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その日は雰囲気、何時もと代り映えしない朝だと思っていた気がする。そんな日の出前。空が白み出す時間帯。
大きなワンコと一緒に寝る為に2台のベットをくっ付けて作った寝床から起き出し、生成の甘く緑色で斑のある安物の硝子を入れた明り取り用の窓を開けると、雲一つない空が朝焼けの色に染まっていた。その時は朝焼けに対して珍しいなぁ~奇麗だなぁ~とだけ思い。一緒に寝床から起き出し尻尾を振って擦り寄って来た白の舞い上がり朝日でキラキラ光り舞い落ちる抜け毛を見て、我が家のワンコ様にはブラッシングが必要だなって事と、今日は朝から天気が良いし布団を干してから出掛けようと決意を固め、毛布と羽毛入りの袋(掛け布団)と敷いて寝ていた毛皮を畳んでブランの背に乗せて無駄に広い階段を降り、庭の干し物用に開けたスペースにそれ等干して出掛ける事にする。
魔力の消費を抑える為に外していた母親から譲り受けた母親と御揃いの細い飴色のイヤーカフ、髪や瞳の色を茶色くするのと顔立ちや印象を薄くする変装用の魔道具を左耳に装着。
身支度を整えてから、持ち歩く用の岩塩と水が出るコップ付きの水筒が入れっぱなしの状態に成っている収穫した物を保存する為の大きな籠の魔道具を背負い、収穫や解体に使う刃物と、薬や調味料に使える毒草・野草・薬草の特徴を記したメモ帳を片手に目指すは西門を出た北西側。大きな城や都市を囲む壁、背が高く生い茂る枝葉の所為もあって朝日が当たらない薄暗い森の中を何時も通り真っ白くて大きなワンコのブランと一緒に、早朝から出掛ける冒険者狙いの出店で買ったばかりの固焼きのパンを食べながら、目当ての物を探しながら、森を歩き回るのが日課である。
でも、今日は布団を干してから来た所為で何時もより出遅れてしまっていた。
呪いに必要な朝露、目覚めを促す為の魔法薬の材料にも成る朝露を受けて咲く花等の採取に条件がある物の収穫を逃してしまっていたのだ。でも、まぁ、普通に生えている植物は摘めるし、冒険者としてゴブリンは討伐できたし討伐証明の耳も刈れたしブランに穴を掘って貰ってゴブリンを埋めた近くに欲しい植物の種も植えれて水も撒いたし、私とブランが食べこぼしたパンを目敏く見付けて食べに来た野鳥や木の実等を主食とする野鼠を何時もより多く捕獲でき、掛け布団に入れ足せる羽毛や飾りや矢羽根に使える尾羽、野鼠の毛皮、ブランが食べてしまった分は別として、食べて良し薬にも使える防腐の為に味付けした肝と香草を詰めた丸鳥数羽分に同じく香草を詰めた野鼠の肉数匹分を個々に笹の葉で巻いて防腐処理した物を作る事が出来ていた。
今日のノルマは達成したと言えるだろう。と、言う事で…私は帰り支度を始める……。
水筒の水で手を綺麗に洗い流し「ブラァ~ン!そろそろ帰ろっかぁ~」と肉の処理を始めた時くらいから何処に居るか分からなく成っていたブランに声を掛ける。すると、少し離れた叢から明らか鶏サイズでは無い鶏を銜え、御機嫌にもっふもふの尻尾を大振りに振りながらブランが帰って来た。
大きな鶏冠から雄鶏である事は確かだが、盆尻部分から蛇みたいな感じの尻尾が生えているし、高確率でコカトリスとか言う魔物であろうと思われる。
