機械仕掛けのヴィーゲンリート

mitokami

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 年々、年老としおいて行く貴方アナタと、老いる事も出来ない作り物である私。
貴方は時が経つにつれ…、次第に歩く事が困難と成り、杖を突き…、何時しか車椅子に乗る様に成って、今、現在はベットの上だけで生活しています……。

 私は右手でせ細った貴方の手を取りました。体温の無い指先でれて自動で計測けいそくされる体温。弱々しくもにぎり返してくれた貴方の手は治る事の無い老いに寄って発生するやまいの為、かすかにふるえていました。

 かすれた声で「ままを言ってしまって、ゴメンネ」と貴方は言います。そして「ヴィーに出会えて良かった。幸せだった」と言って…、涙を出す芸当げいとうさえ出来ない私のホホにゆっくり手を伸ばし…、優しく触れ「泣かないで」と言ってくれました……。

 私はオノレせられたさだめをのろい。私に触れてくれた貴方の手に一度、すがり付き。左手で貴方のしわきざまれた頬から、時をて白く薄くなったかみへ…、そして、後頭部に触れ、自動で測定される脳波から…、貴方が痛みを感じていない事を知り安堵あんどします……。でも、不安で有る事と、弱まっていく波長から意識の混濁こんだく、貴方の命の灯火ともしびが消えてゆく事実を私は知る事に成るのです。

 貴方は「また来世でもヴィーに会いたい。何時いつか、生まれ変わったボクを見付けて欲しい」と言いながら、距離きょりを詰めた私を引き寄せ、震える手で私を抱きめてくれました。

 しばらくして、その手が脱力だつりょくし、力尽ちからつきる様に落ちれ下がります。吐息といきを吐き尽くし、吸う事を忘れたはいすでに弱々しかった心音もゆっくり消えて…、やがて、冷め消えて行く貴方のぬくもり……。

 痛覚つうかくを知らないはずの私のむねが酷く痛んだ気がしました。
作り物の心と感情かんじょう。この気持ちも偽物ニセモノだと思っていたのに如何どうして、こんなにつらくて苦しいのでしょうか?もしかして、これが、本物の感情と言うモノなのでしょうか?でも、こんなに辛い気持ちに成るのなら、私は感情なんて要らなかった。欲しくも無かった。
私はえ切れず。[貴方と共にきたい]と記憶回路キオクカイロに手をけようとします。ですが、自己破壊じこはかいを禁止するプログラムに寄って簡単に、当たり前のごとく、その行動は阻止そしされてしまいました。

 メインプログラムの私はしば途方とほうれていました。けれど、私のシステムは…、貴方にしてあげられる事を…私に許された行動プログラムから探し出します……。
結果、[不安な状態]から内部検索けんさくされた行動プログラムが始動しどうしたのです。

 貴方の寝心地ねごこちが悪くないように寝かせ直しながら、私は貴方の為に歌い出します。人間では再現できないであろうひかえ目な音量。透明感のある歌声。綺麗なよどみの無い旋律せんりつり返し、繰り返し、リピート再生される子守歌コモリウタ

・・・こんばんは、良い夜を、薔薇バラを共に、クローブとけて、毛布へもぐりなさい!明日の朝に、主がのぞめば、アナタは再び目覚めるでしょう。・・・

・・・こんばんは、良い夜を、天使に守られた、夢の中で見せる[幼子おさなごイエスの木]。今祝福しゅくふくされた、その眠りで、夢の楽園見る事でしょう。・・・


 看護師かんごし何時いつもの様に病室に入ると、機械人形きかいにんぎょうの何時もの丁寧ていねい出迎でむかえが無く、歌声だけがしずかにひびいていたそうです。声を掛けても返事は無くて、不審ふしんに思い寝台しんだいかこむカーテンを開けると、幸せそうに眠る患者かんじゃの姿と、そのかたわらで患者に優しく微笑み掛け歌い続ける機械人形の姿があったとの事。

・・・明日の朝に、主がのぞめば、アナタは再び目覚めるでしょう。・・・

 音声データの筈なのに、いのる様な歌声だった。と看護師は言っていました。
そして、看護師に気付いて歌を途中で止めた機械人形は、作り物なのに人間の様に憔悴しょうすいし、悲しそうで辛そうな表情を浮かべ、今にも泣き出しそうな目をして患者が亡くなった時刻を看護師にげたと言う事です。
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