パーティーをクビになったおっさん戦士は、地球を追放された最強AIと旅をする。

王加王非

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27 VSゴブリンスナイパー

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「いきなりなにす……どわぁッ!?」

 蹴飛ばされて憤慨するマルの鼻先を二発目の弾丸がかすめていく。

「どこかに隠れてろ!」

 俺はそう叫ぶと同時にスリサズを拾い上げ、近くにあった廃屋に逃げ込む。
 外から見えないように壁を伝って部屋を移動し、枠の外れた窓の近くに腰を下ろした。

 無理をして走ったため、爪の剥がれた指がズキズキと痛む。
 俺はベッドに敷かれたシーツを破り、包帯代わりに傷口に巻いた。住民が逃げてしばらく経っているようで決して清潔とは言えないが、背に腹は代えられない。

「くそ、また新しい武器か……どこから撃ってきた?」
【スナイパーの正確な位置は把握できませんが、射角から推測したところ、ここから数百メートル先、高所から見下ろす形でこちらを狙っています。レーザーサイトの光に当たらないようにしてください】
「さっきの赤い光のことか」

 窓からわずかに顔を出して外の様子を覗くと、赤い光の点は俺たちを探すように、大通りをハエのように不規則に飛び回っていた。
 仕組みは分からないがあれで狙いをつけているらしい。

 マルは中央の通りを挟んで向かい側の建物に避難したようだ。
 上手く隠れられているつもりのようだが、俺のいる場所からだと窓から角が少し見えている。

 さらに大通りの先の方へ視線を動かすと、連なった家々の屋根から突き出すようにそびえる、高い時計塔を見つけた。
 目を凝らしてよく見ると、止まった大時計の真下の辺りから、度々なにかが太陽の光に反射している。

【照準器の反射光です。あそこにスナイパーがいるのは間違いないでしょう】
「あの距離から撃ってきたのか?」

 俺は半信半疑でスリサズに聞き返した。
 確かに高い建物となると他にはなさそうだが、本当にあんなところから狙って来たのだろうか。
 そんな疑問を抱くほど、あまりにも距離が離れすぎていた。

【この星の文明レベルでは理解できないのも仕方ありませんが、スナイパーとはそういうものです。もちろんあなたの持っているショットガンとは飛距離に天地の差があります】
「せっかく持ってきたのにいきなり役に立たんじゃないか」
【そうでもありません。スナイパーライフルの弱点はその大きさと重量により、接近戦に向かないことです。見つからずに近づくことができれば、仕留めることができるでしょう】
「どうやって近づく? 外に出たら見つかるし、さっきの爆弾も町中に埋まってるんじゃないのか?」
【地雷の位置はおおよそ把握しました。私の指示に従って建物の影を移動しながら進んでください】

 俺は隠れていた廃屋から静かに外に出ると、離れた地面に向かってショットガンを発射した。

 ドゴンッ――! ……ズドドドォォンッ――――!!

 本来ならば銃声でこちらの位置を知られる危険もあったが、俺が撃ったのは地雷の密集した地帯だ。
 銃声は連続する爆発音でかき消され、照準の光も驚いたように爆音と土煙の上がった方を向いた。俺はその隙に通りの脇を走り抜ける。
 その後も同様の手段で狙撃手の注意を逸らしながら、建物の影から影に移動し時計塔へ向かった。



「ま、着いてみればなんてことはなかったな」

 時計塔の下にたどり着いた俺は、思ったより簡単にことが進んだことで少し拍子抜けしていた。
 中に入ってしまえば狙撃の心配もないだろう。俺は早速、時計塔の入口に向かいドアを開けた。

 ガラガラガラガランッ!!

 ドアに結びつけられたロープが揺れ、そこに繋がっていたいくつもの鐘がけたたましく鳴り響いた。

「ギギッ!」

 それを合図に、四方八方の物陰から緑色の亜人が飛び出してくる。先の戦いで撤退していったゴブリンたちだ。

「待ち伏せだと!?」
【鳴子のトラップとは、原始的すぎて感知できませんでした。しかし今のあなたのフリから回収までの流れは素晴らしい様式美です。SNSに投稿しておきましょう】
「お前なあ~」

 冗談を言ってる場合ではないと言う気も失せ、俺はボヤきながらも剣とショットガンを取り出し応戦する。
 しかし思ったよりも数が多く、時計塔の手前で足止めされてしまった。

「ギィッ!?」

 上方から驚いたような鳴き声が聞こえた。
 俺が声のした方を見上げると、時計塔の窓から長い銃を構え、備えつけられた望遠鏡のようなものを覗いているゴブリンがいる。

【レーザーサイトがこちらを向いています。至急退避してください】

 例の赤い光が、俺の心臓辺りを照らしていた。
 回避しなければならないのは分かっているが、地上のゴブリンたちは俺を取り押さえるように足や服を掴んでいた。

「くそぉっ!」

 俺はショットガンで身体を掴んでいたゴブリンの頭を吹き飛ばす。
 再度、時計塔を見上げると、銃の引き金に掛かった緑色の指がまさに引かれようとしているのが見えた。
 駄目だ、避けるのが間に合わない。

「――アギャッ!?」

 しかし、次に聞こえたのは銃声ではなく、ゴブリンの苦悶の悲鳴だった。一瞬、電気でも流されたかのように痙攣した後、力を失った手から銃が離れ、ガシャンと地上に落下する。
 ……電気……?

「ふふん、我のありがたみが分かったか」

 くず折れるゴブリンの背後から、マルが姿を現す。
 頭を両手でホールドしており、そこから電撃を浴びせたようだった。

「なんでお前がそこにいる?」
「隠れていた民家に地下の入口があったのだ。その中をずーっと歩いて行ったらいつの間にかここに出ておった」
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