白い人形

幸輝

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夏祭り

31話

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「ただいまー、お母さんいるー? キク連れてきたよー」
「お邪魔しまーす……」

 二人が家の中に入って間もなく、母親が出てきた。

「あぁ、あのお人形をくれた子?」
「うん、この子、キクちゃん」
「あらー、可愛い子ね! どうぞ、今麦茶持っていくからねー」

 僕は、思った反応と違っていて、拍子抜けした。
 僕の考えでは、霊感のないお母さんなら、キクの姿は見えないはず、と踏んでいたからだ。
 しかし、この反応だと、お母さんにもキクが見えている様子。
 予想外な展開であった。
 キクは、草履を脱ぎ、家の中に僕よりも早く上がる。
 考えてみれば、足もある、幽霊は足がないと聞くし、と、僕はキクが幽霊だった線を一度断ち切らざるを得なかった。
 僕の部屋に入ると、キクは久々に自分そっくりの日本人形を発見した。

「ちゃんと飾っててくれてるね!」
「そりゃ、綺麗だから飾って見ておかないと勿体ないよ」

 キク自身に言われているようで、えへへ、と照れ笑いをするキクである。

「でも……なんか、朝よりも髪の毛が伸びている気がする」

 朝、僕が最後に見た時は、この人形の白い髪の毛は、腰のあたりだったはず。
 だが、今は足首あたり、裾ぎりぎりのところに位置しているのだ。
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