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20 出航
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「おおっ。やっと戻ってきたのか。待ちくたびれておったグェッ」
外で待たせていたマルの首根っこを引っ掴み、俺は全速力で夜の路地裏を駆け抜けた。
「なにをするか!」
「いいから走れ」
それだけ言うと、俺はさっきまで走ってきた後方の道を指さす。
そこには手に手に武器を携え、地響きを立てて追いかけてくる船乗りの集団が、ぶっ殺すとかバラバラにして魚のエサにしてやるとか、口々に俺たちを罵りながら迫って来ていた。
「ヒイィィ~~ッ!? お前たちなにをしてきたのだ!? お、置いていくな!」
マルも俺たちに追従するように慌てて走り出す。
入り組んだ裏路地を走り回ったおかげか、船乗りの集団は俺たちを見失い、細い路地に置かれたゴミ箱に隠れることができた。
「く、臭いぞ……いつまでもこんなところにおれるか!」
【このゴミ箱内の臭気は長時間いると人体に有害な影響を及ぼします。現在、検出されている悪臭物質は腐敗臭、アンモニア臭、硫黄臭、加齢臭などです】
「今なんだか俺の悪口言わなかったか」
【あなたの加齢臭が有害であるなどとは間違っても言っていません】
「よーし、お前が張り付いてる生ゴミもここに捨てていってやる」
「戦士殿、今はおしゃべりをしている時ではない」
言い合いを続ける俺たちをたしなめ、フィノが今後の作戦を説明する。
「奴らは我々を見失い、今はむきになって探しているが、そのうち武装船に戻るはずだ」
「な、ならここでもう少し我慢していればやり過ごせるのだな?」
マルが鼻を押さえながら聞き返す。
「いや、それは逆だ。武装船に戻ったら奴らは船の中で守りを固めるだろう。操舵室の鍵がここにあっても、船を出すのは困難になる。そうなる前に奴らを振り切り、船を出航させるんだ」
「しかしどうやって振り切る? 」
「こうするのさ。――“フレア・トーチ”!」
フィノは手から火球を生み出し、今いる路地とは一区画離れた建物の上空に投げる。
高く上がったところで火球が弾け、光と音をまき散らした。
散らばって路地裏を探していた船員たちは、火花が散った場所に俺たちがいると思い込み、一斉にそこを目指して集まってくる。
「さあ、今のうちに船に行くぞ」
フィノの先導で路地を進み、武装船が停泊している埠頭を目指す。
途中、何人かの船乗りに出くわしたが、夜闇に紛れることでやり過ごし、あるいは戦闘にならずに眠らせることができた。
そうして俺たちは埠頭の桟橋を渡り、武装船の入口までやってきた。
「私は鍵を使って操舵室に入り船を出航させる。戦士殿はまだ船内に残っている者がいたら掃討してくれ」
「ああ、任せろ」
「な、なんだ、てめえら? ……ぐわッ!」
俺はマルと船内を周り、突然の侵入者に驚く船乗りたちを海に叩き落としていく。
そうしている内に船が大きく揺れ、徐々に港が離れていくのが見えた。
どうやらフィノが船を動かしたらしい。
船内の敵をすべて片付け、港が豆粒ほどの大きさにしか見えないほど岸から離れたところで、俺は操舵室のフィノと合流した。
「戦士殿、見事な働きぶりだった。これで船員たちもおとなしくなるだろう。なにせ、船も金も物資も一度にすべてを失ったのだからな。ギルドも恐れることはなくなる」
フィノは舵を持ったまま、上機嫌に語る。
「ああ。ところでこの船はどこで引き返すんだ?」
【すでに沿岸から離れつつあります。沖合に出てはすぐには戻れないでしょう】
「……ふむ」
しばらく考える素振りをした後、意を決したようにフィノは口を開いた。
「本来は禁じられているがあなた方には真実を話すことにする。私はギルドの人間ではない」
「なに?」
「私は南にあるサザンティウム王国の魔王討伐軍所属、フィノ諜報員。目的は元々この武装船の奪取、そして魔大陸にある前線基地にこの船と物資を運ぶことだ」
唐突に打ち明けられた話に、俺は言葉を失う。
それにしてもまた魔大陸か。スリサズを拾ってからというもの、どうもそこには縁があるらしい。
「我らを騙したのか? 南の大陸はどうなる? 我はどうしてもそこに行かねばならんのだ」
今度はマルが食い下がる。
そもそも旅の目的がこいつを群れに返すことなのだから、それはそうだろう。
「魔大陸の沿岸は海流が不安定になっていて、船で通り抜けるのは困難だ。狂暴な海のモンスターもいる。どの道、南へ行くには魔大陸を横断するしかない。だが騙したとはいえ協力してくれた以上、あなたたちが南へ行きたいというなら私が責任を持って送り届けよう」
「それは助かるが……」
俺はチラリとスリサズの方を見やる。
今までの話では、魔大陸にあるなにかは、スリサズの機能を妨害し、さらに、こいつの世界の技術を持ったゴーレムをどこからともなく町に転移させてきた。
魔大陸でそんな力を持つことができ、なおかつ人間に敵対するような使い方をしてくる奴など、思い当たるのは一人しかいない。