正直、冗談抜きで驚いたし、その時点で肝も冷えたのだけど、私が襲われた訳でも無いし、ブランも石化した部分がある様子は無い。
私は目を閉じ空を仰ぐ、現実問題、所持している植物の採取や小型の動物の解体に使っている刃物で、コカトリスの解体は不可能だ。けども、今回のブランの得物は、何時もの血みどろ状態では無く、首の骨が折れて死んでいて、運の良い事に獲物からの出血は殆ど無い御様子。
私は少し考え「凄いねブラン!賢いねぇ~」とブランの頭を撫でながら大袈裟にブランを褒め称え「それ、籠には入らない大きさだから、そのまま冒険者ギルドまで運んでくれるかなぁ~?」と、笑顔でブランを誘導する事にした。
安易な判断で魔物が多い森から大きな鳥の死骸を持ち出し、西門に近付くにつれて周囲からの視線に困ったが、街道沿いに置き去りにすると死体に他の魔物が集まって危険で危ないので放置は出来なくて、平静を装い表情は笑顔で固定で門までは頑張った。
その様な訳アリな訳で、何時もはしないが、今日ばかりは門で警備する兵士の人に「御忙しい所、すいませ~ん!」と自分から声を掛ける事に成る。取り敢えず。何をしなくても視線を向けて貰えれば掴みはバッチリ!ブランが銜えて引き摺っているコカトリスに釘付けだ。
但し、「北西の森にコカトリスが出ました!」と出現場所も伝えておけば、義務を果たした事に成るのではなかろうか?と思ったのだけど、門の素通りはできなかった。残念。
西門担当の衛兵さんが詰所から出て来て「え~っと、君は商人とかでは無かったかな?」とブランを見ながら話し掛けて来る。彼は門を通る時にブランが血みどろの得物を銜えて走って来た等のトラブル時にレヨンとして何度か話した事もある衛兵さんだった。
私は一瞬対応に迷い、母親の冒険者活動に同行していた頃からサンティエとして仲良くして貰っている門番さんがその衛兵さんの隣に居る手前、ブランの方を見て「あ、それ、レヨンの方ですね…、私は一応冒険者です」と笑顔でサンティエとしての身分証を提示する事にする。でも、内心的にはヤベエ程に心臓バクバク状態。
西門担当の衛兵さんは私が差し出した身分証を確認し、私のサンティエとしての身分証を門を管理する皆でも確認し、その時間担当の門番さんと何やら話をし始めた。私は不味い事に成ったのでは?と冷や汗を掻く、身分の詐称の罪に対する罰は軽くない。
ブランが捕って来た獲物1つで、罪状が芋蔓式に出て来てしまう可能性があったのだ。けども、今回は大丈夫だったみたいだ。今日は運が良いのではないか?と、この時には思う。
衛兵さんからは「討伐証明は鶏冠だけで良い事は御存じかな?」と言われた。サンティエとして冒険者活動は3年目、そもそも幼少期に母親と一緒にやっていた事もあったのでそれを知らない訳では無い。
「あぁ~…実は…、持っているナイフで鶏冠が切り取れなくて……」とナイフを見せたら、衛兵さんにも門番さんにも何か言いた気な顔をされてしまった。失敗したかもしれない。
「君の武器…、いや…君の攻撃方法は何かな?」
「えぇ~、特に無いですねぇ~」って、あれ?随分前にレヨンとして衛兵さんにこれ聞かれた気がするぞ?前は何て答えたんだっけ?
