エンプティ

終わるはずだったサッカー

ゲキ難リベロ

「ちがーう！そこは上がらなくていい！」

なんだよあのクソジジイ何が違うんだよ

俺はリベロと言われてから馬鹿みたいにコートを走り回る日々を過ごしていた

「今だ！上がれー！」

「へい！越知！」

「おっけー」

完璧に足元にパスがくる

ペナルティエリアの少し外そこからロングボールの要領で上隅を狙って打つ

シュートは左のサイドネットに突き刺さった

「ナイシュー！」

リベロと言われてからきついが部活が楽しい

レギュラーの奴らとも少しずつ仲良くなってきている

明日は龍雲高校との練習試合だ

しかもウチと県代表を奪い合うぐらいの強豪だ

ウチの音山高校は高校選手権を5回優勝しているが去年は龍雲に負けてしまった

だから、この練習試合は勝ち負けが普通よりも大きい

「やばい7時からなのに5時に起きてしまった」

今日は因縁の対決だから負けられない

CBはミスをすると失点に直結しかねないポジションだ

だから、失敗は許されない

「数日前までベンチ外だったやつが出来る事じゃねぇーよ」

けど、練習試合前のメンバー発表で安心した

良かった～ベンチだけどスタメンじゃない

完全にベンチ外の奴の思考でだ

「葵アップしっかりしとけよ」

「はい！わかりました！」

さ、じゃベンチから高みの見物でもしますか

おそらく俺と変わるだろう佐藤にボールが行った

一人抜き綺麗なスルーパス

越知が追いつき広瀬にパス
キーパーは越知側によっておりDF（ディフェンダー）までもが越知のいる左側によっていた

フリーで足元にボールを受け、キーパーのいないゴールにボールを蹴り入れる

完璧に崩してとった一点

しかも、起点は佐藤だ

これは今日俺は出ても一試合ぐらいかもしれない

「よし」

「どうした？」

「え？いや、あの、その一点とってやったって」

「おぉ、そうか後半から葵出すからな
そろそろアップしとけ」

マジか～想定より5倍程早いアップだ

マジかよ

そして、そのまま1ー0の状態で佐藤と交代させられた

「頼むぞ、葵負けんなよ」

やめて～そんなプレッシャーをかけないでくれ

後半キックオフ

右サイドから敵が攻め上がってくる

二人抜かれた

縦に上がってクロスだ！

予想通り相手は縦にあがりクロスかと思った

クロスではなくペナルティエリア半歩外の選手にパスをした

その選手のミドルシュートが綺麗に決まってしまった

後半10分　1ー1

この時間帯での追いついた側と追いつかれた側になるのは厳しい

すぐにリスタートする

越知がボールをロストした

たが、そのカバーは俺が既にしている

ボールを奪いすぐにロングボールをサイドに蹴り込んだ

広瀬が縦に突破していく

「葵！」

監督の呼びかけで全速力で上がったいく

既に、他のエリア内にいる奴らはマークをつかれていた

「広瀬！」

俺が急に上がってきた事でノーマークでクロスがきた

ヘディングするとクロスバーに跳ね返り
越知が押し込もうとシュート相手キーパーに当たり俺のところに転がってきた

「エンプティ」

そう無意識に呟きながら俺はシュートを放った

キーパーが立ち上がるより先にネットが揺れた

後半25分

2ー1

その試合はその後特に何もなく勝利で終わった