【この世界で『魔王』と呼ばれる生物が魔大陸を支配しているそうですね。広域スキャンを妨害されているので内部情報は得られていませんが、今までの出来事から推測すると、その魔王がなんらかの方法で地球の技術を入手している可能性があります】
外で待たせていたマルの首根っこを引っ掴み、俺は全速力で夜の路地裏を駆け抜けた。
「なにをするか!」
「いいから走れ」
それだけ言うと、俺はさっきまで走ってきた後方の道を指さす。
そこには手に手に武器を携え、地響きを立てて追いかけてくる船乗りの集団が、ぶっ殺すとかバラバラにして魚のエサにしてやるとか、口々に俺たちを罵りながら迫って来ていた。
「ヒイィィ~~ッ!? お前たちなにをしてきたのだ!? お、置いていくな!」
マルも俺たちに追従するように慌てて走り出す。
入り組んだ裏路地を走り回ったおかげか、船乗りの集団は俺たちを見失い、細い路地に置かれたゴミ箱に隠れることができた。
「く、臭いぞ……いつまでもこんなところにおれるか!」
【このゴミ箱内の臭気は長時間いると人体に有害な影響を及ぼします。現在、検出されている悪臭物質は腐敗臭、アンモニア臭、硫黄臭、加齢臭などです】
「今なんだか俺の悪口言わなかったか」
【あなたの加齢臭が有害であるなどとは間違っても言っていません】
「よーし、お前が張り付いてる生ゴミもここに捨てていってやる」
「戦士殿、今はおしゃべりをしている時ではない」
言い合いを続ける俺たちをたしなめ、フィノが今後の作戦を説明する。
「奴らは我々を見失い、今はむきになって探しているが、そのうち武装船に戻るはずだ」
「な、ならここでもう少し我慢していればやり過ごせるのだな?」
マルが鼻を押さえながら聞き返す。
「いや、それは逆だ。武装船に戻ったら奴らは船の中で守りを固めるだろう。操舵室の鍵がここにあっても、船を出すのは困難になる。そうなる前に奴らを振り切り、船を出航させるんだ」
「しかしどうやって振り切る? 」
「こうするのさ。――“フレア・トーチ”!」
フィノは手から火球を生み出し、今いる路地とは一区画離れた建物の上空に投げる。
高く上がったところで火球が弾け、光と音をまき散らした。
散らばって路地裏を探していた船員たちは、火花が散った場所に俺たちがいると思い込み、一斉にそこを目指して集まってくる。
「さあ、今のうちに船に行くぞ」
フィノの先導で路地を進み、武装船が停泊している埠頭を目指す。
途中、何人かの船乗りに出くわしたが、夜闇に紛れることでやり過ごし、あるいは戦闘にならずに眠らせることができた。
そうして俺たちは埠頭の桟橋を渡り、武装船の入口までやってきた。
「私は鍵を使って操舵室に入り船を出航させる。戦士殿はまだ船内に残っている者がいたら掃討してくれ」
「ああ、任せろ」
「な、なんだ、てめえら? ……ぐわッ!」
俺はマルと船内を周り、突然の侵入者に驚く船乗りたちを海に叩き落としていく。
そうしている内に船が大きく揺れ、徐々に港が離れていくのが見えた。
どうやらフィノが船を動かしたらしい。
船内の敵をすべて片付け、港が豆粒ほどの大きさにしか見えないほど岸から離れたところで、俺は操舵室のフィノと合流した。
「戦士殿、見事な働きぶりだった。これで船員たちもおとなしくなるだろう。なにせ、船も金も物資も一度にすべてを失ったのだからな。ギルドも恐れることはなくなる」
フィノは舵を持ったまま、上機嫌に語る。
「ああ。ところでこの船はどこで引き返すんだ?」
【すでに沿岸から離れつつあります。沖合に出てはすぐには戻れないでしょう】
「……ふむ」
しばらく考える素振りをした後、意を決したようにフィノは口を開いた。
「本来は禁じられているがあなた方には真実を話すことにする。私はギルドの人間ではない」
「なに?」
「私は南にあるサザンティウム王国の魔王討伐軍所属、フィノ諜報員。目的は元々この武装船の奪取、そして魔大陸にある前線基地にこの船と物資を運ぶことだ」
唐突に打ち明けられた話に、俺は言葉を失う。
それにしてもまた魔大陸か。スリサズを拾ってからというもの、どうもそこには縁があるらしい。
「我らを騙したのか? 南の大陸はどうなる? 我はどうしてもそこに行かねばならんのだ」
今度はマルが食い下がる。
そもそも旅の目的がこいつを群れに返すことなのだから、それはそうだろう。
「魔大陸の沿岸は海流が不安定になっていて、船で通り抜けるのは困難だ。狂暴な海のモンスターもいる。どの道、南へ行くには魔大陸を横断するしかない。だが騙したとはいえ協力してくれた以上、あなたたちが南へ行きたいというなら私が責任を持って送り届けよう」
「それは助かるが……」
俺はチラリとスリサズの方を見やる。
今までの話では、魔大陸にあるなにかは、スリサズの機能を妨害し、さらに、こいつの世界の技術を持ったゴーレムをどこからともなく町に転移させてきた。
魔大陸でそんな力を持つことができ、なおかつ人間に敵対するような使い方をしてくる奴など、思い当たるのは一人しかいない。
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