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しおりを挟む「ちょっと!青羅ー!」
あたしは彼の姿を見つけ、駆け寄った。
人に分厚い歴史書押し付けておいて、自分はのん気に散歩してるんだもん。
「あっ!ご、ごめんっ」
だけど、青羅は一人で散歩してたわけじゃなかった。
見知らぬ青年と一緒。
彼も青羅に負けず劣らずに美形で、思わず口をあんぐりとあけて見惚れてしまう。
白っぽい銀の髪。青羅より少し身長が高い。
そして何より、すごく優しげ。
ああ、青羅よりも、こんな人がお兄さんだったら、なんて思ってると、頭を軽く殴られる。
青羅が不機嫌に、あたしを見下ろしていた。
「なっ!?」
「何バカ面して見てるんだっ。ったく」
「何よ、殴ることないでしょっ!ぽんぽん、ぽんぽん、人の頭をスイカか何かと勘違いしてるんじゃないのっ!大体、あんたあたしを何回、バカ呼ばわりするわけ?失礼しちゃうったらないわよっ!」
バシッと、背中を叩き返す。
青羅が眉根を寄せ、あたしを睨んだ。それに対して、あたしも負けじと睨み返す。
ぐるる、と唸り声がでそうな雰囲気を、のんびりとした声が裂いた。
「仲、良いんだ」
「「どこがっ!?」」
あたしと青羅は同時に叫んで、声の主を見た。
「そこが」
青年は可笑しそうに、身体を折り曲げて笑っていた。
「初めまして。私は白珠と申します。真名姫」
やがて青年は笑いを収めると、にっこりと柔らかく微笑み挨拶をしてきた。
優しくて穏やかな微笑みにつられるようにあたしも笑い返す。
「えっと、初めまして……。と、白珠さんっ!?」
聞き覚えのある名前。
確か、青羅が言っていた、あたしの結婚相手候補。
「はい、そうです」
あたしの驚きを介さないように、白珠さんは、にこりと笑う。
「え、え、ええっ!?」
あたしは慌てて、青羅と白珠さんを交互に眺める。
彼は、あたしの結婚相手候補だってこと、知ってるのかな。
とか、そもそもなんで、こんなところにいるんだろうって。
「久しぶりに青羅に会いに来たんですよ」
あたしの狼狽ぶりを理解したのか、白珠さんはやんわりと私用だと断ってくれる。
あたしは思わず、ほっとしてから、口元を抑えた。
白珠さんが小さく微笑む。
子供の可愛い悪戯を、黙認するように。
「え?あ、ああ、そういえば、お二人、友人だってお聞きしましたけど……簡単にこちらに来れるものなんですか?」
この国の詳しい国境状態とか、国交とかはまだよくわからないけど。
一国の王子様が、こんなフラフラしていていいものなんだろうか。
第一、彼がここにいることを、お城の人は知ってるんだろうか。その辺りも謎なんだけど。
「白珠は、旅が好きで、しょっちゅうあちこち回ってる。俺が白珠に会いたいと思っても、どこにいるかわからないからな。こいつの方から来てもらうばっかりになる。白珠は、この国や城へ入る事は、王が認めている。銀青鳥にとって、一番深い繋がりを持つのは、白竜国だ。こいつは、特別」
青羅が嬉しそうに話すを聞いてるのはなんだか面白くない。
どうしてあたし以外の人には、そんなににこやかなのって。
あたしにはいつも仏頂面なのに……。
「ふーん。仲、いいんだ……」
何故かぼそっと口をついた言葉は、意外なほど大きく響いた。
二人が、少し驚いたようにあたしを見ていて、気まずくなる。
ややして、白珠さんがぷっと、噴出した。
なんで、笑われなくちゃならないわけ?
あたしが、びっくりした顔で、彼を見ると肩を竦めた。
「いや、すまないね。笑ったりして。でも、それは私も、青羅といると、たまに感じたことだから」
「……え?」
「白珠っ!」
青羅は慌てて彼を睨んだが、白珠さんは口を開く。
「こいつは、好きな相手には、めちゃくちゃ無愛想なんだよ」
「え?」
「白珠っ!お前っ!!」
青羅は白珠さんの胸倉を掴んで、黙らせようとした。
だが、そんなことは日常茶飯事とでもいうのか、白珠さんは少しも気にすることなく、口を開く。
「本当のことを言われると、すぐにムキになるのが、その証拠」
「お前なー……」
青羅は悔しそうに顔を歪めて、白珠さんの身体を離した。
「お前っ!さっさと帰れ。いつまでもうろうろするな」
「おーこわ。というわけで、今日はこれでお暇させていただくけど、今度ゆっくり話しをしましょう」
白珠さんは、青羅の怒りを軽くかわしながら、あたしの手を取り、その甲に口付けた。
優雅な仕草で、別れを言い、去って行った。
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