お酒の力を借りまして~隠れイケメン陰キャの俺がお酒の力を借り、大学一の美人な酒豪彼女が出来ました~

小鳥遊

文字の大きさ
3 / 31
1章瓶 彼女との出会い

2杯目 そして根明 陽華は恋に落ちた

しおりを挟む
 大学の入学式当日。開始まで残り20分。私は今、窮地に立っていた。何故かって? 財布をどこかで落としてしまったみたいで。家を出てコンビニに寄り、駅に着いたこと。まではいいのだが、コンビニで買い物をした後で落としたのか、見当たらない。

 来た道を戻り探したが、見つかるわけもなく。仕方がないので駅に戻り、歩く人に助けを求めた。だが、日本人と言うのは優しくないらしく、立ち止まってくれる人はいなかった。

 声をかけてくれたと思ったら、お金と引き換えに私の体を求める人ばかり。もうダメだと思い、公衆電話の前で立ち尽くしてしまう。

 もう入学式は諦めよう。そう思ったその時だった。

「……あ、あのっ! ……さ、先ほどから困ってるように見えたのですが、どうされたんでしゅかっ……」

 少し年上に見える男性が声をかけてくれた。少し緊張したのか、噛んでいたがそんなのはどうでもいい。

「……実は、財布を落としてしまって……電車代がなく、大学の入学式に間に合わなそうでして……ぐすっ……ぅう……」

 私はありのままに全てを話した。その直後今まで堪えていたものが溢れ出した。彼は、そんな私を優しく宥め、静かに聞いてくれた。

 話を終えると、彼は鞄から財布を取り出し、1枚の1万円札を取り出して私に差し出す。

「…………ッ! こんなに沢山は受け取れません……!」

そう言う私の反対を押し退けて、彼はお金を渡して走り去っていった。そんな彼に、私はろくにお礼も出来ていなかったので大きな声で言う。

「ありがとうございます……! せめてお名前だけでも教えてください……!」

彼に届いたのか、彼は振り返りながら答えてくれた。

「……根暗 陰雄です」

とだけ言い、走り去る彼の背中を見ながら一言。

「必ず返しますから……! 後、私は根明 陽華ねあか はるかです!」

 朝の駅構内。周囲の騒音にかき消されて、彼には届かなかったのか彼は止まる事なく走りさった。

 彼に借りたお金で切符を買い、お釣りを大事に握りしめ、私も急いで大学へと向かった。

 結論から言うと、入学式には間に合った。これも全て彼のおかげ。

 入学式を終えた新入生である1回生はそれぞれの講義室へと案内された。
 私が講義室へ入ると、その部屋にいた人たちが皆こちらを向いた。
 そして私は気持ちが昂る。と言うのも、こちらを見る人たちの中に彼がいた。彼を見つけた私は、彼の元まで走っていき声をかける。

「根暗くん! ……その、さっきはありがとう! 明日必ず返すから!」

 そう。駅で私を助けてくれた、根暗くんが講義室の隅で一人座っていた。私を見た彼は、一瞬驚いた様に見えたが直ぐにこう言う。

「……あの。どちら様ですか……」

 その瞬間私は胸がちくりと痛くなった。
普段は誰かにこんな事を言われても痛くも痒くもないのだが……
 どうして彼に言われるとこんなに胸が痛いのだろう……

 その答えをこの時の私は、まだ知らなかった。

◇◇◇

 私は自室で今朝の胸の痛みについて調べていた。
 だがおかしな事に幾度調べても結果は同じ。『胸 ちくりと痛い』と調べても、もしかして恋? 等と出てくるのだ。

 私は、この歳まで恋をした事がない。だから、こと恋愛については初心者。仕方なく、親友に電話をかける。コールをすると直ぐに出てくれ、私は初めにこう会話を始める。

「もしもし? 朱里? こんな時間にごめんね。ちょっと相談があって……」

 神村 朱里かみむら あかり。彼女とは幼稚園の頃から一緒で、喧嘩することもあるけどなんでも言い合える幼馴染であり、親友。彼女は優しいので、こうして相談に乗ってもらうこともよくある。 
 朱里は、私から相談されるのが好きなのか嬉しそうな声で言う。

『大丈夫だよ! それよりどうしたの? はるから相談って珍しいね』
「実は────ってことがあって……」
『………………』

 私は事の経緯を説明した。すると朱里は、少しの間を置き私に。

『じゃあ、私の質問に答えてみて』
「え? なんで質問?」
『いいから! いくよ』
「う、うん……」
『その人が、他の女性と手を繋いだりそれ以上のことをしてたらどう思う?』
「……っえ? 根暗くんが……そんなの絶対に嫌!」
『じゃあ、気付いたら彼のこと考えてたり、講義室に沢山の人がいる中で、その人の声だけが耳に入ってくるって事はある?』
「……さっきからなんなのこの質問」
『いいから答えて!』
「それは……」

 私は、朱里の言った事を想像した。すると、どれも思い当たる節はあった。どうしてこんなに根暗くんのことばかり……なんて考えていると、朱里は言う。

『間違いないね。陽は、その人に恋してるよ』
「……っえ? なんでそうなるの?」
『だって、彼氏でもない人が他の女性と仲良くしてるのが嫌なんでしょ? それに、そんなにその人の事を考えてるみたいだし……」
「………………」
『あれ? おーい。陽ー?』

 朱里の言ったことで私は、顔が熱くなるのを感じた。

────そして、私は初めての恋に落ちたのだった。

 その後少し朱里と話して、通話を終了させた。彼への気持ちが恋だと知ってから……

 ずっと彼が頭の中に浮かんでいた。
 そしてこの夜は、眠りにつくことができなかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2025.11.25)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…

senko
恋愛
「一緒に、しよ?」完璧ヒロインが俺にだけベタ甘えしてくる。 地味高校生の俺は裏ではS級ハッカー。炎上するクラスの完璧ヒロインを救ったら、秘密のイチャラブ共闘関係が始まってしまった!リアルではただのモブなのに…。 クラスの隅でPCを触るだけが生きがいの陰キャプログラマー、黒瀬和人。 彼にとってクラスの中心で太陽のように笑う完璧ヒロイン・天野光は決して交わることのない別世界の住人だった。 しかしある日、和人は光を襲う匿名の「裏アカウント」を発見してしまう。 悪意に満ちた誹謗中傷で完璧な彼女がひとり涙を流していることを知り彼は決意する。 ――正体を隠したまま彼女を救い出す、と。 謎の天才ハッカー『null』として光に接触した和人。 ネットでは唯一頼れる相棒として彼女に甘えられる一方、現実では目も合わせられないただのクラスメイト。 この秘密の二重生活はもどかしくて、だけど最高に甘い。 陰キャ男子と完璧ヒロインの秘密の二重生活ラブコメ、ここに開幕!

処理中です...