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81、疲れてたから避ける気力がなかっただけだから!
しおりを挟むふいー。さっすがに腕がだるいー。
ひたすらチャンチャン焼きを焼き続けた私はへとへとに疲れ果てていた。
でも、その甲斐あって用意した材料はすべてなくなった。完売だ。
「レイシール。ちょっと休んで」
「ふい~」
へろへろとする私を心配して、ティアナが支えてくれる。
あー、終わったと思うと眠くなってきちゃった。いやいや、まだ後片付けがあるし。
でも、ちょっとだけ休ませてもらおうかな。どっかその辺に座って……
ふらふらと椅子の方へ行こうとした私だったが、椅子にたどりつく前に誰かの胸元にぶつかってしまった。
「ふえ?」
顔を上げようとすると、頭にぽふっと手を置かれてしまった。
「ちょっと借りていいか?」
「ええ! もちろん!」
ティアナの華やいだ声が聞こえる。私の前にいる誰かと会話しているようだ。うん……眠くて頭がぼーっとする。
「ほえ? えっ?」
ぼんやりとしていた私は、不意に体を持ち上げられる感覚にぱっちりと目を開けた。
その目に飛び込んできたのは笑みを浮かべたジェンスの顔。
「ジェ、ジェンス!?」
私を横抱きにして屋台から連れ出そうとしているのはジェンスロッド・サイタマーだった。
「な、なん……」
「レイシー。今日は随分頑張ってたな」
ジェンスはややつり目気味の三白眼を優しく緩めて私を見下ろしてくる。
わう。私、今、めっちゃ髪ほつれてるし、全身に汗掻いているし鮭と味噌の匂いがこびりついているんだけど!
やだやだ! 下ろして!
「でも、レイシーがあんなに頑張って作った料理が他の男の口に入っていると思うと、嫉妬でどうにかなりそうだった。だから、今は少しだけレイシーを独り占めさせてくれ」
「わふ……」
そう言われると、暴れる気力を失ってしまう。
人の集まっている前庭から離れて、静かな場所で芝生に下ろされた。でも離してはもらえず、肩を抱かれて引き寄せられてじっと目をみつめられてしまう。
「お、お兄様達は……?」
「今日はずっと見回りしてたから。今頃、肩の力を抜いているだろう。抜け駆けしちまったから、後でヒョードルにしばかれるな」
ジェンスはそう言って笑う。
「無事に、収穫祭が終わって良かった」
ジェンスがゆっくり覆い被さってくる。
ううむ。私、今ちょっと汗くさいと思うんだけどなー。やだなー。もうちょっと綺麗な時に……まあ、いっか。
私は避けるのを諦めて、静かに目を閉じた。
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