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第二章 沈む身体、揺れる心
🩷7話 玲奈って、呼んで
しおりを挟むケイは、玲奈の腰に回した手をゆっくりと上へ滑らせ、背中のジッパーに指をかけた。
「……いい?」
声は低く、けれど拒める余地を残すように。
玲奈はわずかに顎を引き、目を合わせたまま頷いた。
その仕草が、いつもの余裕をほんの少しだけ崩している。
──ジィ……。
ジッパーを下ろす音が、部屋の静けさの中でやけに際立つ。
布地が肩から滑り落ちると、玲奈は一瞬だけ息を止めた。
「……いつもは強いくせに、今は違うんですね」
ケイの言葉に、玲奈は薄く笑ったが、視線はほんの一瞬だけ泳いだ。
その反応が、ケイの胸を熱くする。
肩にかかる布を指先で払い、露わになった肌に目を這わせる。
「……綺麗だよ……」
その声は、自分でも驚くほど素直に出ていた。
玲奈は息を吐くと同時にわずかに肩をすくめ、
「……ありがと」
と小さく返す。
それ以上は言わない。
でも、その頬にわずかに差した熱が、確かに答えになっていた。
「……こっち」
短くそう言って、立ち上がらせたままベッドへと歩く。
玲奈は何も言わず、ストッキング越しの足音をわずかに響かせながらついてくる。
マットレスに腰を下ろした瞬間、ケイはその肩を押し、柔らかなベッドの上に倒れ込ませた。
大きく乱れた髪が枕に広がる。
天井の淡い照明が、玲奈の鎖骨をなぞるように光っていた。
ベッドの縁に片膝を乗せ、玲奈の腰の横に手をつく。
「……まだ、ちゃんと見せてもらってないよな」
低い声で言いながら、指先をキャミソールの裾にすべらせる。
布が持ち上がるたび、玲奈の肌にふれていた空気が、ゆっくりと熱を帯びていく。
「腕……上げて」
感情は抑えてるのに、目の奥にある欲望は誤魔化してない。
玲奈が戸惑えば戸惑うほど、ケイの指は迷いなく肌へ触れてくる─
キャミソールを頭上へ抜き取り、ベッド脇へ放ると、視線はすぐに玲奈の脚へと移った。
足首を軽く持ち上げ、反対の手でストッキングの生地をゆっくりとたぐり寄せる。
膝、太ももへと進むにつれ、露わになった肌が柔らかな照明を受けて艶を帯びていく。
そのとき、裾の奥に黒のレースがちらりとのぞいた。
思わずケイの指先が止まり、呼吸が浅くなる。
(……Tバック……!)
想像もしていなかった布の少なさに、胸の奥がざわついた。
さっきまで想像もしなかった現実が、目の前で形を持って迫ってくる。
ケイの視線がそこで止まったことに、玲奈も気づいた。
一瞬だけ息をのみ、胸の上下がかすかに速まる。
(……気づいてる……反応、してる……)
その意識が、さらに自分の鼓動を強くした。
けれどケイの指先は迷わず動きを続ける。
ストッキングの片方を脱がせ、もう片方へ。
そのたびに玲奈の呼吸がわずかに深くなり、ケイはその変化を見逃さなかった。
ストッキングが脱がされると、素肌が空気にさらされる。
その温度差に、玲奈のつま先がわずかに揺れた。
ケイはその足をゆっくりとマットに戻し、視線を上へと辿る。
黒のTバックが腰の曲線に沿って細く残り、露わになった太ももとのコントラストが目に焼きつく。
胸元にはまだブラが残っているが、その下の呼吸は明らかに速くなっていた。
「……ねぇ……ケイって……呼んでいい?」
不意に掛けられた声。
その声に、ケイは一瞬だけ目線を落とす。
玲奈が、少し潤んだ瞳で見上げていた。
普段のあの強さが薄れて、どこか不安げで、でも心を差し出すような表情。
ケイは答えを言葉にせず、ただ静かに頷いた。
「……ケイ……」
彼女の口から名前を呼ばれるだけで、胸がざわついて、呼吸が浅くなる。
玲奈は、そっと胸元に触れて言った。
「……ねぇ、玲奈って、呼んで」
その言葉にケイはふっと笑みを浮かべ、ほんの少し熱を帯びた声で応えた。
「……玲奈」
ただ名前を呼んだだけなのに、触れた指先よりも、心の奥に響いた。
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