パーティーをクビになったおっさん戦士は、地球を追放された最強AIと旅をする。

王加王非

文字の大きさ
30 / 59

28 おっさんと狙撃銃

しおりを挟む
【このスナイパーがゴブリンのリーダーだったようです。残存勢力はありません】
「やれやれだ」

 俺は時計塔の壁に背中を預け、座り込んだ。
 戦闘が終わったことで気が抜けてしまったのか、疲れがどっと押し寄せてくる。つま先の痛みもぶり返してきた。

「休んでおる暇はないぞ。我を早く南に連れて行くのだ。こんな奴らといつまでも戦ってたら仲間の元へ帰る前に死んでしまう」
「しょうがないだろ。これから人間の生き残りがいるかも探さなきゃならんし、フィノに状況の報告もしなきゃならん。少しぐらい休憩させろ」
「むー」

 地雷を踏んだり、狙撃されそうになったのがよほど堪えたのか、マルは早いところ魔大陸を脱出したがっているようだ。
 しかしフィノに聞いた情報が正しければ、この先も進めば進むほど、さらに多くのモンスターがひしめく戦場になっているはずだ。討伐軍の護衛なしで進むのは危険すぎる。

「マルもいい加減ドラゴンの姿に戻れるようにならないのか?」
「徐々に力は戻ってきておるが、さっきみたいにたまに電撃を使っておったらジリ貧なのだ。完全回復するまで待っておったら季節が変わって仲間たちもまた違う所に移動してしまうぞ」
【爬虫類の記憶力から推測すると、その頃にはマルが群れの一員だったという事実すら忘れているかもしれません】
「そそ、そんなことはないぞ。我らドラゴンの知性を馬鹿にするな。でもそういうわけだからできるだけ早く南へ行ってくれ」
「信じるのか信じないのかどっちなんだよ」
【……町の外に複数の熱源を感知。距離は離れていますがこちらに近づいて来ます。人類が数人と未知の熱源が一つあります】

 休みながらくだらない話をしていたところに、唐突にスリサズが告げる。
 それを聞いて俺は辺りを見回すが、なにも見つからなかった。

「どこからだ? なにも見えないぞ」
【肉眼で視認できる距離ではありません。時計塔の上からスナイパーライフルのスコープで覗いてください】
「スコープってこいつのことか?」

 俺はゴブリンの持っていた銃を拾って時計塔に上り、長い銃身に取り付けられた望遠鏡を通して町の外を見る。

「……あれは味方か? なにかに追われてるな」

 数人の鎧を着た男たちが、必死の形相でこちらに逃げて来ている。さらに前線にいた兵士たちのようだ。
 その後ろから、巨大な四足歩行のモンスターが、土煙を上げながら男たちを追いかけているのが見えた。

【サイや牛、もしくはライオンのようにも見えますが、体長は大型の象に匹敵します】
「ありゃベヒーモスだ。魔王のお膝元の魔大陸なら、ああいうのもいるってことだな」

 ベヒーモスは並の冒険者では太刀打ちできない上級モンスターだ。
 鋭い爪と牙を持ち、硬い皮膚に覆われた巨大な体躯は、生半可な武器や魔法では傷一つ付けられない。そのため、一流のパーティーが集団でかかっても、しっかりと連携しなければ退治するのは難しい。
 そのベヒーモスが、逃げる兵たちを追い回している。

「あれは俺一人が行ったところでどうにもならんぞ」
【そうも言っていられません。彼らの進行方向にある、この町の入口には大量の地雷が埋まっています】
「なんだと?」

 スコープを動かし兵士たちの走る先を辿ると、俺たちが入ってきた方向とは反対側の門に向かって逃げているのが分かる。

【説明してもルートを外れたり急停止してくれる可能性は限りなく低いです。彼らにとっては巨獣に潰されて圧死するのも地雷で爆死するのも変わりないのでしょう】
「で、どうしろってんだ?」

 俺は眉間に皺を寄せ不機嫌な態度で聞く。
 スリサズがこういう話をする場合、俺になにかやらせようという前振りなのだ。

【あなたがスナイパーライフルでここからあの巨大生物を狙撃するしかありません。この町に到達する前に】

 そらきた。

「こういう武器は誰にでも使えるもんじゃないだろ」

 熟練の戦士ともなると、一種類の武器にはこだわらず、武芸百般に通じているものだ。
 俺も必要に迫られれば剣以外の武器でも使うことはできる。弓を射て遠くのモンスターを狩ったこともある。
 しかし、異世界の武器を使い、肉眼ではほとんど見えない超遠距離の敵を撃ち抜くなど、この世界で経験のある者は誰一人いないだろう。

【あなたには銃器取り扱いの適性があります。この星の文明レベルでショットガンを短時間で使いこなせる人類はまず存在しません】
「まったく嬉しくないな」
【大丈夫あなたなら出来ます気持ちの問題です外したらどうなるか分かっていますね?】
「応援なのか脅迫なのかはっきりしろ」

 そうボヤきながらも、窓の外に銃を構え、スコープを覗く。
 照準の中心には、さっきまで俺やマルが照らされていた、あの赤い光点が浮かび上がっていた。

「引き金を引いたらこの赤い丸が出てるところに当たるってことでいいんだな?」
【正確ではありませんがおおむね間違ってはいません】
「回りくどいがまあいい」

 俺は照準越しに、兵士たちを追い回す巨獣の身体を見る。
 ベヒーモスとは過去に闘った経験がある。奴には硬い皮膚に守られた防御力に加え、小さな傷ぐらいなら短時間で元通りになってしまう再生能力がある。
 この銃の威力がどれほどのものかは分からないが、身体がでかいからといって闇雲に撃っていてはダメージは期待できない。

 ……と、いうことはやはりここか。

 俺は照準をベヒーモスの左眼にさだめる。
 昔、奴と闘った時はここから剣を突き刺して脳を破壊した。
 暴れるモンスターの目を射抜くのは達人の弓使いでもほぼ不可能だが、引き金を引いた瞬間にほとんど時間差なく目標に当たる銃ならば理屈上は可能なはずだ。
 無論、俺にそれができるかどうかは別の話だが。

「ふぅ~~~」

 一息深呼吸を入れる。

【通常、こういった状況では軍人でも平静ではいられないものですが、血圧、脈拍ともに正常。呼吸も乱れていません。高齢者としては異常かもしれませんが】
「お前のせいで気が散るんだよ」

 軽口を叩きながらも、俺はベヒーモスに狙いをつけたまま、可能な限り引き付ける。
 十分に照準の的が近づいたことを確認し、引き金を引いた。

 ―――ドォンッ!!

「ぐっ……! なんだ!?」

 凄まじい破裂音に俺は鼓膜が破れそうな痛みを覚え、思わずスコープから目を離す。

【大口径のスナイパーライフルの場合、発射時の初速はマッハ2.5以上です。大音響と共に衝撃波を発生させ、聴覚に障害を残す場合があります】
「だから何度も先に言えと……奴はどうなった?」

 今だに頭の中で反響している耳鳴りを押さえながら、再度スコープを覗く。

 グオォォォォン――――!!
 そこには左眼から血しぶきが上がり、悲鳴にも似た声で咆哮を上げながら、ゆっくりと横倒しになるベヒーモスの姿があった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!

花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】 《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》  天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。  キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。  一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。  キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。  辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。  辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。  国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。  リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。 ※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作    

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

処理中です...