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第5章 ヤーベ、地元のピンチに奮い立つ!
第39話 町を守るために出陣しよう
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「お、お前の手勢だけで打って出るだと!」
ゾリアが大声を上げる。
まあ、一万の魔物を自分たちだけでどうにかする、と言っているようなものだがらな。驚かれるのも無理はないか。
「しかも、打って出るということは、この町の外壁を盾に防御しながら対応する、ということでなく、平原で一万の魔物に真っ向正面から当たるってことか!?」
信じられないという表情を浮かべて捲くし立てるゾリア。
「そう言う事だな」
「いくら何でも自殺行為では?」
代官のナイセーもさすがに無理があると思ったのか、疑問を呈する。
そりゃそうだよな・・・。
実際の所、一万ってどーなのよ?と自分でも思わないではない。
だが、どう考えてもこの町に一万の魔物が押し寄せて来たら、今までの平和な生活は崩壊するだろう。俺はそれを許容できない。
・・・所詮ノーチートのスライム野郎でしかない俺が、一万もの魔物をどうにか出来る・・・それは思い上がりでしかないのかもしれない。うまくいかないかもしれない・・・。でもまだわずかしか滞在していないが、この町の人々が好きだ。そして、カソの村の人々も好きだ。なら、そんな人たちが笑って生活して行けるよう、脅威は排除せねばなるまいよ。
「うまくいくかどうかはわからないが・・・比較的直進的に向かって来てくれるのであれば、策がないわけでもない。尤も、万一を考えると、当然この町の外壁で防御戦を行えるよう準備はしておいてもらった方がいいと思うけどな」
「その言い分だと、うまくいけば魔物はこの町に魔物が来ないように聞こえるが?」
ゾリアが俺を見つめる。
「そうだな、気持ち的には一匹たりとも魔物を通すつもりはない」
言い切る俺・・・カッコイイ?
隣を見ればイリーナが真剣な目でこちらを見ている。
・・・てっきり両手を胸の前で組んで目をハートにでもして感動しているかとばかり思ってたのに。まあ、ここでクッダク出されても困りますからねー。
「具体的にはどのような戦略で?」
ナイセーはこの町を取りまとめて来た代官だ。実務に長けた人間であるだけに、具体的な方法がわからないと納得できないだろう。だが・・・。
「俺様必殺の魔法?で、みたいな?」
「なんだそりゃ」
あきれ顔のゾリア。
「それでは安心してお任せすることが出来ませんよ・・・」
代官のナイセーも顔を顰める。
「もちろんこの町を救って頂けるのであれば、それに見合った報酬も用意せねばなりません。特に一万もの魔物の襲来という未曽有の危機を救ってくださるというのですから、その報酬は莫大なものになるでしょう。そしてこの町を救った英雄としての地位も。それらは、一万の魔物を退けたという結果が必要です」
一万の魔物を退けたという結果・・・。
この言葉の意味は深くて重い。
俺という存在を示す意味で、一万もの魔物を退けられるという存在がどういうものか。
筋肉馬鹿っぽいゾリアと違い、このナイセーは町を預かる代官だ。
この<迷宮氾濫>も領主やその上の王都へある程度正確な報告が必要だろう。その時、俺という存在はどのように映るのか・・・。
「それに関して、相談というか、提案がある」
「何だ?」
「何でしょう?」
同時に口を開くゾリアとナイセー。案外この二人仲がよかったりしてな。
「俺は自分の手の内というか、能力をある程度秘密にしておきたい。だから自分の手勢だけで打って出ると提案した理由もそこにある。だが、俺が迎撃に出た後「魔物を討伐した」と言って帰って来たとして、討伐した魔物が全く残っていなければ、現実として討伐が完了したかどうか判別は出来るか?」
「ま、魔物が全く残っていない・・・だと?」
「それは・・・、基本的には依頼完了、と判断できかねる事象ですね・・・」
そうだよね、証拠となる一万もの魔物が残っていないんだもの。
「だが、現実として多くの魔物がこの町へ押し寄せてきているわけだ。魔物の迎撃は必須・・・。だが、一万と正確に魔物の規模を把握しているのはここにいる俺たちだけだ。それならば、処理はともかく、報告はやりようがあるだろう?」
「・・・どういうことだ?」
ゾリアは意味が分からないと言った表情でナイセーに聞く。
「つまり、報告は一万という規模を隠し、もっと小規模な氾濫として対処出来た事にする、という事でしょうか。あなたという存在を隠したまま」
