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01 吉原と、とある出来事
002 私はきっと、朱色の水溜まりで生まれた何か… 2
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私を心配する身内は存在しなかった。母は私を産んだ為に死んでしまい。私の父親は妻を産褥死させた私が嫌いで…、姉も、同じ理由で私が嫌い…、兄は時々、私を助ける事があっても…、基本的に姉に対して逆らわないから…「タエがワルさをしたから、ウラのソウコにトじコめてある。」とハツが父に言えば…、何時も通りに、父はハツの言う事を疑う事も無く…、この時もの普段通りにハツを信じて、私の不在を黙認していたそうだ……。
御陰で、酸化して朱色に変色した血溜まりの中で、後ろ手に縛られた私が発見されたのは、遊女の足抜けを取り締まる四郎兵衛会所の者が夜の見回り準備を開始する夕刻の事だったと耳にした事がある。
その日の夜、血染めの朱を纏い。目が開かぬ程、漆かぶれで左側を膨れ上がらせ…、かぶれの無い部分は青白く…、虚ろな目をした[お化け屋敷]の人形の様になった私を抱き抱え…、楼閣の若い衆と吉原の[始末屋]と呼ばれる人達の訪問が、我が家にあった…と、近所に住む皆が口を揃えて言う……。私の父[鉄男]が「商品を台無しにして、支払いを拒む積もりなのか?」との疑いを受けたそうなのだ。
来年、私が5歳になったら、私を楼閣に売る約束があった父は、全否定を繰り返したと聞く。ハツとハルは、その時、初めて、私が[商品]だったから大切にされていた事を知ったらしい。
父は「こんな薄気味悪い子供は知らない!」と目の前に存在する私の存在を否定し…、ハツを見て「タエは裏の倉庫に居る筈だ!そうだよな!」と言って迎えに行き…、無人の倉庫に愕然とし、漸く、変わり果てた私と言う存在を目視したらしい……。父は私の傷を見て、包帯の掛からない場所にも存在するかぶれを見て、ハツとハルを鬼の様な形相で見詰めたと伝え聞いた。
白っぽい包帯に血を滲ませる私の姿を見たハルの方は、やってしまった事と父の表情を見て恐怖し後悔もして、直ぐに自白してしまったそうだが…ハツの方は、普段の器量を何処にやってしまったのか?「私は悪くない。タエが母さんを殺して産まれて来たのが悪いのよ!」と言ったらしい……。
ハツの手によって、私の顔や体に零された[漆塗り]の為に準備された[ドロリとした漆の粘液]は…、私の肌を酷くかぶれさせ…、私が痛痒さで藻掻き苦しみ、暴れた為…、かぶれて弱った皮膚は、[古く硬い着物の布地]や[痛んだ小屋の床板]との摩擦で剥がれ落ち…、肉までも、粗い布地とガサガサの床板に削り取られ…、結果的に半日以上放置され私の肌は…、もう二度と、元の皮膚には戻らなかった……。と言っても、私自身は当時の事や、それに至る経緯までもを、何一つ覚えてはいない。傷が癒え、心が戻るまで何ヶ月も掛かり、その間に記憶は完全に消えてしまったみたいだ。
私が知るのは総て、当時、壊れた私の介護をしていた兄や、壊れる前から私の事を気に掛けてくれていた近所の人達、数年後に手に職を付け顔馴染みになった楼閣の関係者から聞きかじった程度の話である。
私の家族が、こんな家族だった為に、こうなった私の紅い肌は…、衣服の擦れで痛み出血し…、日に当て過ぎると硬くなり伸縮性を失って、ちょっとした事で割れ、痛みと出血を伴う……。でも、私にとって、それは気付いた時には、共にあった現実。その所為で、体温調節が苦手で、熱を出したとしても、それが日常。病弱な者に比べると何の傷害でもない。紅い肌に対する差別や虐めも、[屈する事こそ苦痛]と感じる私は、立ち向かえる。相手に膝を付かせる事が、私の生き方、信念と成っている。
私の父親が「嫁に行く事は出来ないだろう」と断言し、教えられた職人としての秘伝の技も、その[嫁に行く事は出来ないだろう]とされる理由の恩恵。感謝する積もりは無いが、こんな風に考えて生きてこられたのは、もしかしたら、姉を初めとする家族の御陰なのかもしれない。と、思わない事も無い。私は、それなりの人生をそれなりに生きている。
御陰で、酸化して朱色に変色した血溜まりの中で、後ろ手に縛られた私が発見されたのは、遊女の足抜けを取り締まる四郎兵衛会所の者が夜の見回り準備を開始する夕刻の事だったと耳にした事がある。
その日の夜、血染めの朱を纏い。目が開かぬ程、漆かぶれで左側を膨れ上がらせ…、かぶれの無い部分は青白く…、虚ろな目をした[お化け屋敷]の人形の様になった私を抱き抱え…、楼閣の若い衆と吉原の[始末屋]と呼ばれる人達の訪問が、我が家にあった…と、近所に住む皆が口を揃えて言う……。私の父[鉄男]が「商品を台無しにして、支払いを拒む積もりなのか?」との疑いを受けたそうなのだ。
来年、私が5歳になったら、私を楼閣に売る約束があった父は、全否定を繰り返したと聞く。ハツとハルは、その時、初めて、私が[商品]だったから大切にされていた事を知ったらしい。
父は「こんな薄気味悪い子供は知らない!」と目の前に存在する私の存在を否定し…、ハツを見て「タエは裏の倉庫に居る筈だ!そうだよな!」と言って迎えに行き…、無人の倉庫に愕然とし、漸く、変わり果てた私と言う存在を目視したらしい……。父は私の傷を見て、包帯の掛からない場所にも存在するかぶれを見て、ハツとハルを鬼の様な形相で見詰めたと伝え聞いた。
白っぽい包帯に血を滲ませる私の姿を見たハルの方は、やってしまった事と父の表情を見て恐怖し後悔もして、直ぐに自白してしまったそうだが…ハツの方は、普段の器量を何処にやってしまったのか?「私は悪くない。タエが母さんを殺して産まれて来たのが悪いのよ!」と言ったらしい……。
ハツの手によって、私の顔や体に零された[漆塗り]の為に準備された[ドロリとした漆の粘液]は…、私の肌を酷くかぶれさせ…、私が痛痒さで藻掻き苦しみ、暴れた為…、かぶれて弱った皮膚は、[古く硬い着物の布地]や[痛んだ小屋の床板]との摩擦で剥がれ落ち…、肉までも、粗い布地とガサガサの床板に削り取られ…、結果的に半日以上放置され私の肌は…、もう二度と、元の皮膚には戻らなかった……。と言っても、私自身は当時の事や、それに至る経緯までもを、何一つ覚えてはいない。傷が癒え、心が戻るまで何ヶ月も掛かり、その間に記憶は完全に消えてしまったみたいだ。
私が知るのは総て、当時、壊れた私の介護をしていた兄や、壊れる前から私の事を気に掛けてくれていた近所の人達、数年後に手に職を付け顔馴染みになった楼閣の関係者から聞きかじった程度の話である。
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