20 / 55
No03 次期君主は山猫を飼い慣らしたい
020 山猫の住処
しおりを挟む
何時も月経の間、寝泊まりに行っている妓楼の者達を人質にされ、後宮に商品を持って行って2泊3日、後宮から逃げ出したシャンマオが、馴染みの妓楼のある花街に戻ると[花街で有名な妓楼の老板娘を指名する客、パルスィー系の行商人山猫と言う名の青年]への『後宮での仕事を準備して御待ちしています』メッセージが、指名手配犯宛らの似顔絵付きで、掲示板に貼り出されていた。のだが…、何時も適当に軽く巻いているターバンをストールの様に巻き…、不揃いな髪を纏めず、そのまま靡かせ…、売り物の化粧品で妓楼の老板娘仕込みの化粧をしただけで…、誰にも気付かれる事無く…、妓楼に来て、普通に滞在できてしまっていた……。
「何でバレないのかしら?シャンちゃん…何時もの様に妓女や禿を侍らせて琵琶弾いてるのに…」と今日、月の物の為、御茶挽きに来ていた妓楼の姫が、琵琶を奏でるシャンマオの髪を綺麗に結い上げながら不思議そうに茶飲み客を眺めている。
「ホントにな…、私も老板娘に琵琶を弾けって言われた時は、バレんじゃね?って思ってたよw」
「おや?私の言う事を疑ってたのかい?シャンちゃんwま、世の中、そんなモンなのさww私が言った通りに成ったろ?見目を変えて堂々としてたら分かんないモノなんだよw」
シャンマオは妓楼に滞在した、この3日間、琵琶を弾く事で茶屋部門の売り上げに貢献し、ジエンの弟、面識がある筈のドウンは勿論、長く付き合いのある2人、ドウンの部下であり、シャンマオに取っての剣と体術の師匠であるハオシュン&ハオユーの目も誤魔化して妓楼を後にする。
シャンマオは何時もの様に、薔薇水と香油の香りを強めに身に纏い。今回は、購入時に身元がバレる事を恐れ、何時もと別のルートで鳥達への土産の[肉]を何時もより少なくしか購入する事しか出来ず。女の格好をしたシャンマオを狙う不届き者を山へと導き、土産と一緒に鳥の餌にしてしまう事にする。幼鳥を抱えた鳥達は御馳走に喜び、シャンマオを何時も通り歓迎して、シャンマオが廃村の家に安全に帰れる様に護衛を務めてくれた。
その道程で…、禁止されたとは言え、鳥葬で誰かを天に送りたかったのであろう…乗車していた者達が襲われ食われた痕跡のある葬儀用の馬車を何台か見掛ける……。
シャンマオ以外の人間が住まなくなって15年経過した山は自然に帰り行き、今では廃村も、そこまでの道程も、神殿も沈黙の塔も大分と朽ち果て、地味に森に飲まれ、山の獣の気配を強く感じる場所へと成り代わっていた。後、数年もすれば…、その地へシャンマオが帰る事も難しく成る事であろうし…、その前に、古くなった石造りのシャンマオの家が崩れ去り…、帰る場所の方が先に無くなる可能性も少なくない。
だから、帰るなり…シャンマオは一人で、何時、最後に成るか分からない作業を開始し、愛惜しむ様に庭の薔薇の花弁だけを丁寧に摘み、摘み立ての花弁で、この場所でしか作れない薔薇水と香油作りに精を出す。妓楼の場所の水や、妓楼に持って行った苗で咲かせた花では、同じ物が作れないからだ。それに、ココに存在するガラス製の機材の寿命も長くはなさそうだった。もう少し早い段階で買い換えられたなら良かったのだが…、買えるだけの収入を得る事が出来る様に成った頃には…、重く大きく割れやすい硝子の機材を運んで廃村まで来る手段が失われていた……。それでも、持って来れる物は買い換え、駄目にならない様に気を配っている。
作業が一段落し、後は時を待つだけと成るとシャンマオは、中庭で水浴びと洗濯をし、今度は弱めに薔薇水と香油の香りを身に纏い、離れにある雨漏りがする様になって使わなくなった自室へと足を向ける。そこは嘗て、双子の兄シーツーと一緒に寝起きしていた部屋だった。今では、屋根も壁も一部が崩れ落ち、中庭から伸びた薔薇が枝葉を伸ばし、大輪の花を咲き誇らせている。
そこだけは他の場所よりも囲われている為、薔薇そのままの香りが、その場を満たしていた。シャンマオは臭気を逃さぬ様に扉の開け閉めを最小限に止めて部屋に入り、その場で深呼吸し、一瞬、追憶の中に心を飛ばす。今は違うのだが…、幼き日…一緒に育った双子の兄であるシーツーは…、自分と同じ物を身に付けているのに、シャンマオとは違って、コレに近い香りを纏っていたからだ……。戻らぬ幸せな日程、恋しくなり、その欠片でも求めてみたくなるモノだ。
