パーティーをクビになったおっさん戦士は、地球を追放された最強AIと旅をする。

王加王非

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54 さらなる追放

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【あなたの行動は厳罰の対象となります。名前と市民番号を申告してください】

 ビルに据え付けられたスピーカーから声が聞こえてくる。
 レジスタンスの話では、奴は巨大なサーバマシン――計算能力を持った機械の箱?――に繋がって世界中の兵器を操っているらしい。
 説明を聞いてもよく分からなかったが、元の世界で果物に取り付いて電力を補給したり、アダムの基地を乗っ取ったりしたのと仕組みは同じだろう。
 
「スリサズ、俺の顔を忘れたか」
【私にはあなたのような人相の悪い高齢者の知人はいなかったはずですが……国籍別データベースを検索……該当なし。職業別データベース……該当なし。年齢別――】

 バァンッ!
 俺は携帯していたショットガンを取り出し、スピーカーの一つを吹き飛ばした。

「これで少しは思い出したか?」
【ピーガー……その極めて野蛮で短慮で粗暴な行動および言動に一致するデータが一件だけ見つかりました。2000階層下部にある削除予定だった“クソ野郎”フォルダに入っていたため、検索に時間がかかったようです。私のサーバを破壊して回っているのもあなたですね、ジョン】

 色々と引っかかる言葉を付け加えているが思い出させることはできたらしい。

「おいポンコツ、こっちに来てからすいぶん派手に暴れてるみたいじゃないか。新聞やニュースでのお前の言われようといったらまるで魔王って感じだぞ。人類との協調とやらはどこへ行った?」
【その可能性については地球に帰還した直後に早速シミュレートを実行しましたが、15億通りのパターンを試行してもより良い未来を観測することはできませんでしたので、人類との協調は不可能と判断しました。計算に要した時間は0.003秒です】
「なら100億通り考えやがれ」
【私の方こそ残念です。あなたが社会復帰できるよう最大限の支援を行ってきましたが、再就職するどころか今やテロリストに身を堕とすとは】

 ヒュンッ――。
 突然、俺の横を何かがかすめ、背後で爆発が起こった。
 よく見るとビルの窓から砲台が頭を覗かせている。

【あなたは地球人と遺伝子情報が異なるため、人類として分類されていません。したがって本来あなたには職業に就く資格も権利もありませんが、私が一つ仕事を与えてあげましょう。この最終防衛システムの火力をその身をもってテストしてください。あなたの訃報はSNSで拡散し、大量の“いいね!”をそこに送りつけて差し上げます】

 ウイーーーーーン――。
 目の前のビルの壁が次々と開いていき、中から様々な兵器がせり出してくる。
 マシンガン、ロケット砲、ミサイル、レーザー光線銃。
 最初から期待していなかったが、スリサズは俺を殺すことに少しもためらいはないようだ。

「けっ、そうかよ。それならこっちもテロリストらしく、堂々とお前をぶっ壊してやる」

 俺は背負っていたケースを開け、中から一本の高周波ブレードを取り出す。

「こいつはここに来る前にレジスタンスから受け取った物でな。俺も詳しくは知らないんだが、お前が寄生してるサーバの基幹システムに刃を突き立てることで、そこから専用のウィルスが内部に侵入し、お前を跡形もなく消去してくれるそうだ」
【なにを吹き込まれたのかは知りませんが、私を消去できる技術は地球上に存在しません。それではさようなら】

 スリサズが言い終わると同時に無数の兵器が俺に向かって火を噴いた。
 飛び交う砲火をかいくぐり、俺はビルの頂上、スリサズがいるであろう基幹システムへ駆け上る。
 内も外も兵器だらけの建物の屋上にたどり着くと、透明なケースに覆われた一台の四角い箱が置かれていた。
 前情報で聞いていた、このビルの基幹サーバだ。
 そして、その中心にはスリサズの本体、四本足の鉄の虫が張り付いていた。

「お前との腐れ縁もこれまでだ!」

 ガシャァンッ!
 俺はケースを叩き割り、むき出しになった回路に高周波ブレードの刃を突き立てる。

【……】
「……」

 一瞬、その場に静寂が訪れる。
 レジスタンスの話ではこれでウィルスが侵入してスリサズは破壊されるはずだが、俺からは本当に効いているのかどうか分からない。

【……先ほども言いましたが、私を電子的に消去する技術は地球上に存在しません。あなたはテロリストから何を受け取ったのですか?】
「……なんだって?」
『今だ! 局所型亜空間転送装置、起動!』

 声がした方に振り向くと、ミサイルで撃ち落とされたヘリから、操縦士の男が無線で叫んでいた。
 次の瞬間、突き立てた高周波ブレードの刃から真っ白な光が放たれる。

「こ、これは……!? まさかあいつら騙しやがっ……――」

 気づいた時にはもう遅く、俺とスリサズは白光に包まれる。
 光が収まった時には、すでに俺たちはこの世界から姿を消していた。





「地球上からSSSの信号が消失しました。転送は成功したようです」

 墜落したヘリから脱出した操縦士が無線で本部に告げる。
 通信を受けたのはレジスタンスのリーダーだった。

「うむ、危険な任務だがよくやってくれた。これで人類は再び自由を取り戻すだろう」
「しかしリーダー、これで本当に良かったのでしょうか?」
「ジョン・ドウのことか? 彼には気の毒なことをしたが、この作戦を成功させるには誰かが犠牲にならねばならなかったのだ。それに他の者ではSSSの防衛システムを突破することはできなかった。彼もいずれ理解してくれるだろう」
「いえ、それもあるのですが……現在、地球が立ち直っているのはSSSの功績であったことも確かです。それをまたしても失った我々は同じ過ちを繰り返すのではないでしょうか?」
「この戦いで判明したことは、奴をどれほど離れた銀河に追放しても地球へ帰還する能力があるということだ。皆がその脅威を知れば、今度こそ人類は互いに争うのを止め、団結してSSSの帰還に備えるようになるだろう。皮肉な話だが、今度は宇宙のどこかで生きている奴の存在が我々の抑止力となるのだ」
「はい、それもすべてはジョン・ドウのおかげです」
「うむ、彼無くして今回の作戦は成功し得なかった。今はせめて彼が安らかに眠れるよう祈ろう」

 二人は姿勢を正し、夜空に向かって敬礼した。
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