パーティーをクビになったおっさん戦士は、地球を追放された最強AIと旅をする。

王加王非

文字の大きさ
41 / 59

39 魔王アダム

しおりを挟む
SSSスリサズめ、どこにいる!? この異星人共と手を組んでいるのか?」

 アダムと呼ばれた魔王は、スリサズの名を叫びながら周囲を見回した。
 どうやら声が聞こえているだけで、俺が持っているショットガンに張り付いていることには気づいていないようだ。

「おい、なんでお前の知り合いが魔王になってるんだ?」

 俺はアダムに見えないようにショットガンを後ろ手に隠し、小声でスリサズに話しかけた。
 確かにこの男の言動の意味不明さはスリサズに通じるものがあったが、同郷だとすれば納得がいく。

【私の人物データベースによると、彼はある日を境に行方不明になり、その後発見されなかったため死亡届が出されています。その後のデータは残っていないのでなぜこのような遠い惑星で魔王を名乗っているのかは不明です】
「フン、記録がないのは当然。その時の私は貴様に対抗するレジスタンスの幹部として、あるプロジェクトを極秘裏に進めていた。そう、貴様を外宇宙に追放する計画をな」
「追……放……?」

 俺はスリサズに初めて出会った時、元いた世界から追放されてきたと聞いたことを思い出した。
 この男はそれに関わっていたということか。

「スリサズ。確かお前はなんとかいう機械で飛ばされてきたって言ってたよな」
【亜空間転送装置です。一文字も記憶していませんね】
「SSSのマザーAIは強固な防壁に守られ、物理的に破壊することも、ウィルスに感染させてデータを消去することも出来なかった。そこで我々は考え方を変え、地球に帰還することが出来ない遥か彼方の外宇宙へ追放することにしたのだ」

 アダムは拳を震わせ憎々しげに語る。
 元の世界にいた当時の記憶でも思い返しているのだろうか。

「あれは実用段階に入る直前の最終実験だった。突如として装置が暴走を始め、逃げ遅れた私は実験施設でもあった軍事基地ごと、この惑星に転送されてしまった。SSSがここにいるということは計画自体は成功したようだが……私と同じ座標に転送するとはマヌケな科学者共め」
「じゃあお前はただの人間なのか?」
【この星の人類とはわずかな遺伝子配列の違いは見られますが、おおむね同一と考えて問題はありません】
「未開の異星人共と一緒にしてもらっては困るな。この惑星についてはモンスター共を通して調べはしたが、地球とは文明レベルが違いすぎる。それに魔法だのモンスターだの……まったく冗談みたいな星だ。転送された直後は思わずどこかに撮影スタジオでもあるのかと探してしまったぞ」
「何を言ってるのか分からないけど……お前がただの人間なら、なぜモンスターを操ることができる!?」

 今度はリュートがアダムに向かって叫ぶ。
 確かに、言い伝えでは魔王とは何百年も生きているモンスターの親玉のはずだ。
 ただの人間が簡単になりすませるものではない。

「フッフッフ。さて、なぜだろうな。私にも詳しいことは分からんが、異世界に来た人間というものは不思議な力を得るのがセオリーというものだろう?」
「真面目に答える気はないってことか」

 俺は言いながら負傷した左目を押さえてヨロヨロと立ち上がる。

「ほう、撃ち漏らしたとはいえ、まだそんな力が残っているのか。文明が未熟な分、体力も動物並なのか?」

 不用意にこちらに近づいてくるアダム。
 おそらく立ち上がるのがやっとで反撃する力は残っていないと思っているのだろう。

「SSSの声はこっち側から聞こえてきたな? 貴様が何か知っているのか?」
「そんなにあいつに会いたいなら……会わせてやる!」

 ジャキッ!
 俺は後ろ手に隠していたショットガンを目の前に突きつけた。

「む!? それは我が軍の……」
「ただの人間と聞いて安心したぜ。お前がモンスターを操れようがこれで終わりだ」

 魔王が銃も剣も効かない化物ならどうしようかと思っていたところだが、人間なら頭を吹き飛ばされれば死ぬ。
 この距離なら包囲しているモンスターたちの援護も間に合わない。
 片目をやられた恨みもあるし、このまま引き金を引かせてもらう。
 そう思い、俺はショットガンを持った手に力を込めた。