「ご名答」
俺は魔導士の杖で床をコツンと鳴らすように突いた。
「・・・ですが、それでは一万の魔物を退けた英雄としての結果を隠すのと同じことです。報酬も栄誉も無くなるということですよ?」
「おいおい、無報酬で働けってのかよ!?」
冒険者ギルドのギルドマスターであるゾリアが厳しい表情をナイセーに向ける。
こういうところは単純なゾリアに好感が持てるけどな。俺も一応だがギルドに登録している身だし、報酬無しで冒険者が働くという事は容認出来ない・・・という事だろう。
「むろん、さすがに無報酬というわけにはいかないと思いますが・・・。一万という魔物の規模を隠す以上、それに見合う報酬はもちろん出せません。そして、結果を確認するための魔物そのものが存在しない状況では、<迷宮氾濫>の被害を防いだ英雄としての評価も出来ない・・・ということになりますが」
「一体、魔物の存在を残さないって、どうするんだ? 極大呪文でもぶっ放して消し炭にでも変えちまうってか」
「ナイセーの言う通り、一万という規模の魔物を仕留めるという報酬は事実を隠す以上無理がある事は承知できる。元々英雄なんて立場に興味もないし、それも問題ない。後は<迷宮氾濫>の魔物たちを仕留めたことをどう確認してもらうかという事と、お前達二人が俺の事を誰にも話さないという言質を取ってから出陣したいという俺の希望を叶えてもらえるかどうかだな」
「なに?」
「・・・やはり、あなたは自分自身の存在を領主や国王に知られるとやっかいだ・・・とお考えなのですね」
ナイセーは溜息を吐く。
「なぜだ? 町を救う英雄だろうがよ! それこそ王都で国王様から褒美が賜われるかもしれない規模の災害だぞ!」
「だから、それが不要だと言っているんだよ、ゾリア」
「だから何故だ! 男なら誰しもが英雄に伸し上がる事を夢見るはずだ! これはチャンスなんだぞ、ヤーベ!」
力強く語るゾリア。きっと正道を駆け抜けて来たであろうゾリアの言葉は重く響く。
だが・・・。
「まあ、なんだ。お偉い方々からすれば、異質な力は不気味に映るものだよ。その力がどこへ向くのか・・・とか、益体も無い事を考えてしまいがちなものさ。ならば、最初からそんな力があると知られない方がリスクは少なくなるということだ」
「・・・・・・」
ゾリアは沈黙した。目の前に映るこの俺が、いかに怪しく見えるか。ローブをすっぽりかぶり、その姿を見せることはない。そして、一万の魔物を迎撃すると宣う。
「・・・俺がこの国の王ならば、お前を宮廷魔術師に迎えるんだがな」
ふっと苦笑するように言うゾリア。俺という存在のリスクを少し感じたような苦笑いだな。
「もし、辺境伯や国がお前に何か良からぬことをしようと企むなら、俺がお前の味方に付いてやるぜ。何といっても誰にも言えなくてもお前はこの町を救う英雄になるんだろうからな!」
ゾリアが今度は悪ガキが悪戯でも思いついたような悪そうな笑顔を浮かべる。
「そうならないために、彼は私とあなたにその秘密の一端を話してくれたんだと思いますがね」
今度はナイセーが苦笑しながら言う。どうやらナイセーには正しく俺の気持ちが伝わったようだ。後は彼が俺という存在をどう評価するか、だな。
「領主様と王国への報告は結果だけを伝えて、うまくあなたの事を隠しておきます。尤も、分かる人間がみれば、必ず調査が入るでしょうから、そうなれば冒険者ギルドの助力を得た、という事にしますので、ゾリアからもうまい説明協力をお願いしますよ」
「俺かよ!?」
「逆にあなた以外の誰がいるというのですか・・・」
ゾリアの驚きに呆れた声で返すナイセー。
「ところで、私も今気が付いたのですが・・・」
「どうした?」
俺とゾリアはナイセーに視線を移す。
「彼女はよろしいのですか?」
そうナイセーの指さす方向には・・・ローガに半分ほど埋まったままモフモフし続けていた副ギルドマスターのサリーナが。
「うおうっ!?」
「サリーナ、そんなところにいたのか! そういや話に夢中になってたけど、サリーナの気配がいつの間にか全くしなくなってたな」
「ふえっ?」
やっとローガから顔を上げるサリーナ。
「ローガ、ずっとモフモフされてたのか? 何なら声を掛けてくれればよかったのに」
『ボスが非常に重要な話をされていると思いましたので・・・』
若干サリーナに困ったような表情を浮かべながら気を使ってくれていたローガ。そりゃ悪かったね。
「で、我々の言質は取るとして、彼女はどうします?」
俺に意味ありげな笑みを浮かべて聞いてくるナイセー。
副ギルドマスターであるサリーナはギルドマスターであるゾリアの指示に従うんでないかい?