「冒険者ギルドの身分証に記載された討伐記録の獲物はどうやって倒したのかな?」
「ん~、基本ブラン任せ?」と言いつつブランの方を見ると、ブランはコカトリスの死骸の前で綺麗に御座りをして、首を傾げながらコチラを見ていた。ブランだけを見たら凄く可愛いくてニヤニヤしてしまう。
因みに、この後、冒険者として活動するなら必要最小限の武器と防具を装備しておくべきだ!と言う説教を小一時間されてしまう。その後に「レヨン君には、護衛を雇って採取に出掛けるよう注意していた」とか、うん、見に覚えがあるなって話が続く。
「それにしても何故に君は、冒険者なのに手ぶらで出掛けている!レヨン君でさえ、長い木の棒程度は持っていたぞ!」
「あぁ~、(ブランを拾う前に)持ってた持ってた~」
「但し、私は、あのほっそい木の枝を武器とは認めていないがな!!」
「……」
太陽が真上近くまで登り、私の腹が鳴るまで、衛兵さんの御話が続いたので辛かったのは言うまでも無い。
その様な御話から解放されたのは、衛兵さんの交代時間の御蔭だった。それなのに「まだ説教したい事があるし昼飯を奢ってやろう」と言う衛兵さんの申し出があってドン引きする事に成った。とっても遠慮したかったので、丁寧に断りする事にする。
私は森にコカトリスが出た事を自分で冒険者ギルドに報告して報酬を得ると言う名目で、衛兵さんに別れを告げ、ブランを連れて冒険者ギルドへと向かう事にしたのだ。本当はそれ、衛兵さんの御誘いを断る言い訳なのだが、そう断ったからには、早々に報告に行かねばならない。序だから、ゴブリンの討伐報酬も貰って帰る事にしよう。と、思ったのだけど…、酒場が併設しているメシ時の冒険者ギルドは無駄に混雑していた……。
然も、ブランがコカトリスを銜えて引き摺って歩いていたモノだから、周囲の視線が集まって仕方が無い。まぁ、その御蔭で順番無視してギルド職員さんが出てきて話を聴いてくれたのだけど、無駄に目立ってしまって当分の間は居心地悪い思いをしそうな気がしないでもない。いや、きっと、近い内に自称先輩冒険者が出て来るか何かして、「オマエの景気が良いから」とか言う訳の分からない理由でカツアゲに来るに違いない。面倒臭いなぁ~とは思うが拒否権が無いので仕方が無い。
そうこうして急遽通されたのは、冒険者ギルドの酒場で一番目立つカウンター席だった。嫌がらせだろうか?
「久し振りですねぇ~マジナイ屋のシャンティイ、取り敢えず、犬っころにコカトリスをギルドへ引き渡すよう言ってくれませんかね?」と、高級店に居てもおかしくない装いの初老のバーテンにしか見えない冒険者ギルドのギルド長に言われる。
私は何時も通り「私が母親から貰ったのはサンティエって名前ですよぉ~、勝手に二つ名も名前も付けないで下さいねぇ~」と言いつつ、ブランに指示を出してカウンター席に着いた。ブランは私の指示に従い、コカトリスに手を出そうとする者達に唸り声を上げるのも止め、コカトリスをその場に置いて私の足元に擦り寄って来てくれる。
「ブランはホント、賢くて良い子だねぇ~」御褒美は何が良いだろうか?
