわたし達の事情を知っているみたい。
それからお兄様はミーシャ様にわたし達の関係について話ていた。
「まぁまぁ! そんな小さな頃から一緒なのねっ。それなら納得だわぁ。それでそれで、二人は付き合ってるのっ?」
ミーシャ様はわたしにぐいぐい迫ってくる。つ、付き合ってる⁈ そんなのありえないわ。だってわたしはただ彼の食事だもの。侍女の仕事をちゃんとできているとも思えないし、今なんて学園に通わせてもらってる。
ただの、食事係だもの……
黙り込むわたしに戸惑う表情のミーシャ様、頭を抱えているレオン様にわたしをじっと見ているお兄様。
「……ごめんなさいね。ちょっと早かったみたい。クロウ、アメリア借りてもいいかしら?」
「どうぞ。余計なことは言うなよ」
「言わないわよっ。あなた怒ると怖いものっ」
黙り込んでしまったわたしを連れて奥の部屋へ行くミーシャ様。
ソファに座ってわたしの手を握ってくれた。
「ねぇ、アメリア。あなたクロウのことはどう思ってるの?」
「え……?」
「好きか嫌いかで言ったらどっち?」
好きか嫌いかで言ったら好き……と思う。
「好き、だと思います……」
「じゃあ、そばにいない時は?」
「……あまり、考えたことない、です」
「そう、ならこれからちょっとずつ考えてあげて」
なぜこんな話をされているかはわからないけど、頷いた。考えるって、どうやって考えたらいいんだろう。それにシャルル様のこともある。
あまり彼に近づきすぎてはいけない……
それから部屋に帰って、勉強をする。いつものルーティーンだ。
「ここはこれを当てはめて計算するんだよ」
「……はい」
ずっと考えていた。わたしとご主人様の関係。でも、何度考えてもよくわからない。食事として血液を分け与える。そのための衣食住は保証されている。さらには学園にまで通わせてもらっている。ここまでは何にもないただの食事係だと思う。
けれど、食事の時に、キスをしたり二人で一緒に寝てる。これは、本で読んだ気持ちの通じあった恋人同士がする行為だと書いてある。それにマナーの本にもそう書いてあった気がする。婚約者同士でなければはしたないとされていると。
「どうしたの? ミーシャに何か言われた?」
どうやら考え込んでしまったらしい。ご主人様に声をかけられ、はっとした。
「え、いえ、なんでも、ない、です……」
そんなわたしの様子を怪訝な眼差して見つめた後、「おいで」と言ってベッドへ連れていかれた。
ベッドの縁に座らされる。そんなわたしを後ろから抱きしめるご主人様。あったかい……
思わず前に回されている腕をきゅっと掴んだ。
「ちょっと早いけど、ご飯、ちょうだい」
カプリと牙を立てられて、皮膚を裂く。この痛みだけは毎回襲ってきて、肩がピクリと動く。
そこからジュルジュルと血を啜られた。
「んっ……」
この気持ちよさはなんだかうまく表現できない。けど、だんだん何も考えられなくなってくる。
「アメリア。どうしたの? 何を考えてる?」
ああ、彼の声だけ鮮明に聞こえる。何を……ってなんのこと。
「俺のこと、好き?」
あ、好き……? 好き、好き、好き……
「す、き……っ」
え、なんで? 勝手に口から……
「それは、どんな好き?」
どんな、どんな……
「わからない……けどっ、っん……す、き」
「俺たちの関係って……何?」
関係、関係、関係……何……?
「食事、っががり……?」
「……うまく、伝わらないものだね」
彼の声が、急に寂しそうに聞こえて。そのままわたしはくるりと体を回されて。
ご主人様と向き合った。
「ねぇ、アメリア」
首の後ろに腕を回される。だんだん彼の顔が近づいてきて。
唇にキスを落とされる。
「レオンと、こう言うこと、できる?」
「あ……」
「どうなの」
急かされる。どう、なんだろう。他の人とキス……それどころかこんなに触れてて不快に思わないのは、ご主人様だけかもしれない。他の人は……いや、されたことがないから、わからない。
どう、なんだろう……わからない……
「わか、ん、ない……わかんない」
「そう。アメリアは鈍感なんだね。というか、俺が囲いすぎたかな。なら、明日試してみようか」
「え……」
「さ、おやすみ」
ふわりと眠くなる。わたしは重くなる瞼をそのまま受け入れた。
5
あなたにおすすめの小説
婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました
ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!
フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!
※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』
……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。
彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。
しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!?
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています
燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~
二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。
夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。
気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……?
「こんな本性どこに隠してたんだか」
「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」
さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。
+ムーンライトノベルズにも掲載しております。
コワモテ軍人な旦那様は彼女にゾッコンなのです~新婚若奥様はいきなり大ピンチ~
二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
政治家の令嬢イリーナは社交界の《白薔薇》と称される程の美貌を持ち、不自由無く華やかな生活を送っていた。
彼女は王立陸軍大尉ディートハルトに一目惚れするものの、国内で政治家と軍人は長年対立していた。加えて軍人は質実剛健を良しとしており、彼女の趣味嗜好とはまるで正反対であった。
そのためイリーナは華やかな生活を手放すことを決め、ディートハルトと無事に夫婦として結ばれる。
幸せな結婚生活を謳歌していたものの、ある日彼女は兄と弟から夜会に参加して欲しいと頼まれる。
そして夜会終了後、ディートハルトに華美な装いをしているところを見られてしまって……?
引きこもり令嬢が完全無欠の氷の王太子に愛されるただひとつの花となるまでの、その顛末
藤原ライラ
恋愛
夜会が苦手で家に引きこもっている侯爵令嬢 リリアーナは、王太子妃候補が駆け落ちしてしまったことで突如その席に収まってしまう。
氷の王太子の呼び名をほしいままにするシルヴィオ。
取り付く島もなく冷徹だと思っていた彼のやさしさに触れていくうちに、リリアーナは心惹かれていく。けれど、同時に自分なんかでは釣り合わないという気持ちに苛まれてしまい……。
堅物王太子×引きこもり令嬢
「君はまだ、君を知らないだけだ」
☆「素直になれない高飛車王女様は~」にも出てくるシルヴィオのお話です。そちらを未読でも問題なく読めます。時系列的にはこちらのお話が2年ほど前になります。
※こちら同じ内容で別タイトルのものをムーンライトノベルズにも掲載しています※
筋書きどおりに婚約破棄したのですが、想定外の事態に巻き込まれています。
一花カナウ
恋愛
第二王子のヨハネスと婚約が決まったとき、私はこの世界が前世で愛読していた物語の世界であることに気づく。
そして、この婚約がのちに解消されることも思い出していた。
ヨハネスは優しくていい人であるが、私にはもったいない人物。
慕ってはいても恋には至らなかった。
やがて、婚約破棄のシーンが訪れる。
私はヨハネスと別れを告げて、新たな人生を歩みだす
――はずだったのに、ちょっと待って、ここはどこですかっ⁉︎
しかも、ベッドに鎖で繋がれているんですけどっ⁉︎
困惑する私の前に現れたのは、意外な人物で……
えっと、あなたは助けにきたわけじゃなくて、犯人ってことですよね?
※ムーンライトノベルズで公開中の同名の作品に加筆修正(微調整?)したものをこちらで掲載しています。
※pixivにも掲載。
8/29 15時台HOTランキング 5位、恋愛カテゴリー3位ありがとうございます( ´ ▽ ` )ノノΞ❤︎{活力注入♪)
冷酷王子と逃げたいのに逃げられなかった婚約者
月下 雪華
恋愛
我が国の第2王子ヴァサン・ジェミレアスは「氷の冷酷王子」と呼ばれている。彼はその渾名の通り誰に対しても無反応で、冷たかった。それは、彼の婚約者であるカトリーヌ・ブローニュにでさえ同じであった。そんな彼の前に現れた常識のない女に心を乱したカトリーヌは婚約者の席から逃げる事を思いつく。だが、それを阻止したのはカトリーヌに何も思っていなさそうなヴァサンで……
誰に対しても冷たい反応を取る王子とそんな彼がずっと好きになれない令嬢の話
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる