たんぽぽ 信一・維士

みー

文字の大きさ
9 / 46
維士 高校卒業

2006年 維士

しおりを挟む


 前の席のヤツと勘違いした人が購入者だった。
返金要求者でも文句を言う人でもなかったので了承してしまったが、もう3回も毎週金曜日会っている。

 僕からは聞くことがない、まだ名前も仕事知らない、僕の名前も聞いてこない、本当の暇潰しのようだ、たわいのない話だけだ。

「夏休みに入るので、ひと月は駅を利用しませんので会えません」と僕が言ったら、

「あっ夏休みかぁ、会えないの残念だな」と笑いながら言ってた。

 帰りの電車で、僕は何をしているのか考えた。高額購入者へのアフターサービスのつもりか、名前も知らない人に惹かれているのか、どう考えてもわからなかったので考えるのをやめて、僕は受験生だと自分に言い聞かせた。

 夏休み中にも、僕の住んでいる町を見たいと、メールが来たが断った。その後も全て断った。

2007年 僕は大学が決まった。
前の席のヤツが、

「お互い合格おめでとうな、同じ大学だな」って卒業式の日言ってくれた。

「そうだね」と僕は返した。

 もう会う事がないと思っていた購入者さんからメールが来た。

(卒業おめでとう お祝いあげたいのでいつ頃会えるかな 都合の良い日時教えてください)

(いりません)と返したいが、何度も誘ってくれて全て断った負い目が少しあったので、

(明日 17時にマックで  ドク)と返した。

明日は最後の登校日だった、移動の先生方のお別れ会で、卒業式も終わっているので私服登校だ、

(ありがとう 待ってる)と返ってきた。

 次の日マックで会った、だいぶ顔色が悪いが聞かなかった。

「コレ、お祝い」と袋に入った箱をくれた。僕は話す事がないので、

「開けて良いですか」と聞いた、

「もちろん、どうぞ」と言われたので開けた、高級な腕時計だった。

 いつ頃か忘れたが、前の席のヤツが雑誌を見せてきて、この時計将来高級取りになったら、買う予定って言っていた時計だった。たしか200万円くらいだった。

 僕が黙っていると

「気に入らなかったかなぁ 、返されても困るから使って欲しいなぁ」と軽く笑いながら言ってきた。

 僕は高級腕時計を使える人間じゃない、僕の絵が高額だから勘違いしたのか
どうしたら良いか、困った。

「僕の家にきませんか 僕の絵をお礼にプレゼントします」と言ってしまった、

「えっ 良いの嬉しいなぁ 日時合わせせるよ」って言ったので「

「急ですが、明日どうですか」って僕が聞いたら

「明日行くね」と即答してくれた。

「12時に僕の町に付く電車あります、それに乗って来てください 駅で待ってます 細かい事は後でメールします」と僕が言ったら、

「わかった」と言って、

「今日は、コレ渡したっかっただけだから、帰るよ、後でメール待っている、あっおれ、田真信一って言うんだ」って言って帰って行った。

(田真 信一)名前を初めて知った、僕の心臓の奥がザワザワした、なんでだろうと思ったが、わからなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...