私はメニューを横目に見ながら、ギルド長にコカトリスの出没した場所を教え、序にゴブリンの討伐証明部位を提出し、ブラン用として味無しの串焼き10本と自分用のデザート付きのランチメニューを注文して料金を渡した。
ギルド長がコカトリスの事で席を外していた私の食事中。
「オマエの景気が良いから」とか言って分け前を求める馬鹿が想定通りに出没してくれる。今回の魔物討伐会議の為、ギルドの偉い人達は席を外していた。高レベルの冒険者達は居たが、昼間っからギルドで安い飯を食い安酒飲んでいる様な輩は、碌な奴等では無いのだろう。案の定、誰も助けてはくれない。非戦闘員であるギルドの職員さんも、ギルドの酒場の職員さんもオロオロするばかりで何もしてくれない御様子だ。
さて、今回はどうなるだろう?私は振り向くのも面倒臭くて、そのまま食事を続ける。
あ、先に食事を終えたブランが立ち上がった。唸ってないし威嚇もしていないけど、因縁付けて来た奴はブランの大きさを再確認して怯んだみたいだ。逃げ腰で距離を取り、遠くから何か言い始めたのだろう。声が遠い。
「戦闘も犬任せ…」とか言ってる。事実だけど悪口の積りかな?腹は立たないけどウザイ。「大きな犬をギルドに連れ込んで…」って、ギルド長が許可している事を問題視される謂れは無いぞ?と色々と言われ思う事はあったけど表面上無視し続けていた。でも、まぁ、後半はネタが尽きたのか?短い罵倒の言葉の羅列だった気がしないでもない。金が欲しくて人に喧嘩を売る暇があるなら、森にでも行ってゴブリンでも狩った方が効率的ではなかろうか?と私は思うのだけど、働きたくない人は脅し取る方が楽だと思っているのかもしれない。と思い至りながら私はデザートに手を伸ばす。
本日のデザートは氷魔法で凍らせた柑橘系の果実だった。食事の間に半分溶けててシャリシャリしてて美味しかったなぁ、今度、おやつ時に来た時には単品注文しよう。と思い。食事も終わったしそろそろ、五月蠅くて煩わしいから怒ろうかな?と御茶を飲んでいたら、ブランが大きく一声、ワンッ鳴いた。
暫しの沈黙、突然のざわめき、周囲の声から私の背後で漏らしたヤツが出たっぽい。その程度の威嚇で漏らすとは犬が苦手な人が居たのかもしれない。って、振り返ったら、分け前を求めて来たオマエかよ!って、よし、食べ終わったし見なかった事にして帰ろう。私は非戦闘員であるギルド職員さん達に挨拶してから冒険者ギルドを後にした。
帰りの途中、漏らした人の御仲間の人に声を掛けられかけたけどブランが吠えて対応。皆さん、犬が苦手な御様子なのに、何故に如何してワンコ連れて歩く私に絡もうとしてきたのか?やっぱり、あぁ~言う輩の心理は理解不能だ。ブランは賢くて可愛くてとっても良い子なのにねぇ~。
…等と今日は色々あって…、何時もよりも、想定よりも帰りが遅く成ってしまった……。
大きなワンコと一緒に寝る為に2台のベットをくっ付けて作った寝床から起き出し、生成の甘く緑色で斑のある安物の硝子を入れた明り取り用の窓を開けると、雲一つない空が朝焼けの色に染まっていた。その時は朝焼けに対して珍しいなぁ~奇麗だなぁ~とだけ思い。一緒に寝床から起き出し尻尾を振って擦り寄って来た白の舞い上がり朝日でキラキラ光り舞い落ちる抜け毛を見て、我が家のワンコ様にはブラッシングが必要だなって事と、今日は朝から天気が良いし布団を干してから出掛けようと決意を固め、毛布と羽毛入りの袋(掛け布団)と敷いて寝ていた毛皮を畳んでブランの背に乗せて無駄に広い階段を降り、庭の干し物用に開けたスペースにそれ等干して出掛ける事にする。
魔力の消費を抑える為に外していた母親から譲り受けた母親と御揃いの細い飴色のイヤーカフ、髪や瞳の色を茶色くするのと顔立ちや印象を薄くする変装用の魔道具を左耳に装着。