「サリーナよ、それで・・・」
話しかけたゾリアの言葉を遮るサリーナ。
「ヤーベ殿は素晴らしい人物。それだけです。私にはそれだけで十分です。モフモフは正義なのです! ローガ殿の主人ならば悪い人であるわけがないのです!」
えらく力説してくれるサリーナ嬢。
・・・まあなんだ、ありがたいですが。これもローガのおかげ・・・かな?
「わふっ(恐縮です!)」
笑顔で答えるローガ。出来る部下を持つと安心感が違うな。
「それでは、最後に・・・。我々としましては、町への脅威が完全に無くなった事をどうしても目で確認したいのです。つきましては、魔物を持ち帰れないという事であれば、ギルドマスターのゾリアを同行させてください。さっきの言葉にあったように、ゾリアはあなたを信頼しており、場合によっては領主や国と比べてもあなたを指示すると言っている。であれば、あなたの見せたくない手の内とやらを見ても、あなたに不利益になるような事はしないでしょう。どうです?」
ナイセーは問いかけてくる。そうだな、どうしても魔物の消滅を目で確認しないと安心できないわな。ゾリアなら・・・そうだな、遺失の魔法、とか、特別なスキル・・・とか、何とか説明を付けるか。納得しなきゃ・・・唐揚げで釣るか。
「おおっ! 任せておけ! ヤーベ、お前に命を預けるぞ!」
バンバンと俺の肩?あたりを叩くゾリア。
さて、お目付け役付きとなったが、この町を守るために出陣するとしましょうか!
ゾリアが大声を上げる。
まあ、一万の魔物を自分たちだけでどうにかする、と言っているようなものだがらな。驚かれるのも無理はないか。
「しかも、打って出るということは、この町の外壁を盾に防御しながら対応する、ということでなく、平原で一万の魔物に真っ向正面から当たるってことか!?」
信じられないという表情を浮かべて捲くし立てるゾリア。
「そう言う事だな」
「いくら何でも自殺行為では?」
代官のナイセーもさすがに無理があると思ったのか、疑問を呈する。
そりゃそうだよな・・・。
実際の所、一万ってどーなのよ?と自分でも思わないではない。
だが、どう考えてもこの町に一万の魔物が押し寄せて来たら、今までの平和な生活は崩壊するだろう。俺はそれを許容できない。
・・・所詮ノーチートのスライム野郎でしかない俺が、一万もの魔物をどうにか出来る・・・それは思い上がりでしかないのかもしれない。うまくいかないかもしれない・・・。でもまだわずかしか滞在していないが、この町の人々が好きだ。そして、カソの村の人々も好きだ。なら、そんな人たちが笑って生活して行けるよう、脅威は排除せねばなるまいよ。
「うまくいくかどうかはわからないが・・・比較的直進的に向かって来てくれるのであれば、策がないわけでもない。尤も、万一を考えると、当然この町の外壁で防御戦を行えるよう準備はしておいてもらった方がいいと思うけどな」
「その言い分だと、うまくいけば魔物はこの町に魔物が来ないように聞こえるが?」
ゾリアが俺を見つめる。
「そうだな、気持ち的には一匹たりとも魔物を通すつもりはない」
言い切る俺・・・カッコイイ?
隣を見ればイリーナが真剣な目でこちらを見ている。
・・・てっきり両手を胸の前で組んで目をハートにでもして感動しているかとばかり思ってたのに。まあ、ここでクッダク出されても困りますからねー。
「具体的にはどのような戦略で?」
ナイセーはこの町を取りまとめて来た代官だ。実務に長けた人間であるだけに、具体的な方法がわからないと納得できないだろう。だが・・・。
「俺様必殺の魔法?で、みたいな?」
「なんだそりゃ」
あきれ顔のゾリア。
「それでは安心してお任せすることが出来ませんよ・・・」
代官のナイセーも顔を顰める。
「もちろんこの町を救って頂けるのであれば、それに見合った報酬も用意せねばなりません。特に一万もの魔物の襲来という未曽有の危機を救ってくださるというのですから、その報酬は莫大なものになるでしょう。そしてこの町を救った英雄としての地位も。それらは、一万の魔物を退けたという結果が必要です」
一万の魔物を退けたという結果・・・。
この言葉の意味は深くて重い。
俺という存在を示す意味で、一万もの魔物を退けられるという存在がどういうものか。
筋肉馬鹿っぽいゾリアと違い、このナイセーは町を預かる代官だ。
この<迷宮氾濫>も領主やその上の王都へある程度正確な報告が必要だろう。その時、俺という存在はどのように映るのか・・・。
「それに関して、相談というか、提案がある」
「何だ?」
「何でしょう?」
同時に口を開くゾリアとナイセー。案外この二人仲がよかったりしてな。
「俺は自分の手の内というか、能力をある程度秘密にしておきたい。だから自分の手勢だけで打って出ると提案した理由もそこにある。だが、俺が迎撃に出た後「魔物を討伐した」と言って帰って来たとして、討伐した魔物が全く残っていなければ、現実として討伐が完了したかどうか判別は出来るか?」
「ま、魔物が全く残っていない・・・だと?」
「それは・・・、基本的には依頼完了、と判断できかねる事象ですね・・・」
そうだよね、証拠となる一万もの魔物が残っていないんだもの。
「だが、現実として多くの魔物がこの町へ押し寄せてきているわけだ。魔物の迎撃は必須・・・。だが、一万と正確に魔物の規模を把握しているのはここにいる俺たちだけだ。それならば、処理はともかく、報告はやりようがあるだろう?」
「・・・どういうことだ?」
ゾリアは意味が分からないと言った表情でナイセーに聞く。
「つまり、報告は一万という規模を隠し、もっと小規模な氾濫として対処出来た事にする、という事でしょうか。あなたという存在を隠したまま」
「ご名答」
俺は魔導士の杖で床をコツンと鳴らすように突いた。
「・・・ですが、それでは一万の魔物を退けた英雄としての結果を隠すのと同じことです。報酬も栄誉も無くなるということですよ?」
「おいおい、無報酬で働けってのかよ!?」
冒険者ギルドのギルドマスターであるゾリアが厳しい表情をナイセーに向ける。
こういうところは単純なゾリアに好感が持てるけどな。俺も一応だがギルドに登録している身だし、報酬無しで冒険者が働くという事は容認出来ない・・・という事だろう。
「むろん、さすがに無報酬というわけにはいかないと思いますが・・・。一万という魔物の規模を隠す以上、それに見合う報酬はもちろん出せません。そして、結果を確認するための魔物そのものが存在しない状況では、<迷宮氾濫>の被害を防いだ英雄としての評価も出来ない・・・ということになりますが」
「一体、魔物の存在を残さないって、どうするんだ? 極大呪文でもぶっ放して消し炭にでも変えちまうってか」
「ナイセーの言う通り、一万という規模の魔物を仕留めるという報酬は事実を隠す以上無理がある事は承知できる。元々英雄なんて立場に興味もないし、それも問題ない。後は<迷宮氾濫>の魔物たちを仕留めたことをどう確認してもらうかという事と、お前達二人が俺の事を誰にも話さないという言質を取ってから出陣したいという俺の希望を叶えてもらえるかどうかだな」
「なに?」
「・・・やはり、あなたは自分自身の存在を領主や国王に知られるとやっかいだ・・・とお考えなのですね」
ナイセーは溜息を吐く。
「なぜだ? 町を救う英雄だろうがよ! それこそ王都で国王様から褒美が賜われるかもしれない規模の災害だぞ!」
「だから、それが不要だと言っているんだよ、ゾリア」
「だから何故だ! 男なら誰しもが英雄に伸し上がる事を夢見るはずだ! これはチャンスなんだぞ、ヤーベ!」
力強く語るゾリア。きっと正道を駆け抜けて来たであろうゾリアの言葉は重く響く。
だが・・・。
「まあ、なんだ。お偉い方々からすれば、異質な力は不気味に映るものだよ。その力がどこへ向くのか・・・とか、益体も無い事を考えてしまいがちなものさ。ならば、最初からそんな力があると知られない方がリスクは少なくなるということだ」
「・・・・・・」
ゾリアは沈黙した。目の前に映るこの俺が、いかに怪しく見えるか。ローブをすっぽりかぶり、その姿を見せることはない。そして、一万の魔物を迎撃すると宣う。
「・・・俺がこの国の王ならば、お前を宮廷魔術師に迎えるんだがな」
ふっと苦笑するように言うゾリア。俺という存在のリスクを少し感じたような苦笑いだな。
「もし、辺境伯や国がお前に何か良からぬことをしようと企むなら、俺がお前の味方に付いてやるぜ。何といっても誰にも言えなくてもお前はこの町を救う英雄になるんだろうからな!」
ゾリアが今度は悪ガキが悪戯でも思いついたような悪そうな笑顔を浮かべる。
「そうならないために、彼は私とあなたにその秘密の一端を話してくれたんだと思いますがね」
今度はナイセーが苦笑しながら言う。どうやらナイセーには正しく俺の気持ちが伝わったようだ。後は彼が俺という存在をどう評価するか、だな。
「領主様と王国への報告は結果だけを伝えて、うまくあなたの事を隠しておきます。尤も、分かる人間がみれば、必ず調査が入るでしょうから、そうなれば冒険者ギルドの助力を得た、という事にしますので、ゾリアからもうまい説明協力をお願いしますよ」
「俺かよ!?」
「逆にあなた以外の誰がいるというのですか・・・」
ゾリアの驚きに呆れた声で返すナイセー。
「ところで、私も今気が付いたのですが・・・」
「どうした?」
俺とゾリアはナイセーに視線を移す。
「彼女はよろしいのですか?」
そうナイセーの指さす方向には・・・ローガに半分ほど埋まったままモフモフし続けていた副ギルドマスターのサリーナが。
「うおうっ!?」
「サリーナ、そんなところにいたのか! そういや話に夢中になってたけど、サリーナの気配がいつの間にか全くしなくなってたな」
「ふえっ?」
やっとローガから顔を上げるサリーナ。
「ローガ、ずっとモフモフされてたのか? 何なら声を掛けてくれればよかったのに」
『ボスが非常に重要な話をされていると思いましたので・・・』
若干サリーナに困ったような表情を浮かべながら気を使ってくれていたローガ。そりゃ悪かったね。
「で、我々の言質は取るとして、彼女はどうします?」
俺に意味ありげな笑みを浮かべて聞いてくるナイセー。
副ギルドマスターであるサリーナはギルドマスターであるゾリアの指示に従うんでないかい?
「サリーナよ、それで・・・」
話しかけたゾリアの言葉を遮るサリーナ。
「ヤーベ殿は素晴らしい人物。それだけです。私にはそれだけで十分です。モフモフは正義なのです! ローガ殿の主人ならば悪い人であるわけがないのです!」
えらく力説してくれるサリーナ嬢。
・・・まあなんだ、ありがたいですが。これもローガのおかげ・・・かな?
「わふっ(恐縮です!)」
笑顔で答えるローガ。出来る部下を持つと安心感が違うな。
「それでは、最後に・・・。我々としましては、町への脅威が完全に無くなった事をどうしても目で確認したいのです。つきましては、魔物を持ち帰れないという事であれば、ギルドマスターのゾリアを同行させてください。さっきの言葉にあったように、ゾリアはあなたを信頼しており、場合によっては領主や国と比べてもあなたを指示すると言っている。であれば、あなたの見せたくない手の内とやらを見ても、あなたに不利益になるような事はしないでしょう。どうです?」
ナイセーは問いかけてくる。そうだな、どうしても魔物の消滅を目で確認しないと安心できないわな。ゾリアなら・・・そうだな、遺失の魔法、とか、特別なスキル・・・とか、何とか説明を付けるか。納得しなきゃ・・・唐揚げで釣るか。
「おおっ! 任せておけ! ヤーベ、お前に命を預けるぞ!」
バンバンと俺の肩?あたりを叩くゾリア。
さて、お目付け役付きとなったが、この町を守るために出陣するとしましょうか!
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