あの時ちゃんと断っていればこんなことにはならなかった

多崎リクト

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壊れたのは理性も

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 暑い。
 何もしていなくても、じわじわと汗が吹き出してくる。
 7月に入ったばかりというこの時期。日に日に暑くなり続けているこの時期に。我が家のエアコンが故障した。

「暑い」
「陸、暑いって言うともっと暑くなるよ」

 エアコンが壊れた今、唯一のオアシスは扇風機一つだ。俺は汗だくのTシャツをまくりあげ、扇風機の風を取り入れる。
 後から後から吹き出てくる汗をタオルでぬぐい、扇風機に向かって「あー」と力の抜ける声を出す。
 だらしなくTシャツをまくりあげ、むき出しになった汗だくの腹にたっぷりと扇風機の風を浴びる。

「陸、お腹壊すよ」
「大丈夫大丈夫」

 悠がちらりと俺の腹を見る。

「誘ってる?」

 ドサリと床に押し倒される。あー、床冷たい。気持ちいい。思わずフローリングにほおずりしそうになる。
 だが、まとわりついてくる悠が暑い。

「悠、しばらくしないって言ったろ」

 エアコンが直るまではセックス禁止と言ったはずだ。そうでなくては暑くて倒れてしまう。

「無理。陸がえっちなのがいけない」

 腹にかいた汗をペロリと舐められる。くすぐったい。

「だめっ、ゆう♡」
「全然だめって声じゃないけど」
「ひゃっ……くすぐったい♡そんなとこ、汚いからぁっ♡♡」

 腹から下におりていって、臍の穴を入念に舐められる。くすぐったい。くすぐったいだけのはずなのに、別の穴がキュンとしてしまう。

「ね、陸。しよ?」

 そんな風に大好きな可愛い旦那様に言われて、断れる奥さんなんているはずもなくて。





「あっ♡ゆう♡♡やだぁ♡♡♡」

 蒸し暑い部屋の中。深々と悠のものに貫かれながら、溺れるように喘ぐしかなかった。
 シーツは汗と精液でドロドロになっている。後始末は悠にさせようと思う。
 二人とも汗だくで、体が触れあう度にどちらのものかわからない汗が混ざり合う。

「陸、陸、」

 悠が名前を呼ぶ声も、いつもより熱を帯びているような気がした。それがまた体温を上げる。
 ぽたりと、冷たい雨のようなものが、顔に降ってくる。ぼんやりと目を開けると、悠のかいた汗が顎を伝って落ちてくるところだった。

(……かっこいい)

 年下の癖に、普段は落ち着いてる悠が、汗だくになりながら自分を求めている。それが可愛くて、だけど汗に濡れた悠はとんでもなくセクシーで。そのまま全部丸ごと食べられてしまいそうに思えた。

「……ゆう、すき…………」

 悠の顎を伝う汗を指でぬぐい、口に運ぶ。少ししょっぱいけど悠の味がした。

「陸、そんなに誘わないで」
「あんっ♡誘って、ないからぁ♡♡」

 悠のものが大きくなって、圧迫感が増す。そのまま奥までぐりぐりされて、弱いところを突かれる。ぽたぽたと自分のちんこの先から精液がこぼれ続ける。ずっとイッてるみたいになって、止まらない。

「だめっゆうくんっ♡だめだってばぁ♡♡」

 もうイキ続けて辛いのに止まってくれない。

「あっ、だめっ♡またイッちゃうからぁ♡♡♡」
「いいよ、いっぱいイッて」
「んんんんっ♡♡♡」





「暑い、暑い……悠のばか」
「ごめん、陸」

 汗だくな上に精液で体中ドロドロで。今すぐシャワーを浴びたいのに力が入らない。

「のどかわいた」

 喘ぎすぎた喉がカラカラで。テーブルに置いたまま氷が溶けきってしまった麦茶を手にする。半分ほど飲むと、残りは悠に渡す。
 悠もあんなに汗をかいていたのだから、喉が渇いていたのだろう。一息に飲み干していく。
 ごくごくと悠の喉が動くのがなんだかセクシーで。
 もう暑くてこりごりなはずなのに、またムラムラしてきてしまった。

「――悠」

 まだ麦茶を含んだままの悠にキスすると、口内のそれを口移しで飲ませてもらう。

 暑さだけではなくて、発情に似た熱を感じながら、俺は悠を押し倒すのだった。
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