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25.年長者の独白(シオンside)
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「僕が言うのも何だが、君みたいな年頃の娘は街へ出たがるものではないのか?」
「年頃の娘って…シオンさんって時々すごくお年寄りめいた言い回しをしますよね」
「いや、魔素に当てられてなのか、長らく容姿に変化がないんだ。だから事実、君からすると僕はかなりの年寄りだと思うぞ」
「ええ!? 初耳ですよ!?」
「初めて言ったからな。──だからまぁ、君のことはどうしても……」
「どうしても…?」
「……可愛い娘のような目で見てしまう」
「初耳です!」
「初めて言ったからな」
「娘……娘かぁ……」
「……嫌だっただろうか」
「いいえ、嬉しくて──ちょっと擽ったいです。
街への憧れはありませんよ。恋も、もうしないと思いますし……今はこうして静かに研究に時間を費やすのが幸せです」
そう穏やかに笑った彼女が、何か傷を抱えてここまで辿り着いたのだろうということは、何となく察せられた。
平気そうにしながらも、未だそこから立ち直れていないことも──まぁこれは、もしかしたら彼女自身気付けていないのかもしれないが。
何にせよ、この森が安らぎの地であると言うのなら、いつまででもいればいい。僕もその方が嬉しい。
魔の森に籠る僕の神経に同調する者などこれまでいなかった。
元々人付き合いは得意な方ではない。建前などは苦手だ。人の多い場所も、好ましくない。
肩書なんておまけ程度に捉えて、これまでもこれからも一人で気ままに生きていく、そんなつもりでいたけれど。
好ましい隣人が現れたのは予想外の幸運だった。
彼女はこの森に吹いた新しい風だ。
柔らかく、寄り添うように穏やかに流れる。
人と共にある喜びを始めて教えられた。
彼女と過ごす時間は、幸せという言葉がしっくりとくる。とても得難い感情だ。
だから僕も、ただリリの幸せを願っている。
「年頃の娘って…シオンさんって時々すごくお年寄りめいた言い回しをしますよね」
「いや、魔素に当てられてなのか、長らく容姿に変化がないんだ。だから事実、君からすると僕はかなりの年寄りだと思うぞ」
「ええ!? 初耳ですよ!?」
「初めて言ったからな。──だからまぁ、君のことはどうしても……」
「どうしても…?」
「……可愛い娘のような目で見てしまう」
「初耳です!」
「初めて言ったからな」
「娘……娘かぁ……」
「……嫌だっただろうか」
「いいえ、嬉しくて──ちょっと擽ったいです。
街への憧れはありませんよ。恋も、もうしないと思いますし……今はこうして静かに研究に時間を費やすのが幸せです」
そう穏やかに笑った彼女が、何か傷を抱えてここまで辿り着いたのだろうということは、何となく察せられた。
平気そうにしながらも、未だそこから立ち直れていないことも──まぁこれは、もしかしたら彼女自身気付けていないのかもしれないが。
何にせよ、この森が安らぎの地であると言うのなら、いつまででもいればいい。僕もその方が嬉しい。
魔の森に籠る僕の神経に同調する者などこれまでいなかった。
元々人付き合いは得意な方ではない。建前などは苦手だ。人の多い場所も、好ましくない。
肩書なんておまけ程度に捉えて、これまでもこれからも一人で気ままに生きていく、そんなつもりでいたけれど。
好ましい隣人が現れたのは予想外の幸運だった。
彼女はこの森に吹いた新しい風だ。
柔らかく、寄り添うように穏やかに流れる。
人と共にある喜びを始めて教えられた。
彼女と過ごす時間は、幸せという言葉がしっくりとくる。とても得難い感情だ。
だから僕も、ただリリの幸せを願っている。
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