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しおりを挟む「おい……」
「……」
「おい?」
「…………」
「返事をしろっ!」
「あたしは『おい』なんて名前じゃないわよっ!」
「振り向いたくせに」
ぼそりと言われて、頭に血が上る。履いていた靴を片方脱ぐと、投げつけた。
「お前、何するんだっ!?」
「何よー!!」
あたしはもう片方も脱いで、投げた。
どちらも青羅に当る事はなく、彼は余裕で受け止めた。
その仕草は、更にあたしの怒りを誘う。
「何を怒ってるんだ?」
なんで?それはあたしにもわかんないわよ。
でも、なんだか、すっごくイヤだった。
青羅が、あたしには決して見せない笑顔で、女の人と楽しげにしてることが。
そう、あたしには、めちゃめちゃ不機嫌な顔しか、見せないくせに。
「なんでって……知らない世界に突然来て、しかも、すっごく意地悪な兄がいたら、機嫌も悪くなるってものよっ!」
適当な理由を引っ張り出して叫んだ。
怒りの原因は微妙に違うんだけど。
青羅が意地悪だっていうのは、あってるはず。
「ふーん?」
青羅の眼差しが、すっと細められる。意味ありげに。
「な、なによ?」
青羅はあたしの靴を拾って近づいてくる。
あたしは後ずさり壁際に追い詰められ、逃げ場を失った。
しりじりと、距離が縮まり、腕を伸ばせば掴めるほどになる。
彼はじっとあたしを見下ろす。
暫し、沈黙が二人の間に流れる。
まるで永遠のようにも感じられるその時を破ったのは青羅が先だった。
「お前……」
あたしを見下ろす青羅の瞳が、切なく揺れた気がした。
驚いて、それを見つめていると、瞬く間に掻き消されてしまう。
あまりのことに、呆然とした。
何、今のは?
「課題、サボったな」
「…………は?」
「今からやるぞ、こい」
「へっ?あ、うぎゃあっ!」
あたしの身体はまっさかさまになった。というか、上半身が逆さま。
青羅があたしを肩に担ぎ上げたのだ。
「ちょっとー!もうちょっと他に方法あるでしょっ!?」
荷物みたいに担ぎ上げるなんて。
「暴れるから、これでいい」
「ひっどーいっ!」
あたしは青羅の髪を掴んで、引っ張った。
すると、彼はあろうことかあたしのお尻を叩く。
「やあーっ!何すんのよー!」
「大人しくしてれば何もしないさ」
意地悪く言うと、すたすたと歩き出す。
とても人一人を抱えてるとは思えないほど、安定した足取り。
あたしは彼の髪を握り締めたまま、ぎりぎりと歯軋りしていた。
一体、あたしのこと、何だと思ってるわけ?あたしが何に対して苛立っていたのか、わからないくせに。
わからないくせに。
教えないくせに。
だって言えない。
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