13 / 19
第二章 沈む身体、揺れる心
🩷12話 終わりじゃないよね?
しおりを挟む荒く上下していた胸が、ようやく静かに沈みはじめた。
熱と力を出し切った満足感の奥で、どこか不意を突かれるような、ざわつきが胸に残っている。
玲奈は、まだ腕の中にいる。
ゆっくりと体をずらしながら、そっとケイの頬に額を寄せた。
「……ねぇ」
吐息混じりの声が、耳の奥にぬるく流れ込んでくる。
「……もう、満足した?」
小さく笑うその表情に、ケイは思わず唇の端を上げた。
「……玲奈は?」
問い返すと、玲奈はわずかに唇を噛み、それから、濡れた髪をかきあげるように後ろに払った。
「……まだ、かな」
そう言って、ケイの首筋に指を這わせる。
ふいに手がケイの胸を押し、そのままごく自然な動きで体をずらしていく。
けれど、まだ十分に回復しきっていない身体は、わずかに重たく沈んだままだった。
玲奈は一瞬だけ、ケイの様子を見つめる。
その視線の熱が、どこか強引さとは違う、確認のように優しく滲んでいた。
「……まだ、無理?」
低く、囁くような声。
ケイがゆっくりと首を横に振ると、玲奈はふっと吐息を漏らし、シーツの上で身体を少しずつずらしていく。
ぬるんだ肌が触れ合うたびに、火が点いたように感覚が戻っていく。
「じゃあ……」
玲奈がそっと、腰をずらしながらケイをまたいだ。
けれどそれは、すぐに動き出すためではなかった。
ただ、目の前で、もう一度彼を抱きしめるように、自分の胸を押し当てる距離だった。
「……私にさせて?」
囁いたその声は、甘えるような、でもどこか強く訴えるような音を含んでいた。
ケイが頷くと、玲奈はゆっくりと自分の動きで、再び交わりの熱を生み出し始めた。
最初は、浅く。
ただ深く息を吸いながら、彼女自身が確かめるように。
「……あ、っ……」
すぐに指先が震えはじめ、身体が自分のリズムに追いついてくる。
吐息の間隔が狭まり、ケイの下腹に触れるたびに、玲奈の瞳が潤んでいくのがわかった。
けれど、やがてケイの手が玲奈の背をなぞるように持ち上げる。
腰を支え、包むようにして彼女の身体をゆっくりと転がした。
「……交代」
その一言に、玲奈は目を細めて小さく頷く。
ベッドの中央に広がる髪。
額には汗が滲み、肌はほんのりと赤く上気している。
「……入れて……」
玲奈の声が、くすぐったそうに震えた。
ケイは片腕で体を支えながら、ゆっくりと沈んでいく。
奥を押し分けられる感覚に、玲奈の腰がわずかに逃げる。
それでも目は逸らさない。
確かめ合うように抱き合うたび、熱が重なっていく。
「……っ、ん……ケイ……」
声に抑えがきかず、シーツを握る指先が震える。
ケイの動きは次第に深く、速く、一定のリズムで揺れていった。
肌が打ち合う音と、荒くなる息。
それでも玲奈は受け入れ続ける。
言葉はもう、うまく出せなかった。
ただ小さな声と、潤んだ瞳の揺れがすべてを語っていた。
やがて、ケイの動きがわずかに重くなる。
耳元で低くかすれる声。
「……お腹に……いい?」
その一言に、玲奈はまつげを伏せる。
胸の奥に切なさが走った。
奥で受け止めたい衝動と、背徳に揺れる理性がせめぎ合う。
それでも、小さく頷いた。
「……いいよ」
声は震えていた。
同時にケイの身体が大きく震え、奥に深く沈んだまま熱が解き放たれていく。
「……っ、う……っ」
堪えきれずに漏れた声が、玲奈の耳元をかすめた。
ドクドクと脈打つたびに、玲奈の中が熱で満たされていく。
「……あっ、ん……」
声がこぼれ、背中が小さく弓なりに反る。
ケイの腕にしがみつきながら、そのすべてを受け止めていた。
欲しかった熱を抱きしめながらも、胸の奥ではまだどこか、切なさが疼いていた。
しばらく、絡まったまま息を整える。
玲奈がゆっくりとケイの胸から身を離し、ベッドの端に腰を下ろす。
髪をかき上げて、軽く首を傾けた。
そして、少しだけ間を置いて──
ふっと目を細め、ぽつりと呟く。
「……やっぱり、あなたずるい」
笑っているようで、どこか拗ねたような声。
でも、怒ってるわけじゃない。
諦めとも、甘えともつかないその響きに、ケイは何も返せなかった。
沈黙のなか、玲奈がゆっくりと立ち上がる。
そっとシーツを引き寄せて、胸元を隠すように巻く。
「……シャワー、先借りるね」
視線は合わせないまま、けれど背筋はまっすぐに。
浴室へ向かう玲奈の背中を、ケイはしばらく見送っていた。
32
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる