好きな人がいまして

幸輝

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恋愛相談

お節介

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 月曜日、あのイケメンの彼は、また本を返して、新たな本を借りてきたようだ。
 頬杖をついて本を読む姿もまた画になる。
 しかし、様子を見る限り、この土日では進展がなかったようで、その表情は梅雨空同様のどんよりさである。
 俺は、ちょっと声でもかけてみるかと軽いノリで、彼の近くに行く。
 警戒心の強い猫のように、俺が近付くと、チラリと彼は俺を確認した。
「君、恋愛は本で学ぶよりも、実践の方が身になると思うぞ?」
 俺の言葉に本を読んだまま、彼は口を開く。
「余計なお世話です」
 俺はつっけんどんな彼に負けず続けた。
「そう言わないでさ、俺、恋愛経験豊富よ? 力になれると思うんだ」
「はぁ……」
 彼は大きく溜め息をつき、本を閉じた。
 明らかに嫌がられているようだが、俺は構わず続ける。
「見た感じ、俺とたいして年もかわらないし、話しやすいでしょ?」
 俺は周りを気にして図書室を見回してみる。
「今、図書室には俺と君しかいない訳だからさ。誰も聞いていないし、もちろん、俺も誰にも言わない」
 彼は我慢の限界がきたらしく、俺を睨みながら、ようやく口を開く。
「人の恋路に首を突っ込むだなんて、女子ですか? それとも、相当暇なんですね」
「暇なのは否定しないよ」
 やっと反応をしてくれたのが嬉しくなり、俺は彼の目の前に座って続ける。
「いいじゃん、減るもんでもないし。体験談を聞くのも、いい情報になると思うよ?」
 彼は俺の言葉に、また大きく溜め息をつくだけだった。
「まずはその溜め息! それはだめだな」
 その俺の言葉に、彼は「えぇ!?」と驚きながら立ち上がる。
 突然のアクションに俺は、思わず吹き出した。
「おぉ、どうしたどうした」
 今まで、ツンツンした態度しかとらなかったのに、この時初めて感情をあらわにしたのだ。
「突然なんでそんなに驚くんだよ」
 立ち上がったまま、彼はハッと我に返り、落ち着きを取り戻したようで席に着き、観念したように口を開くのであった。
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