身支度を整えてから、持ち歩く用の岩塩と水が出るコップ付きの水筒が入れっぱなしの状態に成っている収穫した物を保存する為の大きな籠の魔道具を背負い、収穫や解体に使う刃物と、薬や調味料に使える毒草・野草・薬草の特徴を記したメモ帳を片手に目指すは西門を出た北西側。大きな城や都市を囲む壁、背が高く生い茂る枝葉の所為もあって朝日が当たらない薄暗い森の中を何時も通り真っ白くて大きなワンコのブランと一緒に、早朝から出掛ける冒険者狙いの出店で買ったばかりの固焼きのパンを食べながら、目当ての物を探しながら、森を歩き回るのが日課である。
でも、今日は布団を干してから来た所為で何時もより出遅れてしまっていた。
呪いに必要な朝露、目覚めを促す為の魔法薬の材料にも成る朝露を受けて咲く花等の採取に条件がある物の収穫を逃してしまっていたのだ。でも、まぁ、普通に生えている植物は摘めるし、冒険者としてゴブリンは討伐できたし討伐証明の耳も刈れたしブランに穴を掘って貰ってゴブリンを埋めた近くに欲しい植物の種も植えれて水も撒いたし、私とブランが食べこぼしたパンを目敏く見付けて食べに来た野鳥や木の実等を主食とする野鼠を何時もより多く捕獲でき、掛け布団に入れ足せる羽毛や飾りや矢羽根に使える尾羽、野鼠の毛皮、ブランが食べてしまった分は別として、食べて良し薬にも使える防腐の為に味付けした肝と香草を詰めた丸鳥数羽分に同じく香草を詰めた野鼠の肉数匹分を個々に笹の葉で巻いて防腐処理した物を作る事が出来ていた。
今日のノルマは達成したと言えるだろう。と、言う事で…私は帰り支度を始める……。
水筒の水で手を綺麗に洗い流し「ブラァ~ン!そろそろ帰ろっかぁ~」と肉の処理を始めた時くらいから何処に居るか分からなく成っていたブランに声を掛ける。すると、少し離れた叢から明らか鶏サイズでは無い鶏を銜え、御機嫌にもっふもふの尻尾を大振りに振りながらブランが帰って来た。
大きな鶏冠から雄鶏である事は確かだが、盆尻部分から蛇みたいな感じの尻尾が生えているし、高確率でコカトリスとか言う魔物であろうと思われる。
正直、冗談抜きで驚いたし、その時点で肝も冷えたのだけど、私が襲われた訳でも無いし、ブランも石化した部分がある様子は無い。
私は目を閉じ空を仰ぐ、現実問題、所持している植物の採取や小型の動物の解体に使っている刃物で、コカトリスの解体は不可能だ。けども、今回のブランの得物は、何時もの血みどろ状態では無く、首の骨が折れて死んでいて、運の良い事に獲物からの出血は殆ど無い御様子。
私は少し考え「凄いねブラン!賢いねぇ~」とブランの頭を撫でながら大袈裟にブランを褒め称え「それ、籠には入らない大きさだから、そのまま冒険者ギルドまで運んでくれるかなぁ~?」と、笑顔でブランを誘導する事にした。
安易な判断で魔物が多い森から大きな鳥の死骸を持ち出し、西門に近付くにつれて周囲からの視線に困ったが、街道沿いに置き去りにすると死体に他の魔物が集まって危険で危ないので放置は出来なくて、平静を装い表情は笑顔で固定で門までは頑張った。
その様な訳アリな訳で、何時もはしないが、今日ばかりは門で警備する兵士の人に「御忙しい所、すいませ~ん!」と自分から声を掛ける事に成る。取り敢えず。何をしなくても視線を向けて貰えれば掴みはバッチリ!ブランが銜えて引き摺っているコカトリスに釘付けだ。
但し、「北西の森にコカトリスが出ました!」と出現場所も伝えておけば、義務を果たした事に成るのではなかろうか?と思ったのだけど、門の素通りはできなかった。残念。
西門担当の衛兵さんが詰所から出て来て「え~っと、君は商人とかでは無かったかな?」とブランを見ながら話し掛けて来る。彼は門を通る時にブランが血みどろの得物を銜えて走って来た等のトラブル時にレヨンとして何度か話した事もある衛兵さんだった。
私は一瞬対応に迷い、母親の冒険者活動に同行していた頃からサンティエとして仲良くして貰っている門番さんがその衛兵さんの隣に居る手前、ブランの方を見て「あ、それ、レヨンの方ですね…、私は一応冒険者です」と笑顔でサンティエとしての身分証を提示する事にする。でも、内心的にはヤベエ程に心臓バクバク状態。
西門担当の衛兵さんは私が差し出した身分証を確認し、私のサンティエとしての身分証を門を管理する皆でも確認し、その時間担当の門番さんと何やら話をし始めた。私は不味い事に成ったのでは?と冷や汗を掻く、身分の詐称の罪に対する罰は軽くない。
ブランが捕って来た獲物1つで、罪状が芋蔓式に出て来てしまう可能性があったのだ。けども、今回は大丈夫だったみたいだ。今日は運が良いのではないか?と、この時には思う。
衛兵さんからは「討伐証明は鶏冠だけで良い事は御存じかな?」と言われた。サンティエとして冒険者活動は3年目、そもそも幼少期に母親と一緒にやっていた事もあったのでそれを知らない訳では無い。
「あぁ~…実は…、持っているナイフで鶏冠が切り取れなくて……」とナイフを見せたら、衛兵さんにも門番さんにも何か言いた気な顔をされてしまった。失敗したかもしれない。
「君の武器…、いや…君の攻撃方法は何かな?」
「えぇ~、特に無いですねぇ~」って、あれ?随分前にレヨンとして衛兵さんにこれ聞かれた気がするぞ?前は何て答えたんだっけ?
「冒険者ギルドの身分証に記載された討伐記録の獲物はどうやって倒したのかな?」
「ん~、基本ブラン任せ?」と言いつつブランの方を見ると、ブランはコカトリスの死骸の前で綺麗に御座りをして、首を傾げながらコチラを見ていた。ブランだけを見たら凄く可愛いくてニヤニヤしてしまう。
因みに、この後、冒険者として活動するなら必要最小限の武器と防具を装備しておくべきだ!と言う説教を小一時間されてしまう。その後に「レヨン君には、護衛を雇って採取に出掛けるよう注意していた」とか、うん、見に覚えがあるなって話が続く。
「それにしても何故に君は、冒険者なのに手ぶらで出掛けている!レヨン君でさえ、長い木の棒程度は持っていたぞ!」
「あぁ~、(ブランを拾う前に)持ってた持ってた~」
「但し、私は、あのほっそい木の枝を武器とは認めていないがな!!」
「……」
太陽が真上近くまで登り、私の腹が鳴るまで、衛兵さんの御話が続いたので辛かったのは言うまでも無い。
その様な御話から解放されたのは、衛兵さんの交代時間の御蔭だった。それなのに「まだ説教したい事があるし昼飯を奢ってやろう」と言う衛兵さんの申し出があってドン引きする事に成った。とっても遠慮したかったので、丁寧に断りする事にする。
私は森にコカトリスが出た事を自分で冒険者ギルドに報告して報酬を得ると言う名目で、衛兵さんに別れを告げ、ブランを連れて冒険者ギルドへと向かう事にしたのだ。本当はそれ、衛兵さんの御誘いを断る言い訳なのだが、そう断ったからには、早々に報告に行かねばならない。序だから、ゴブリンの討伐報酬も貰って帰る事にしよう。と、思ったのだけど…、酒場が併設しているメシ時の冒険者ギルドは無駄に混雑していた……。
然も、ブランがコカトリスを銜えて引き摺って歩いていたモノだから、周囲の視線が集まって仕方が無い。まぁ、その御蔭で順番無視してギルド職員さんが出てきて話を聴いてくれたのだけど、無駄に目立ってしまって当分の間は居心地悪い思いをしそうな気がしないでもない。いや、きっと、近い内に自称先輩冒険者が出て来るか何かして、「オマエの景気が良いから」とか言う訳の分からない理由でカツアゲに来るに違いない。面倒臭いなぁ~とは思うが拒否権が無いので仕方が無い。
そうこうして急遽通されたのは、冒険者ギルドの酒場で一番目立つカウンター席だった。嫌がらせだろうか?
「久し振りですねぇ~マジナイ屋のシャンティイ、取り敢えず、犬っころにコカトリスをギルドへ引き渡すよう言ってくれませんかね?」と、高級店に居てもおかしくない装いの初老のバーテンにしか見えない冒険者ギルドのギルド長に言われる。
私は何時も通り「私が母親から貰ったのはサンティエって名前ですよぉ~、勝手に二つ名も名前も付けないで下さいねぇ~」と言いつつ、ブランに指示を出してカウンター席に着いた。ブランは私の指示に従い、コカトリスに手を出そうとする者達に唸り声を上げるのも止め、コカトリスをその場に置いて私の足元に擦り寄って来てくれる。
「ブランはホント、賢くて良い子だねぇ~」御褒美は何が良いだろうか?
私はメニューを横目に見ながら、ギルド長にコカトリスの出没した場所を教え、序にゴブリンの討伐証明部位を提出し、ブラン用として味無しの串焼き10本と自分用のデザート付きのランチメニューを注文して料金を渡した。
ギルド長がコカトリスの事で席を外していた私の食事中。
「オマエの景気が良いから」とか言って分け前を求める馬鹿が想定通りに出没してくれる。今回の魔物討伐会議の為、ギルドの偉い人達は席を外していた。高レベルの冒険者達は居たが、昼間っからギルドで安い飯を食い安酒飲んでいる様な輩は、碌な奴等では無いのだろう。案の定、誰も助けてはくれない。非戦闘員であるギルドの職員さんも、ギルドの酒場の職員さんもオロオロするばかりで何もしてくれない御様子だ。
さて、今回はどうなるだろう?私は振り向くのも面倒臭くて、そのまま食事を続ける。
あ、先に食事を終えたブランが立ち上がった。唸ってないし威嚇もしていないけど、因縁付けて来た奴はブランの大きさを再確認して怯んだみたいだ。逃げ腰で距離を取り、遠くから何か言い始めたのだろう。声が遠い。
「戦闘も犬任せ…」とか言ってる。事実だけど悪口の積りかな?腹は立たないけどウザイ。「大きな犬をギルドに連れ込んで…」って、ギルド長が許可している事を問題視される謂れは無いぞ?と色々と言われ思う事はあったけど表面上無視し続けていた。でも、まぁ、後半はネタが尽きたのか?短い罵倒の言葉の羅列だった気がしないでもない。金が欲しくて人に喧嘩を売る暇があるなら、森にでも行ってゴブリンでも狩った方が効率的ではなかろうか?と私は思うのだけど、働きたくない人は脅し取る方が楽だと思っているのかもしれない。と思い至りながら私はデザートに手を伸ばす。
本日のデザートは氷魔法で凍らせた柑橘系の果実だった。食事の間に半分溶けててシャリシャリしてて美味しかったなぁ、今度、おやつ時に来た時には単品注文しよう。と思い。食事も終わったしそろそろ、五月蠅くて煩わしいから怒ろうかな?と御茶を飲んでいたら、ブランが大きく一声、ワンッ鳴いた。
暫しの沈黙、突然のざわめき、周囲の声から私の背後で漏らしたヤツが出たっぽい。その程度の威嚇で漏らすとは犬が苦手な人が居たのかもしれない。って、振り返ったら、分け前を求めて来たオマエかよ!って、よし、食べ終わったし見なかった事にして帰ろう。私は非戦闘員であるギルド職員さん達に挨拶してから冒険者ギルドを後にした。
帰りの途中、漏らした人の御仲間の人に声を掛けられかけたけどブランが吠えて対応。皆さん、犬が苦手な御様子なのに、何故に如何してワンコ連れて歩く私に絡もうとしてきたのか?やっぱり、あぁ~言う輩の心理は理解不能だ。ブランは賢くて可愛くてとっても良い子なのにねぇ~。
…等と今日は色々あって…、何時もよりも、想定よりも帰りが遅く成ってしまった……。
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