白い人形

幸輝

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夏祭り

30話

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 炎天下の中、僕は生気が抜けた顔で、キクは歌を口ずさみながら、僕の家に向かっていた。

「キク、いつもその歌歌ってるよね、何かの童謡?」

 キクは、この歌?、と歌うのを止め、僕を見る。

「キクね、元々はこの地域の人じゃないんだ。もっと北の方の雪国の方なの」
「へー、そうなんだ」

 キクは歌いながら思出話を始める。

「民謡、みたいな感じかな? 歌ってるとね、河童さんややまんばさんとか、妖怪が集まってくるから、歌うなって言われてたの」
「じゃあ歌っちゃだめじゃない!?」

 しれっと怖いことを言うキクに、僕は、いやいや、と思わず突っ込みを入れる。
 キクは、それにケラケラと笑って見せた。

「大丈夫だよー、ここの地域は河童さんとかやまんばさんとかいる気配ないし!」
「キク、気配わかるの?」
「なんとなーく、妖気? それは分かる!」
「そっか。実はね、僕も幽霊とかが見える体質なんだ。霊感? っていうのかな」
「へー、そうなんだ!」
「小さい時に、幽霊のおじさんに追いかけられて、泣きながら逃げたことあるってお母さんが言っててさ」
「妖怪と幽霊、似てるかもね!」

 喋りながら歩いていると、二匹の黒猫のカラスとツバメが二匹、木陰で休んでいた。

「あ! 二匹も遊びに行って大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」

 僕が返答すると、言葉を理解しているかのように、二匹の黒猫は、キクの白い着物の裾に寄り添って歩き始めた。
 僕の家までは、あと少しだった。
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