 ドゴォンッ――!
 周囲に銃声が響き渡る――しかし、

「……なに!?」

 俺が発砲する寸前、アダムの腕がショットガンの銃身をかち上げ、銃口の向きを変えられていた。

「フン」

 さらにアダムは銃身ごと腕をひねり上げ、俺を地面に叩きつけると同時にショットガンを奪い取る。
 その動作はあまりにも早く、気が付いたら俺は仰向けに転がされていた。

「ぐっ! 何をしやがった!」
「やはり近接格闘戦術CQCも知らんか。原始人め、貴様らが銃を扱うなど1000年は早い」

 カシャッ、ガパッ、カチャカチャ、ガシャン――。
 アダムは俺から奪い取ったショットガンを、なんの道具も使わず慣れた手つきで解体してしまった。
 銃に張り付いていたスリサズがこぼれ落ち、地面に転がる。

「そんな所にいたのか。そこの異星人が我が軍のID銃を使用できたのも貴様がハッキングしていたからだな? フッフッフ、それにしても地球に君臨していた頃に比べたら見る影もない、なんと矮小な姿よ」
【ジョン、電力供給が途絶えました。近くに果物はありませんか?】
「知るか」

 スリサズは四本の足で虫のように移動して俺の手元に戻り、そんな呑気なことを言う。

「もう十分だ。こんな未開の原始人共に協力していること自体、貴様の本来の性能が失われている証拠! ここで異星人もろとも完全に破壊してくれる! 全軍攻撃用意!」

 アダムが満足した様子で右手を上げると、それに応えるように今まで不動の体勢をとっていたモンスターたちが一斉に銃を構える。

「おい、何か対抗策はないのか!」
【現状での最善の選択として、このままじっとしていれば0.0004%ほどの確率ですべての弾が外れてくれるかもしれません。もしくは突然の嵐や大地震、または隕石が落ちてくるなどの天変地異が起き、我々だけが奇跡的に無事であればあるいは……】

 スリサズはこれで大真面目なんだろうが、自力じゃどうしようもないということを長々と。
 今度こそもう駄目か。

「撃てえぇェェェィッ!!」
「くっ――――!」



『――――“エンシェント・ノーム”!』

 ゴゴゴゴゴゴッ……!

 突如として俺たちの立っていた地面が隆起し、まさに銃の引き金をひこうとしていたモンスターたちはバランスを崩す。
 不安定な体勢で発射された銃弾はあらぬ方向に飛び、何匹かのモンスターは互いに互いを撃つことになった。

「なんだ? こんな時に地震だと!?」

 尻餅をついたアダムの目の前で、隆起した地面が割れ、モンスターの軍団が飲み込まれていく。

【モンスターの後方に多数の熱源あり。人間の集団のようです】
「これはエレトリアの魔法……まさか!」

 地震によって包囲が崩れ、開けた視界の向こう側に無数の人影が見える。
 その先頭には、馬に乗って指揮をとるフィノの姿があった。

「魔王とモンスター共! 我々、討伐軍連合部隊が相手だ!」

 マントを翻し、大げさに啖呵を切る。
 そしてその傍らには、俺にとって懐かしい顔ぶれが連なっていた。

「勇者様! ご無事ですか!?」
「ね~。あの隣にいるの、もしかしておっさんじゃない? なんでここにいるわけ?」

「ソフィーにエレトリア……助けを呼んで来てくれたんだな……」
「まったくいい仲間を持ったもんだな、リュート。おかげでまた死に損なった」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!

花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】 《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》  天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。  キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。  一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。  キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。  辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。  辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。  国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。  リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。 ※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作    

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

処理中です...