シャンマオは嘆息し、過去を振り切る様に花弁を摘み取り、後は待つだけの抽出作業続行中の母屋へと戻って、新たに摘んだ花弁を水の入った瓶に詰め、鍋の湯へ放り込み、家にある本を読みながら残された有限の時に身を任せるのだった。
「何でバレないのかしら?シャンちゃん…何時もの様に妓女や禿を侍らせて琵琶弾いてるのに…」と今日、月の物の為、御茶挽きに来ていた妓楼の姫が、琵琶を奏でるシャンマオの髪を綺麗に結い上げながら不思議そうに茶飲み客を眺めている。
「ホントにな…、私も老板娘に琵琶を弾けって言われた時は、バレんじゃね?って思ってたよw」
「おや?私の言う事を疑ってたのかい?シャンちゃんwま、世の中、そんなモンなのさww私が言った通りに成ったろ?見目を変えて堂々としてたら分かんないモノなんだよw」
シャンマオは妓楼に滞在した、この3日間、琵琶を弾く事で茶屋部門の売り上げに貢献し、ジエンの弟、面識がある筈のドウンは勿論、長く付き合いのある2人、ドウンの部下であり、シャンマオに取っての剣と体術の師匠であるハオシュン&ハオユーの目も誤魔化して妓楼を後にする。
シャンマオは何時もの様に、薔薇水と香油の香りを強めに身に纏い。今回は、購入時に身元がバレる事を恐れ、何時もと別のルートで鳥達への土産の[肉]を何時もより少なくしか購入する事しか出来ず。女の格好をしたシャンマオを狙う不届き者を山へと導き、土産と一緒に鳥の餌にしてしまう事にする。幼鳥を抱えた鳥達は御馳走に喜び、シャンマオを何時も通り歓迎して、シャンマオが廃村の家に安全に帰れる様に護衛を務めてくれた。
その道程で…、禁止されたとは言え、鳥葬で誰かを天に送りたかったのであろう…乗車していた者達が襲われ食われた痕跡のある葬儀用の馬車を何台か見掛ける……。
シャンマオ以外の人間が住まなくなって15年経過した山は自然に帰り行き、今では廃村も、そこまでの道程も、神殿も沈黙の塔も大分と朽ち果て、地味に森に飲まれ、山の獣の気配を強く感じる場所へと成り代わっていた。後、数年もすれば…、その地へシャンマオが帰る事も難しく成る事であろうし…、その前に、古くなった石造りのシャンマオの家が崩れ去り…、帰る場所の方が先に無くなる可能性も少なくない。
だから、帰るなり…シャンマオは一人で、何時、最後に成るか分からない作業を開始し、愛惜しむ様に庭の薔薇の花弁だけを丁寧に摘み、摘み立ての花弁で、この場所でしか作れない薔薇水と香油作りに精を出す。妓楼の場所の水や、妓楼に持って行った苗で咲かせた花では、同じ物が作れないからだ。それに、ココに存在するガラス製の機材の寿命も長くはなさそうだった。もう少し早い段階で買い換えられたなら良かったのだが…、買えるだけの収入を得る事が出来る様に成った頃には…、重く大きく割れやすい硝子の機材を運んで廃村まで来る手段が失われていた……。それでも、持って来れる物は買い換え、駄目にならない様に気を配っている。
作業が一段落し、後は時を待つだけと成るとシャンマオは、中庭で水浴びと洗濯をし、今度は弱めに薔薇水と香油の香りを身に纏い、離れにある雨漏りがする様になって使わなくなった自室へと足を向ける。そこは嘗て、双子の兄シーツーと一緒に寝起きしていた部屋だった。今では、屋根も壁も一部が崩れ落ち、中庭から伸びた薔薇が枝葉を伸ばし、大輪の花を咲き誇らせている。
そこだけは他の場所よりも囲われている為、薔薇そのままの香りが、その場を満たしていた。シャンマオは臭気を逃さぬ様に扉の開け閉めを最小限に止めて部屋に入り、その場で深呼吸し、一瞬、追憶の中に心を飛ばす。今は違うのだが…、幼き日…一緒に育った双子の兄であるシーツーは…、自分と同じ物を身に付けているのに、シャンマオとは違って、コレに近い香りを纏っていたからだ……。戻らぬ幸せな日程、恋しくなり、その欠片でも求めてみたくなるモノだ。
シャンマオは嘆息し、過去を振り切る様に花弁を摘み取り、後は待つだけの抽出作業続行中の母屋へと戻って、新たに摘んだ花弁を水の入った瓶に詰め、鍋の湯へ放り込み、家にある本を読みながら残された有限の時に身を任せるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる