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しおりを挟む「もうやだ……帰りたい……」
ずっと、言わないようにしていた言葉。
それを口にすれば、困らせることはわかっている。
既に色々と困らせることをしているけれど、その中でも、これは言っちゃいけなって思ってた。
それでも、言ってしまう。
困らせたくて。
あたしをもっと気にして欲しくて。
「帰せるものなら、帰してやるけどな……」
ぽつりと返されて、あたしは顔を上げた。
それってつまり、あたしはどうでもいいってこと?
「……あたし、邪魔だもんね。あたしがいなければ、王になれたかもしれないもんね……」
あたしが呟くと、青羅は不機嫌そうに眉根を寄せる。
いつもそんな顔。
あたしは、彼を困らせるしかない存在。
「何言ってるんだ?……第一、印がなければ、王にはなれない」
「もしも……あたしが死んだら?」
バシッと、頬を打たれた。あまり加減がなかったように思う。とても痛い。でもそれは、彼の顔を見たからだろうか。
驚いて目を見開いて青羅を見ると、彼は悲しそうな悔しそうな、なんだかとても複雑な表情をしていた。
青羅の方が殴られたような、痛々しさが瞳に見える。
「お前が死んでも、俺が王になれるわけではない……」
苦しげに吐き出される言葉。
それはそうだけど。何故か、それだけではないような意味合いがあるような気がするのは、あたしの都合の良い解釈だろうか。
辛そうな声音が、それを教えてる気がする。
「……ん、ごめん……」
「いや……オレの方こそ、悪い……。お前の方が、大変なのにな……」
青羅の腕が背中に回され、肩を抱き寄せられた。
一瞬、びくっとしたけれど、嫌な感じがしない。
それどころか、胸に広がる甘い痛み。
吐き出されそうな、叫びが、胸に渦巻く。
あたしはその思いを抑えつけながら、青羅の胸に頭を凭せ掛けた。
青羅が傍にいたら、いつかあたしの為に命を落とすことになるかもしれない。
そんな漠然とした不安が胸をしめつける。
でも、彼が離れるのは、もっと嫌だって気づかされた。
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